プランナー’s 振り返りトーク 今までのこと&これからのこと #03

自らの宿題とこれからのプランナーのみなさんへ

——今までプランニングの現場での課題感を聞いてきたのですが、昨年9月に刊行した『ソーシャルエコノミー』の中でも自らの宿題と語っていましたよね。

金田:そうですね。通常、自分でやった事例をまとめて、それを解説して本にする、というパターンが多いですが、今回は、今、起きている事象を解読して、今後の企業のマーケティング活動に対するアジェンダセットする、ということで書いたので、具体的な自分自身の事例をつくっていくのはこれからです。共著のメンバーそれぞれが、今、手掛けていることはありますけれどね。野中郁次郎先生も最後に解説で書いてくださいましたが、これを具現化させていくのは、私たちのみんなの宿題です。

——広告会社としては「あなたと長いおつき合いをしていきますよ」というふうにクライアント側からも思ってもらえないといけないし。

金田:企業と生活者のロングエンゲージメントが重要であるのと同時に、クライアントと私たちがパートナーになってロングエンゲージメントできるかが、これからより重要になっていきます。企業と生活者の関係でいうと、ブランドそのものが、どうしてもプロダクトの機能では明確な優位性がつくれなくなっている中で、生活者同士の「和」をつくる場を、企業がいかに、つくっていくかが、ブランディングそのものになっていく時代になっていくのではないでしょうか。

日本に限らず、いろんなオーソリティが、共創(コ・クリエーション)とか、CSV(Creating Shared Value)とか言っています。企業価値が、プロダクトだけじゃなくて、「世の中とのつながりをどうつくっていくか」によってつくられるようになる、とみんなが言ってる。次の時代に向かってそういうブランディングが、始まりつつあるんじゃないかと思いますね。

——人と人とのつながりが結局一番大事なことで、人と人とのつながりって、ソーシャルとか言いながらも、結局、毎日のおつき合いをどういうふうに礼儀正しくつなげていくかですよね。どこまで行っても、人の心を動かすには人が……。

金田:人が介在するわけですからね。それは、単発に何かのメッセージを送ったから、すぐに人を動かせるわけではないですよね。ずっとその人の変化を見ながら、常に一緒にいるという企業の振舞いがないと、人を動かせない時代になっているんだなと思います。

海外のソーシャルリスニングの女性アナリストに話を聞くと、「ソーシャルリスニングは、みんなの声を傾聴すること。今までの広告会社は、男女の関係で言うと、誕生日やデートときだけプレゼントを渡すという関係をつくってきた。単発の傾聴。でも、これからは違う。毎日毎日ちゃんとメッセージを送りながら、連絡とって、君のことをいつも心配しているよ、ケアしているよとやりとりし続けないと、恋愛できない。そんな恋愛を企業はしなければいけないし、広告会社も、そんな関係づくりをサポートしなければいけない。」と言ってました。広告会社の仕事って、そういう単発・フロー型に見られているんですよね。でも確実に変わっていくでしょうし、変わりつつありますよね。

ただ、生活者同士の和をつくるブランディングの一方で、モノをつくり、発信するというブランディングももちろん並走するでしょう。単発的になのか、継続的になのかは別として。たとえば、ものすごい画期的な強い商品が出たときは、プロダクトの優位性を、きちんと広告量も担保しながら発信していくというやり方が効きます。これを従来型と言うのであれば、従来型の方が通用するケースは当然あります。モノをつくり、広告で言いたいことを発信していくブランディングと、モノから離れ、みんなの和をつくる、そのサポートをすることによる遠回りのブランディングの両方になっていくんでしょうね。

——だから、どっちかに振り切れるということでもないですよね。

金田:どっちかに振り切ることも、企業の意志如何であり、正解はないのですが、当面は並走ですよね。

和をつくるブランディングを実践する中で、企業・ブランドと生活者との立ち位置をどうするか、ここがすごく難しいんです。いろんなパターンがあります。『ソーシャルエコノミー』の中では、「育て愛」というキーワードを出しているんですけど、企業が完成したものを生活者に出すんじゃなくて、企業と生活者が一緒に不完全なものを育てていきたいという気持ち。生活者は育て愛を求めていると書いています。

では、企業と生活者が、「育て愛」で、何を一緒に育てるのか?商品そのものであれば商品開発の共創=コ・クリエーションですよね。そうではなくて、商品の思想を一緒に育てていくのであれば、テーマ型のコミュニティですよね。そのとき、企業は、事務局なのか、プロデューサーなのか、またはスポンサーなのか、ファシリテーターなのか、後ろから見守り応援するサポーターなのか、幾つも選択肢があるんです。どういう立ち位置で生活者と接していくのか、これも設計する上での重要なポイントですね。企業は何者?どんな役割?と。

——プランナーのポイントとして、自分の今気になることが、プロフェッショナルになることというのと、あとは視野の広さが大事とのことですが、金田さんが今まで10年近くプランナーとしてやられてきている中で、ふだん、情報収集とか、生活者目線がすごく失いがちなんじゃないかなとすごく思っているのですが、その辺はどうですか。

金田:私はそんなに情報収集が得意っていうわけではありません。でも、どれだけ周囲の人を見ているかは大切だと思ってやっています。この人は、今、何を面白がって仕事しているのか?何に挑戦しようとしているのか?この人は、最近、何をキーワードに仕事に臨んでいるのか?というような見方で、いろんな人を見たり、仕事の話を聞くと、面白がって、みんな話をしてくれる。その中で、当然、私自身の話をする。面白がって聞いてくれる。

これを繰り返していくうちに、「あの人はこんな分野で、最近、こんなことやってますよ。」といった情報が入ってくる。忙しいし、すぐにヒアリングしに行くわけではないのですが、ふと、自分の仕事の中で、悩んだときに、そういえば、あの人がこんな情報を持っていると聞こえてきたな、ヒントになるかも、聞いてみよう、と思い出して聞きに行く。すると、ストレートなヒントにはならなくても、何かしらのヒントになってくる。これを20年も繰り返していくと、自然に情報が入ってくるような好循環ができるというか。無理やり何か新しい情報をとっていかなくても、新しい情報を人が自然と提供してくれるという、そういう状況になっていくんですね。相談されることが多い人って、すごく情報が集まってくるじゃないですか。私よりもっとすごい人が情報サイクルを持っている人がいます。いずれも、相談されたり、相談したりを繰り返していくうちに、情報サイクルが出来上がって、自然に情報が入ってくる環境をつくれるんだと思います。

私はソーシャルメディアをめちゃくちゃ使いこなしている人間ではないのですが、実は(笑)。でも、本を書く上で、ソーシャルメディアを使いこなす人の話や、ソーシャルメディア上の情報のやりとりを、かなりたくさん見たり聞いたりしました。ソーシャルメディアは、リアルな人間関係みたいに時間をかけずに、発信した分だけ情報が返ってくる、その情報サイクルをつくってしまう仕組みなんです。

——人と人との基本的なおつき合いで、これはちょっと金田さんに話しておいたほうがいいかもしれない、みたいなことで情報サイクルができていくということですね。

金田:だから、プランナーでもうひとつすごく必要なことは、「フラットに人を見る」ということです。私はプランニング・ディレクター(PD)なんですけれど、別にPDになったからって上から下に教えてるわけではなくて、この人が持っているすごくいい部分、優れた部分があって、みんな、それぞれの良さや得意なことを持っていたりするわけです。上下関係を意識せずに、フラットな目線でその人たちを見るとか、この人はこういう人だという先入観を持たずに、ゼロベースで、ニュートラルに見るように気を付けてはいます。そうすると、見えなかったことも見えてきます。かつ情報も入りやすくなってきます。そういう自分の環境を自然につくっていくというのがすごく重要な気がしますね。

——PDというお話が出たのですが、これからのリーダーシップについてはどう考えますか。

金田:今までのリーダーというのは、強い統率力があって、マスタープランをつくって、これに向かって行くぞという、そういうリーダー像だったけど、これからは、これだけ不透明で、複雑な時代だと、また別のリーダー像になってくる気がします。マスタープランの策定が本当に難しいんですよね。神輿の「わっしょい」は「和を背負う」が語源らしいのですが、まさにみんなに「わっしょい」されていくリーダー像ですかね。強い統率力というよりは、みんなの力を引き出していって、みんなが動きやすくなって、みんなが「わっしょい」したくなるリーダー像に変わっていくんじゃないかな。プランナーもまさに、一人でプランニングができるわけではないので、「わっしょい」される力を持っていれば、強いプランをつくれるんじゃないですかね。みんなの力を結集させて。

——そうですよね。

金田:ただ、「わっしょい」される中で、ジャッジしなくちゃいけないポイントというのはあるんですよ。こっちにもあっちにも神輿は進めるけれど、「どっちなんだろう」って。または「こっちに行きたい」「いや、あっちへ行きたい」と色んな人が色んなことを言う。そんな中で「こっちに行こう」の一声が必要だったりしますよね。これは「ついてこい」の統率力はなくても、「こっちへいこう」の判断力というか、決断力は、すごく必要になってくる。「私についてこい」みたいな統率力はなくても、困ったときに、みんなの声を聞いて「こっちへ行こう」と判断する力も併せ持つのが強いリーダーなんでしょうね。そうなりたいですよね。

— 最後にこれからのプランナーのみなさんに向かって一言いただけますか。

金田:小さく始めることがすごく大切だなと思っています。デジタルもやらなきゃ、何とかもやらなきゃと、焦るより、たまたま出逢った仕事の領域を、完璧にやっていく、まずはそこからのスタートと決意するこが大切ですね。その領域を完全にやり抜けるようになると、もっと、もっとと、次に行きたくなる地点が見えてくる。自然に。物足りなくなって違う領域に行く場合もあれば、その領域を更に極めていく場合もある。

そういう意味では、焦って、この領域とこの領域を習得しなければ!と思わず、今やっている領域の本質的なところをちゃんと突き詰めること。そうやってその領域を突き詰めるべき時期に突き詰めて、ちゃんと消化していかないと、次に行けないんですよね。

だから、私、今でも思いますけど、営業という仕事は突き詰められなかったんですよね。もし営業を突き詰めていたら、全然違う目が出てきただろうなと思ったりして。でも逆に今の自分はいなかった。いずれにせよ、そのときにやるべきことを、やり抜くと次が見えてくる。常に今あることを100%やり抜くということなんじゃないですかね。

— どうもありがとうございました。

プロフィール

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    金田 育子
    株式会社電通 iPR局

    1993年電通入社。
    ストラテジック・プランナー。セールスプロモーション、メディア、インタラクティブ、戦略PRのプランニング現場を経て、統合コミュニケーション・プランニングに従事。クライアント業務に携わりながら、様々な新しいプランニング手法の開発も推進。主な開発実績として、コンタクトポイント・マネジメント(2002年)、ソーシャルメディア時代の消費行動モデルSHIPS(2010年)、トリプルメディア対応のマーケティングダッシュボード(2011年)。翔泳社より「ソーシャル・エコノミー」を共著(2012年)。

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