プランナー’s 振り返りトーク 今までのこと&これからのこと #02

プランナーの領域が広がる中での課題あれこれ

——どんどん統合していく中で、実際、プランナーの領域というのも広がってきていて、「プランナー」という言葉がこのままでいいのかなというのも思ったりするのですが、今課題だと感じていることは具体的にありますか。

金田:領域が広がる中で、さっきの水平、垂直統合の話を現実にしていくことが今課題ですね。4Pの「水平統合」と、事業戦略からマーケティング戦略そしてプロモーション(=コミュニケーション)戦略までの「垂直統合」がプランニングに求められる時代なんですよね。(下図)


まず、水平統合というのは2つのレイヤーがある。ひとつは、4PのひとつPromotion(プロモーション)の中での水平統合、これは、消費者との接点を統合すること。広告、SP、PRなどのあらゆる顧客との接点の統合ですね。もうひとつは、4P全体の水平統合。価格戦略、商品戦略、流通戦略とコミュニケーション戦略を水平統合すること。これが現実的に提案・実施できる人は稀ですね。今度は垂直統合の話。事業戦略からマーケティング戦略、そしてプロモーション戦略まで縦につなぐ垂直統合。

これを実際にやろうとすると、経営部門とも向き合うことになり、プランナーの領域感、視野を大きく変えなければいけなくなる。これに対応する知識や素養があるか、というのが次のプランナーの課題ですね。プランナーというよりビジネスマンとしての基本素養が必要だなと、すごく最近感じます。

——電通は広告会社を名乗っているわけですが「クライアントが抱える課題を解決します、そして実際に運用までお手伝いできるのが電通という会社なんです」というふうになってきているのも同じお話でしょうか。

金田:そうですね。一部、同じですね。あらゆる切り口の課題からコミュニケーション(プロモーション)へ具体化させていく。ただし、一部と言ったのは、広告というのは図からも分かるとおりプロモーションのひとつの手段であるので、広告会社と名乗ると、ごく一部しか名乗っていないことになりますよね。電通はもっとスコープが広い。ただし、その中で、もうひとつ重要なのは、統合していけばいくほど、それぞれの部門が薄くなりがちだけれど、むしろ、それぞれの部門が厚くならないといけないということですね。あとは、統合するとき出てくる重要な役割が「のりしろ」。それぞれの部門をどう統合させていくのか、その「のりしろ」がより重要になります。それは、ひとりのプランナーにも置き換えられることで、プランナーとしての領域が変わっていくというか、拡大していく中で、自分の強みって、自分の原点ってどこにあるんだろうということが、すごく重要になる。

過去の自分は?今の自分の強みは?それを俯瞰して考えると今の自分のドメインはどこにあるんだろう?ってまずは自分自身を理解することがとっても大切だし、統合と言われる時代だからこそ、「自分って何者?」ということを把握・自覚することが必要になるのではないでしょうか。

一方、「自分って何者?」というドメインがはっきりすれば、そこから先、いろんな方向にどんどんレバレッジしていける。レバレッジとは自分の原点の強み=ドメインがあって、初めて成立すること、それを忘れてしまうと、結局何のプランナーなのかが分からないという危険性はすごくあると思いますね。

——これからのプランナーに求められることがあるとしたら、例えば何だと思いますか。

金田:自分の今、直近にあるもののプロフェッショナルになること。つまり自分のドメインを意識すること。あとは、俯瞰できる視野の広さ、つまり統合的な視点。その両方を兼ね備えているということでしょうね。どこかの領域のプロにならずにして、いわゆる広い範囲での統合的なプランナーにはなれないですし、俯瞰的な視野がなければ、次にレバレッジ効かせて、次の統合をつくっていくこともできないということだけは明らかですね。

——失礼な言い方ですが、本当はそれって社会人として当たりまえのことですよね(笑)

金田:そうですね。でも、それって(自分のことって)案外、何が強みで何が弱みかって分からないものですよ。案外。

——では、マスメディアを中心としたプランニングと今のソーシャルメディアを含めたプランニングで共通している大事なことはなんでしょうか。

金田:すべてのプランニングで共通して言えることは、思考の“量”が重要ということでしょうか。情報を発信していく中で、どんな情報を、どのような文脈で、道筋で出していくかを用意する中で、どれだけの可能性を考えたか、その思考の“量”が必要だということは共通していえることだと思います。思考の段階では、当然一個の文脈だけじゃなくて、こっちの文脈はどうだろう?いやいやこっちの文脈はどうだろう?そのときの仕掛けは?と幾つも考える。この思考の“量”が重要だというのは、マスメディアのプランニングもソーシャルメディアのプランニングも共通して大事なことです。可能性のあることの棚卸、そのための思考の量。

一方で、マスメディアとソーシャルメディア時代のプランニングの違いはというと、動的に対応できるかどうかですね。この文脈が結構効いて、動いているよね、というところを見ながら、じゃ、この文脈をもうちょっと強く立てていこうと、すごく動的に対応できることは、マスメディアでは難しかったことだけれど、ソーシャルメディアなどのインタラクティブメディアでは、その試行錯誤というか、動的な対応ができますよね。

——文脈をいくつも用意して、走りながらその文脈を変えていくということですか。

金田:走りながら文脈を変えていく、というか、動的とよく言われるのは、ある文脈を世の中に投げ込んだときに、すごく偶然とも言えるような要素が入ってきて、たとえば、ある事件が起きて世の中のある空気が起こるとか、強い誰かが発言したり、とか。そして用意しておいた文脈が強くなったり弱くなったりする。

だから、いくつかの文脈を用意しておいて、強くなるものを、より強くしていく感じ。あくまでも生ものなので、偶然が絡むのだけれど、でもそれって絶対に、自分が仕掛けていくという必然性がなければ起きない偶然だったりするという、これの連続なんじゃないかなといえますね。

——その偶然と必然の絡み合いが二つ目に大事なことだと。

金田:そうですね。テクノロジーの発達と共に、偶然的にも必然的にも、世の中に起きている反応を可視化されて、より早く見られるようになったので、送り手側も、どう動かしていくのかの、ある種、設計もしやすくなったわけです。発信する手段も増えましたしね。

——プランナーとしては手段が増えたというふうにプラスにとるほうがいいですよね。

金田:「そうですね。ただ、複雑になったな、と思います。それは『ソーシャルエコノミー』の話につながっていくんですけれど、結局、ソーシャルメディアがあることによって、すごく特定の人たちがグッとその関心事について集まっていて、集うようになったということです。

地縁によるコミュニティではなくて、関心事によるコミュニティができるようになった。このコミュニティをつくり、活性化させるエネルギーの作り方というのが、マスメディアだけだったときに比べては確実に変わってきていて。どうエネルギーを高めるために動かしていけばいいんだろうという視点は、ソーシャルメディアが出てきたからすごく変わってきたと言えますよね。この事象は今初めてある手ごたえですよね。

このエネルギーがどういうふうに生まれ、どう使っていくかというところは、いわゆる企業やブランドのコミュニケーションで、今みんなが模索している状況なんだろうなと思います。

——そういう意味で、『ソーシャルエコノミー』に登場するAKBはそういうすごいエネルギーを生んでいると思うのですが、同期の小西圭介さんが書かれた『ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略』という本の中でも海外の事例を見ると、日本ではまだまだこれからかなと感じます。

金田:「世の中ごと」いうのはまだまだかもしれませんね。特定のみんなですごく盛り上がったというのはたくさんケースとして出てきていると思うけど、B-1グランプリとか、AKB48みたいな。本当に日本の国民の世の中ごとになった「うねり」をつくった企業・ブランドのケースは未だなくて、それは、もしかしたらできないことなのかもしれない。でも、時間をかけて輪をつくっていって、その輪が温まって、和になっていけば、いつか祭りもできるんじゃないかという、今、それに向かって信じて、創りあげている、でも結果が見えないと続けられない、そこの“せめぎ合い”なんじゃないかと思います。

—— 電通の廣田周作さんと批評家の濱野智史さんの対談でも、やっぱり同じような、「特定のネタというのは何だろう」というのを分析していて、それはやっぱり生放送性みたいなことなんじゃないかなというのを話しています。
オリンピックというのはその最たる例なんですけど、オリンピック、AKB、総選挙、それ以外って何だろうと思ったときに、なかなかそこまでのイベントごとってつくれていないですよね。それを、うそっぽくなく、企業なりブランドなりがつくっていくって、すごい大変なことなんだろうなと。一般消費者たちも、さすがにこれって広告なんじゃないかみたいなことに敏感になってきていると思うので、そういう意味で、どういうふうになっていくんだろうなということにすごく興味があります。

金田:その大変さっていくつかあって、一個は、何をネタにするか?本では“共益のネタ”と書いていますが、そのネタの発見が難しい。なぜ難しいかというと、ネタはひとつではなくて、大きなテーマがありながら、常に飽きさせないネタを放り込まなければいけないし、その反応は計算しきれない部分があるからですね。

もう一個の難しさは、それには時間がかかるということ。時間との戦いがあって、それをやり続ける意志こそが、時間との戦いに勝てる。ただ、その意思を貫き通せるチームが組めるかですよね。

だから、そういうコミュニケーションのチャレンジのときに必要なのは、時間がかかることを、初めからきちんと共有しておくこと、そして、あえて跳ねさせないということ。跳ねるとすぐに、消耗されてしまうから、跳ねさせずに、その和をずっと温めて、機が来たときにグッと、『ソーシャルエコノミー』でいう祭りを仕掛けていく、世の中ごと化していく。その機が熟すまで待つという忍耐強さをクライアントもプランナーもみんなで共有できるかというところが、一番今ハードルが高く難しいんですよね。

プロフィール

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    金田 育子
    株式会社電通 iPR局

    1993年電通入社。
    ストラテジック・プランナー。セールスプロモーション、メディア、インタラクティブ、戦略PRのプランニング現場を経て、統合コミュニケーション・プランニングに従事。クライアント業務に携わりながら、様々な新しいプランニング手法の開発も推進。主な開発実績として、コンタクトポイント・マネジメント(2002年)、ソーシャルメディア時代の消費行動モデルSHIPS(2010年)、トリプルメディア対応のマーケティングダッシュボード(2011年)。翔泳社より「ソーシャル・エコノミー」を共著(2012年)。

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