オウンドメディアについて私が知っている二、三の事柄 #02

オウンドメディア そのお勉強の仕方(ゴールデンウィーク用)

前回でも書いたように、ウェブはトレンドの移り変わりが速く、常にお勉強が必要です。しかしながら、広告およびその周辺の制作領域において、ウェブほど勉強しやすい分野もないと思います。

まず第一に出版物が数えきれないほど出ています。少々値段の張る専門書から新書に至るまで毎月あまたの刊行物が出ており、自分のレベルに合わせて教材を選ぶことが可能です。

第二にウェブの世界では知見や知識を共有する文化が盛んです。もちろんアイデアの出し方というのは門外不出かつメソッドにしづらいものがありますが、技術的なトレンドについては書籍を読まずともかなりのことが検索すれば出てきます。そしてそれらの方が書籍よりもはるかに早いということも言えます。

第三に、みなさんは、ほとんど例外なくウェブユーザーです。どれくらいの時間をウェブに費やしているかは個人差がありますが、スマートフォンも含めればかなりの時間を費やしているのではないでしょうか。みなさん、既にヘビーユーザーなのです。あとはウェブに触れている時の感想(不満や賞賛)を言語化する、それも業界の中で通じやすい言葉にしていくことが必要なだけです。これは訓練によって養うことができます。

ということで、今回はゴールデンウイークという絶好の機会の前に(笑)、オウンドメディアのお勉強方法を紹介します。

 

コンテンツより始めよ

ここでは見るべきポイントについて、かいつまんでお話しします。
その際にアタマの片隅に常に置いておいていただきたいのが、オウンドメディアの課題を抽出するうえで基本となる「コンテンツ」「情報構造」「デザイン」「運用」です。

まずはユーザー視点からの課題を把握できるようになりましょう。それこそがユーザー視点で課題を発見することのスタートです。外から見て把握できることは、この表から見ても分かるとおり「コンテンツ」「情報構造」「デザイン」の3つです。

そしてこの3つには、見ていく順番があります。結論から先に言うと「コンテンツ」「情報構造」「デザイン」の順でチェックすべきです。そしてもっと踏み込んで言えば、「コンテンツ」「情報構造」の2つがオウンドメディアの品質を80%以上決定づけると私は考えています。

企業サイトでも、会員サイトでも、商品サイトやブランドサイト、ECサイトでも、ユーザーにとって一番価値のあるものはコンテンツです。コンテンツのみがユーザーにソリューションを与えられるのです。そしてオウンドメディアには、ほぼ例外なくモチベーションが高い状態(=ソリューションとしての情報を求めている状態)のユーザーが接触してきます。他のメディアに比べ、著しく歓迎すべき状態で来訪していただいているということは、ソリューションが提供できない、もしくはソリューション提供に時間がかかる状況に対して、ユーザーは非常に辛口に成り得る状態ともいえます。

そのため、まずはオウンドメディアではコンテンツについてチェックすべきです。

 

コンテンツの必要条件

「情報構造」「デザイン」ももちろん重要なのですが、ゴールデンウイークで全てを勉強するのはとても大変ですので、まずはコンテンツについて徹底的に勉強してみましょう。まずコンテンツは、「ベーシック(基本)コンテンツ」と「オリジナル(独自)コンテンツ」の2つに分けられます。

▼ベーシックコンテンツ
ベーシックコンテンツは、企業概要や商品・サービスの概要やスペックなどいわゆる普遍的な情報です。これらのコンテンツに求められるのは「正確性」です。何度も閲覧されるたぐいの情報ではありませんが、ユーザーに対し、確実にソリューションを与えることができます。ただしこのベーシックコンテンツは、「その企業らしさ」が出にくいので、競合他社に差をつけるには「正確性」「速報性」「ユーザビリティー」といった要素に留意する必要があります。

▼オリジナルコンテンツ
オウンドメディアにおいて吟味したいのが、この「オリジナルコンテンツ」です。ユーザーが求めているのは、検索やその他サイトでは取得できない「企業らしさ」にあふれたコンテンツなのです。
オリジナルコンテンツにはさまざまな種類があります。商品やサービスをより分かりやすく、魅力的に訴求するためのスペシャルコンテンツもあれば、CSRレポート(近年は統合レポートに切り替えている企業も多いですが)などは実に企業のオリジナリティーが表れるコンテンツです。
このコラムの最後にご案内する書籍『Think Like a Publisher~編集者のように考えよう~コンテンツマーケティング27の極意』では、そういったコンテンツの種類について分かりやすくまとめられていますので、ぜひ参照いただければと思います。

オリジナルコンテンツの量が、ベーシックコンテンツの量と比較してどれだけ多いかが、そのオウンドメディアの価値を決定づける最も大きな要因となります。極論を言えば、私は「まずは量そのものを追求しても構わない」と思っています。最初から質の高いものを生み出すのは非常に難しいですし(質の高いもの=ユーザーの反応が高い、とも限らないですし)、質の高い物を少しずつ更新していく、というのは理想こそ高いですが、よほど質の高いコンテンツでない限り、ユーザーは何度も何度も参照しません。それより問題なのは、更新情報の少ないサイトはユーザーにとっては居心地が悪いということです。まずはどんどん量産してみて、その中で質を高めていく。「アウトプット量こそが質を高めていく」という考え方の方が良いと思います。話は少しそれますが、「アウトプットを大量に生み出す×コンテンツの質=オウンドメディアのパワー」を追求する上で、運用効率は非常に大きな問題といえます。運用については、いずれ機会を見て書きたいと思っています。

「時限性」も重要です。「時限性」の高いコンテンツそのものは全く悪くないのですが、オウンドメディアそのものが中長期でのユーザーとの関係構築に適したメディアですので、コンテンツでもその思想は生かしたいところです。参照されやすいコンテンツに少しリライトしてアーカイブ化し、検索しやすくしておく。地道な努力を続けることで必ずサイトパワーは上がっていきます。

そしてオリジナルコンテンツにとって非常に重要なのが「プレゼンテーション」です。これは何も、リッチなflashコンテンツを作りましょう、動画をいっぱい撮影しましょう、文体にユーモラスな人格を持たせて表現しましょう、ということではありません。内容と照らし合わせて、もっとも適切な表現を追求しているか、ということです。

例えば図版やインフォグラフィックにすれば内容が分かりやすいところを「テキスト+写真」で延々と説明していないか。あるいは、文字で読ませるべきボリュームあるコンテンツは、全体構成が一目で分かるカタチになっているか、印刷を配慮しているか、などなど。

現実の生活でも同じで、「どう言うか」は「何を言うか」と同等に大切です。せっかく秀逸なアイデアや優れたオリジナリティーがあったとしても、プレゼンテーションによってコンテンツの質は大きく左右されてしまうことを常に意識しましょう。

【コンテンツチェック項目】
●オリジナルコンテンツの量は十分か。ベーシックコンテンツと比べて相対的に多いか。
●質を追求し過ぎていないか。自分が、更新情報の少ないウェブサイトを見たときの気分を考えてみよう。
●時限性の高いコンテンツで埋め尽くされていないか。中長期的に見て、サイトパワーをアップしていけるよう、少しの手間を惜しんでいないか。
●適切な手法でプレゼンテーションされているか。最初から「テキスト+写真」と決めつけていないか。

 

多デバイス対応には「デバイス文脈に応じた優先度」が必要

みなさん、アプリやスマートフォン対応されたサイトに触れていて「情報が探しにくい」とか「要素が多すぎる」と感じたことはないでしょうか? 意外とスマートフォン使用の文脈で使いやすいサイトは少ないものだと思いませんか? 例えばドライブ中すぐにSS(サービスステーション)検索をしたいのに、サイトがスマートフォン化されていない、もしくは全くPCと同じ情報構造でなかなか検索までたどり着けない、など。こういったことは、スマートフォン使用の文脈がよく考えられていないからに他なりません。

アプリの場合はそれがさらに顕著に表れます。サイトの場合は、ある程度PCをベースに設計するのもやむなしという場合が多いのですが、アプリの場合は必要な部分だけを切り出して設計できます。つまり徹底的にユーザー文脈に則った設計が可能なわけです。それなのに余計な機能を詰め込み過ぎて動作が重かったり、全ての機能に常に通信を必要としたり、ナビゲーションが複雑過ぎたり…、そのようなアプリが散見されます。これは「優先度が表れる」というよりも「優先度がつけられていない」と言った方が正しいでしょう。

例えば先に例に出したSS検索の場合、ウェブサイト最適化であれば、企業情報などが掲載されているのも当然な部分があります。そういった情報ニーズも存在するので。ただ「アプリ」となった瞬間に、ユーザーはウェブサイトよりも、さらに「機能・ツール」的な側面を求めます。

つまり、多デバイス対応には「デバイスごとの文脈に応じた優先度」が必要なのです。情報(ソリューションとしての)の優先度だけではありません。そもそもスマートフォン最適化だけなのか、アプリまで作るのか。表現の豊かさなのか軽さなのか。プッシュ目的なのかプル目的なのか。

ここには正解はありません。業種による違いもあれば、予算や社内リソースの都合もあります。大切なのは「ユーザーデバイスの文脈を分かっていた上でなお優先度をつける」ことです。

せっかくのゴールデンウイーク、そんなにお勉強するのは嫌だよ、という方のために、遊びながらでもできる勉強法を紹介しましょう。それはスマートフォンサイトとアプリです。

ゴールデンウイークには旅行をする方も多いでしょう。旅行関係だけでも、いろんなウェブサイトやアプリがありますので、ぜひいろいろ使ってみてください。旅行のチケット手配やホテル予約、宅配便、グルメ、ドライブ周辺情報…。これらは自分を「ユーザー」として意識するのに最適です。今まで紹介してきたような机で行うお勉強の場合、どうしてもユーザーがどんな文脈で検索したり、情報探索したりするのかを「ロールプレイ」する必要があります。しかし実際に自分が必要に駆られてスマートフォンサイトやアプリを触ってみれば、いちユーザーとしての率直な意見が出てくることと思います。

 

業界用語を覚えるのも重要

ゴールデンウイーク用、オウンドメディアのお勉強方法も最後に来ました。冒頭でも書きましたが、ウェブはたくさんの書籍が出ており、それらを読むだけでもかなりの勉強になります。今回はコンテンツ関連のお勉強の仕方を話しましたので、それに役立つ書籍を紹介したいと思います。

世の中にはたくさんの素晴らしいウェブコンテンツ関連の書籍がありますが、ここでは電通社員の関連した書籍を紹介したいと思います。なんて言っても、この電通報は電通の主力オウンドメディアですから(笑)。

オウンドメディアのみならず、ウェブの世界ではさまざまな横文字があふれています。それらを理解するだけでも一苦労なのですが、業界そのものの歴史が浅いことから、業界用語自体も完全に統一しきれていないのが現状です。正しい認識を持つためには、普段から情報摂取量を増やして、その言葉が世の中的に持っている幅を把握することが必要です。

オウンドメディアコミュニケーション~成功の法則21
拙著で恐縮ですが(笑)ご紹介させていただきます。約2年前に、時代が変わっても古びない基本について書いたつもりですが、やはり今でも通用する基本は押さえられていると思っています。一度に全てを勉強することはできませんが、どこから勉強すればよいかの羅針盤として使っていただけると思います。

Think Like a Publisher~編集者のように考えよう~コンテンツマーケティング27の極意
詳しい紹介は著者インタビュー紹介記事を読んで頂ければと思いますが、コンテンツについて考えるときに頭に入れておきたいことが、豊富な事例をベースに丁寧に整理されています。特に20章の「コンテンツを監査する」はプロの目から見ても必読だと思います。

ロングエンゲージメント
SHARED VISION
この2冊はセットで読んでみるべきと思います。ソーシャルメディアのトレンドがどのように変遷したかがよく分かります。このコラムではオウンドメディアについて書いていますが、オウンドメディアについて深く考えてみると、ソーシャルメディアを避けては通れないことがすぐに分かります。このふたつはどちらを優先するという話ではなく、バランスの問題であり、切り取り方の違いだからです。つまりソーシャルメディアについても知識を深めれば、自然とオウンドメディアで扱うコンテンツはどのような切り取り方をしていけばよいのかがつかめていくと思います。

 

今回この原稿を書いていて、忙しさにかまけて自分も基礎的な勉強を少しおろそかにしているな、と気づきました。このゴールデンウイークはお勉強に充てたいと思います(笑)。

それでは次回をお楽しみに♪

プロフィール

  • 福山 一樹
    株式会社電通デジタル

    1999年電通入社。入社後、クリエーティブ部門で広告制作に従事。その後、営業部門で自動車、アパレル、エンタテインメント業界を担当。2009年より現職。エネルギー、運送、通信、製薬・医療器具、食品、金融、エンタテインメント、大学などの業界で数千~数万ページの大規模プロジェクトに従事。
    <共著>
    オウンドメディアコミュニケーション 成功の法則21(ソフトバンク・クリエイティブ/2012)

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