デジタルときどきグローバル #11

アメリカと日本のブリーフは、どっちがキツいか。

  • Yasuharusasaki2013s
    佐々木 康晴
    株式会社電通 第4CRプランニング局 局長/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/デジタル・クリエーティブ・センター長

みなさまこんにちは。さて、佐々木が日本に帰ってきてから、もう4ヶ月近くたちます。あっという間です。東京の朝のラッシュにも慣れました。ニューヨークの、ガタガタとポップコーンみたいに揺さぶられる地下鉄に乗っていたことを思えば、東京の地下鉄なんて揺れが優しすぎて、立ったまま寝ていても大丈夫だぜ、と思ってちょっと試してみたら、よろけて思い切りドアに体をぶつけて、恥ずかしい思いをしましたよ。それから、ニューヨークと同じ感覚で日本のタクシーについちょくちょく乗ってしまうと、お小遣いがいくらあっても足りないこともわかりましたよ。

そんな佐々木ですが、東京では、日本のクライアントのお仕事もいろいろ始まりました。もちろん今もグローバルにかかわる業務は続けていまして、日本の仕事と海外の仕事が共存していたりするわけですが、地下鉄やタクシーの違いのように、この、日本と海外の仕事の進め方にもけっこうな差があるなあと最近思います。今日はそんなお話をひとつしてみましょう。

僕らの仕事の開始時には、オリエンとかクリエーティブ・ブリーフと呼ばれるものが存在します。ブリーフには、広告の目的は何か。広告したい商品やサービスにはどんな特長があるか。マーケットがどうなっていて、誰にどんなことをメッセージしたいのか。どんなキャンペーンにしたいか、などが書かれています。海外の仕事では、このブリーフがかなり明快、クリアでスケスケです。事前にクライアントとストラテジーと営業がしっかりと合意した、せいぜい2ページの文書になって、クリエーティブに渡されます。忙しくて、そして物事を直感的に理解したいクリエーティブは、この2ページのブリーフを信じ、理解し、ひたすらそこを深堀りすれば良いわけです。だから速い。ブレない。おもいっきり走れる。

でも、日本だとちょっと事情が違うような気がします。ブリーフ自体は、同じくらいの2ページ書類だったりはするのですが、とにかくいろいろ詰め込んであって、全部書いてあって、何を訴求すべきかがあいまいであることが多いような。じとっと湿っていて重いブリーフ。そしてたいてい営業やクライアントから、ものすごい厚さの「参考資料」とかいうものが同時に渡されます。調査データとか過去の素材とか社長のインタビュー記事とか。渡す側としては、少しでも情報をあげて、より良く濃いものを考えてほしい、という「愛」のつもりだとは思うのですが。忙しいクリエーティブはこれを全部読み込めなかったり、もしくは、いろんな解釈があいまいになって、結果、アウトプットがみんなの想像からブレたりする。そのブリーフも、クライアントやその上司と握れていないこともあって、プレゼンしたら「なんかちょっと違うなあ…」なんてことになったりも。

日本のブリーフはユルくて、アメリカのはキツい、と。いや、日本の仕事がぜんぶそうだ、ということではないのですよ。たくさん材料を与えてほしいクリエーティブもいるかもしれません。アメリカの仕事はたまに、クライアントとブリーフを握るまでの時間がかかりすぎて、クリエーティブを考える時間が少なくなることもあるし。どっちがいいかは、一概には言えないのですけれども、僕としては、クライアントや営業やストラテジーのみなさんには「情報を絞るという美しさ」をもう少し感じてほしいなあと、思うのです。その絞り方に戦略的ユニークネスが出たりするのになあ、と。たまには、キツキツのブリーフでいきましょう。

この、アメリカと日本の仕事の進め方の違いは、他にもいくつかあるので、これからもご紹介していきたいなあと思います!

 
 
これまた関係ない写真ですけど、ニューヨークでよく見かける、
いろいろ盗まれて削ぎ落とされてシンプルな状態になった自転車。
ここまでやられると美しい…かな…。

プロフィール

  • Yasuharusasaki2013s
    佐々木 康晴
    株式会社電通 第4CRプランニング局 局長/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/デジタル・クリエーティブ・センター長

    1995年入社。コピーライター、インタラクティブ・ディレクターなどを経験した後、2011年からニューヨークに出向。帰任した現在もCDCとDentsu Aegis NetworkのExecutive Creative Directorを兼任し、グローバルとデジタルの間で、日々面白いものをつくろうともがいている。カンヌ金賞やCLIOグランプリ、D&ADなどの広告賞を数々受賞し、審査員経験も多い。2011年クリエイター・オブ・ザ・イヤー・メダリスト。

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