髙崎卓馬氏インタビュー

「クリエーティブは裏切らない」第1回

  • Takasaki
    髙崎 卓馬
    株式会社電通 CDC エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/CMプランナー

髙崎卓馬氏インタビュー

「クリエーティブは裏切らない」

 言葉・ビジュアル・音 三つの技術が核に

新しい自分に出会うために―。2013年のクリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞した髙崎卓馬氏。2010年に次いで2度目の受賞だが、自分に「負荷」をかけ続けてきたことが今日につながっているという。信頼と評価を得るプロフェショナルとして、クリエーティブの世界とどう誠実に向き合うべきか。自らの体験を振り返りながら語った。

【第1回】奇跡を人工的に起こす仕事

 
   

リスクを負ってでもやろう、と全員が思えるか

最近は本当にいろんなジャンルのブランドや企業を担当させてもらっています。継続を前提にブランドを立ち上げていくことが多いので責任の重さをいつもひりひりと感じながらやっています。本当はたたいて逃げるみたいなCMをつくりたいなあと思っていますが、そうもいかない。キャンペーンを立ち上げるにはあらゆる角度からの検証が必要になりますし、規模が大きくなる分一つ一つのアクションが重たくなります。そのせいでキレの悪いコミュニケーションになりがちです。でもそれを理由につまらないものにしてはいけない。つまらなくするのは本当に簡単でいつでも油断するとすぐダメになる。そのツマラナイ菌は姿形を変えて虎視眈々(たんたん)と僕たちの表現を狙っています。だからずっと気が抜けません。いつも臨戦態勢でいないといけない。

けれどいいこともあります。関係するすべてのひとに「普通にやっている場合ではない」という覚悟が生まれるんです。その覚悟がリスクを乗り越えていく勇気になる。そうして線を越えていくとそこに確実にリスクを避けていては得られない果実がある。クライアントがリスクを負わないと、予想を超える成果を出すための表現の“ジャンプ”は絶対に起きないんです。成功するクリエーティブに最も必要なのはそれかもしれません。

面白いことはたぶん誰でも考えられる。それを実現するための力があるかどうか、それを実現する環境をつくれるかどうか、それを実現する判断をしてもらえるかどうか、だと思います。幸いいろんなクライアントを長く担当させてもらっています。それも大きい。企画だけではできないことを僕はやらせてもらっていると実感しています。若いころは低予算の仕事が多く、表現の力で無理に商品を目立たせて認知を獲得しなければならないこともありました。自分としてもどこかで「あれは誰の仕事だ?」と騒がれるような広告をつくりたいと思っていました。でもブランドに対する責任感のようなものが体の中に生まれてからは、そういう妙な自我は消えた気がします。

一方で広告そのものという大きなものに対する責任感も感じています。自分の大好きな広告が文化として生き生きとしていること、そのために自分ができることは何か。そのためにこの仕事は何ができるか。そういう意識はあります。常に「企業」と「広告」という二つのクライアントに対して仕事をしているような感じです。面倒くさいけど、その意識があるおかげで20年手を抜かずにやってこられた気がします。この仕事は奇跡を人工的に起こす仕事です。みんながやりたくなる企画を立てて、予算がないけどなんとかしよう、時間がないけどなんとかしよう、頼んでないけどやってみたくなった、そうやっていろんな人とのいいエネルギーをかき集める。いい企画は力が集まります。そうすると奇跡みたいなことがやっぱり起きる。きつい状況になっても信じていられるものをつくる。それに尽きます。

髙崎氏はいつもノートを持ち歩き、アイデアなどを書きとめていく。その数すでに数十冊。その中に2020年東京オリンピック・パラリンピック招致活動映像の絵コンテも。最終プレゼンで映像となって多くの人の感動と共感を呼んだ。

 

   

クライアントやチームから信頼を得るには

そのとき欠かせないのは、信頼です。プロとして信頼されているから、任せてもらえる。すると自由が生まれて、できることの幅が広がります。だから誰もやったことがない表現が手に入る。シンプルな循環でこの仕事はできています。では、どうしたらクライアントやチームのメンバーに信頼してもらえるのか?
僕の場合はその源は言葉や映像の技術です。そこに対するプロ意識です。他の人が使わない時間を使ってきたから身に付いた技術がある。なんでもそうですよね。僕は魚は捌(さば)けませんが、何十年も市場で魚を見極めて、捌(さば)いてきたひとにはその人にしか分からないスキルがある。僕たちはだからそこにお金を払いたくなる。同じです。

オリエンを受けてから解決を考える、では世の中の速度に追い付かない感覚も最近はあります。自分がこういう世界で生きていていろんな人と会うようになって、そこでいろんなことを感じているうちに課題と解決?を同時に思いつくことがあります。そういうときはそれを売りにいく。そのアイデアを買ってもらいにいく。そういう仕事の仕方も増えています。

これはちょっと異常なくらいの仕事の量をしているうちに身に付いた方法なんですが、全然ジャンルの違うクライアントやメディアの問題って根源的に実は同じ問題だったりすることが多いんです。それぞれでは解決できないけれど、同じ問題を持つものが集まると解決できることがある。だから紹介し合う。仲介して新しいプロジェクトを発生させる。それはオリエンからは生まれないものです。仕事をし過ぎだとよく人に言われますが、しすぎていないとできないことがあるし、たぶんそれが今一番面白い広告のあり方のような気がするので、まあ、しょうがない(笑)。 

〔 第2回へ続く 〕

 

プロフィール

  • Takasaki
    髙崎 卓馬
    株式会社電通 CDC エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/CMプランナー

    2013年、2010年クリエーターオブザイヤー、TCCグランプリ、ADC賞、ACC賞など国内外の受賞多数。エイベックス・エンタテインメント「dビデオ」、JR東日本「行くぜ、東北。」、サントリー「オランジーナ」、 ANA、Intel、JRA、朝日新聞などのキャンペーンを担当。2020東京五輪招致のクリエイティブディレクションを担当。著書に「表現の技術」(電通)、小説「はるかかけら」(中央公論新社)など。

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