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セカイメガネNo.23

スーパーメリハリ消費シティー

2014/04/23

皆さま、私が駐在するシンガポールの語源をご存じですか。サンスクリット語で「ライオンの街」。昔、この島の発見者がライオンに似た動物を見たのが始まりだということですが、今は「消費」というハラをすかせたライオンたちであふれています。今回はそんなライオンたちの「スーパーメリハリ消費」をご紹介します。

ある日シンガポール人の同僚と近くのホーカーへ(ホーカーとは島中にある巨大屋台モール。時には100軒以上並ぶ庶民の食堂。種類はローカル、中華、インド、マレーに和食まで全てある)。

そこでは行列のできる人気ランチがわずか3ドル(以下全て米ドル)。でもその後お茶したおなじみスターバックスラテは 6ドル。ランチの倍!広告界のエリートである彼は、3ドルのランチで済ませた後に倍も出してスタバへ行き、政府が提供する安価なアパートに親と住みながら9万ドルのヴィオス( トヨタのコンパクトカー)に乗るのです。少し稼ぎのいい人は15万ドルのアウディに乗る。自動車保有を厳しく制限するための法外なナンバー取得料に関税が加算され、想像を絶する価格になっています。この国の物価は他の先進国と変わりません。でも日本の普通のビジネスパーソンで毎昼3ドルで済ませている人は少ないし、車に9万ドルを出す人もあまりいません。この小さな島国では日本以上に車の必要性がとても低いにもかかわらず、皆車を持ちたがります。

ある日曜日のお昼。総額2万ドル以上のバッグ類を持った親子3人が15ドルのチキンライスを分けて食べているのを見ました。これは何を意味しているのでしょう?

成金趣味とか物欲主義などの一言で片付けられるのかもしれませんが、私は別の視点を持ちます。法外な値段に見えても、どうしても欲しいものにはお金を出してしまう。「メリ」で済ませるものと「ハリ」としてつぎ込むものが人の心の中で明快に分けられている。極端な値付けがされている市場では、この性向がよりはっきり表れているのではと思います。

スタバも、車という消費財も、人のロジカル思考を超えた根源的な消費欲を満足させる対象なのです。そしてこのような「スーパーメリハリ消費」は既に周りのASEAN諸国にも広がっています。新興国マーケットを考えるとき、人間の心に宿るメリハリ消費の性向を研究するのもヒントの一つになるのではと思います。

さあ、今日のランチも新しいメリハリを発見しに行きましょう。

(監修:電通イージス・ネットワーク事業局)