“社会”からリソースを得る「ソーシャル・ソーシング」の可能性 #01

生活者による生活者のためのマスメディアの夜明け

  • 蓮村 俊彰
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

今の時代、ネットの普及に伴いぼくらは自分の興味や関心にもとづいて、ネットラジオや動画配信のような形でさまざまな情報発信を行うことができます。

一方で「電波」を使用する情報発信をぼくら一般人が行うことは法律上できません。いわゆる“放送”はとても強い情報浸透力を持っているので、ネットでの通信と違いさまざまな制約のもと、放送免許を交付された特定の事業者にしか許されていません。

ご存じの通り、日本の民間放送事業者は「広告費」で成立しています。特に地上波を用いる民間放送局は視聴者からお金を徴収することはなく、広告費で放送事業を成立させています。

J-WAVEとREADYFOR、電通の3者による連携事業として2013年10月7日にリリース

 

2014年元日、民間放送業界でエポックメーキングな出来事がありました。FMラジオ局J-WAVEが一般生活者(リスナー)から番組企画を募集・選考し、一般生活者からクラウドファンディングで制作費を集め、その資金で元日特番を制作・放送するという今までにない試みを実施しました。

その名も「LISTENERS’ POWER PROGRAM」。リスナーのつくりたい番組を、リスナーみんなの力でつくるプログラムです。

日本の民間放送始まって以来のスキームを拡張する試みが成功しました。

スキーム概要図

 

この新しいスキームは生活者にもっとマスメディアを自分ゴト化してもらい、いわゆる「マスメディア離れ」を解決できないか、という思いからたどりつきました。 

生活者1人1人が、自らの手で“マスコミュニケーション”を創る仕組みができれば、つまりマスメディアを“共創”するインフラが整えば、生活者とマスメディアとの間の“エンゲージメント”が一層高まるのではないか、という趣旨です。

趣旨に賛同してくれたJ-WAVE、READYFORという心強いパートナーを得てローンチがかなった事で、早速、他のラジオ局でも同様のクラウドファンディングによる番組制作が行われ、この流れはテレビを含む民間放送事業者に波及しようとしています。

近い将来には広告出稿とクラウドファンディングによる資金調達を両立するスキームを取り入れ、放送局と生活者だけでなく、広告主も含めた3者間でのエンゲージメントを高める仕組みまで昇華できればと考えています。

3者エンゲージメント・イメージ図

 

今回の企画で採用されている2つの仕組みはそれぞれ
【1】広く外部からアイデアを募る「クラウドストーミング」
【2】広く外部から資金を募る「クラウドファンディング」
と呼ばれています。このように外部から「アイデア」や「資金」の他「スキルやノウハウ、労働」など有形無形さまざまなものを調達することは総じて「クラウドソーシング」と呼ばれています。これはクラウド(Crowd=群衆)+ソーシング(Sourcing=調達)の造語で、文字通り不特定多数の群衆から様々な要素を調達するという意味です。
しかし、あえてぼくは浸透しつつある「クラウド~」という呼び方をせずに、勝手にですが、この共創関係の構築を前提としたクラウドソーシングを「ソーシャル・ソーシング」と呼びたいと思います。漠然と群衆からリソースを引き出すのではなく、皆で構成する社会から必要なリソースを提供してもらう事で、社会の皆と共創してゆく仕組み、つまりCSV(Creating Shared Value)を前提としたスキームを目指すという思いを込めています。

ソーシャル・ソーシングで調達し、CSVで還元してゆくソーシャルビジネススキーム図

 

この連載コラムではJ-WAVEの先進的な取り組みをはじめ、黎明期にあるソーシャル・ソーシングに秘められた可能性を探っていきたいと思います。

プロフィール

  • 蓮村 俊彰
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    学生時代にカメラマン業で法人化(起業)。約40カ国を取材。その後、社会的影響力のある組織でソーシャルビジネスを興したく電通に入社。電通主導のビジネスの新規開発に取り組む傍ら、空港民営化などのPFIコンセッション入札事業構想アドバイザリ業務などのPRE/PFIコンサルティング、新規商業施設開発事業構想コンサルなどに従事。
    事業開発例として、2013年日本初のクラウドファンディングによるマスメディア放送「LISTENERS’POWER PROGRAM」事業を構想、立ち上げに参画。2016年日本初のFinTech産業拠点The FinTech Center of Tokyo 「FINOLAB」の事業を構想、 設立に参画、現在も運営チームとして日々活動中。

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