ブランディングって何? #04

勝ち組ブランドは、顧客と直接つながっている!

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    小西 圭介
    株式会社電通 マーケティングソリューション局 コンサルティング・ディレクター

前回まで、ブランドを有形無形の「コミュニティプラットフォーム」の形成として捉え、その場のアクションを通じて顧客やファンとともに価値を生み出す今日的なアプローチを、「動詞のブランディング」として説明してきました。目に見えないターゲットではなく、顔の見える個人やコミュニティと直接つながること。これは、従来のマーケティングの常識や枠組みを変えていくことでもあります。

昨今、世界的にデジタルマーケティングの手法が重視されていますが、これも単なる広告テクノロジーやメディアの視点ではなく、「顧客や生活者と直接向き合い、価値を共に生み出す」という、中長期的なビジネスとマーケティング戦略のシフトとして捉えるべきです。

例えば今日、革新的な価値を生み出しているリーディングブランドといえば、どんなものが思い浮かぶでしょうか。その多くが、ダイレクトサービスや製造小売業、あるいは製品自体のプラットフォーム化などで顧客との直接的な接点を持ち、差別化されたブランド体験を生み出すとともに、顧客からのフィードバックと価値共創を強みにしているのではないでしょうか。

さらに進んだブランドでは、顧客やファンを今までにないかたちでつなげて、新しい「コミュニティとしての価値」を生み出しています。ユーザーとの絆やコラボレーションをより強力なものにするとともに、個人の目標達成や社会的な課題解決を支援することで、消費行動やその共有自体をより意味あるものにしようとしているのです。

このことは、商品開発やブランドコンテンツ開発、セールスやカスタマーサポート、社会的活動など、ビジネスやブランドの価値創造のリソースを企業内資源にとどめず、顧客やサポーターを巻き込んで外部に拡大していくことでもあります(図1)。そして、これからの時代は、どれだけ企業の外部にこうしたコミュニティ資源を持てるかが、企業やブランドの差別化の重要な鍵となっていくはずです。

顔の見える顧客や生活者と直接向き合うことは、コミュニケーションやチャネル戦略にとどまらず、従来とは違う発想でマーケティング戦略を考えることにつながります。「ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略」ではこうした発想転換について、事例とともに解説していますが、ここでは、今日的なブランド価値強化のヒントを4つほど述べてみましょう。

1.市場を細分化する発想ではなく、顧客をつなげる発想をもつこと

市場のセグメンテーションといえばマーケティング活動の基本ですが、今日では、むしろ市場のコネクション(つながり)に着目することが重要になりつつあります。当初の想定から思わぬターゲットに波及する連鎖消費と呼ばれる現象も増えており、ファッションや飲料・食品、スマートフォンなどのブランドでも、顧客の連鎖消費がもたらす大ヒット商品が生まれています。ブランドを基盤に市場を拡大する上で、属性の異なるターゲット層をつなぐテーマや関心、活動を戦略的に設計し、波及効果を生み出すところにチャンスは生まれます。

2.顧客とのつながりを可視化し、顧客の生み出す価値を顕在化すること

多くの生活者に受け入れられたブランドは、必ず顧客自身が消費シーンにおける価値を生み出しています。こうしたブランドは、売上やシェアといった実績だけではなく、ブランド資産の本質である、「顧客との絆」を可視化することで、製品価値を超えたブランドの強みを拡大することができる可能性があります。特に、自ら価値を生み出している「クリエーター」や影響力を持つ「インフルエンサー」を味方につけることができれば、ユーザーとの距離感を縮め、推奨や支持の波及効果を生み出すとともに、真似のできないブランド価値の強化と差別化を実現できるでしょう。

3.ブランド価値伝達から、生活者の共有価値創造に話法を転換すること

顔の見える顧客やコミュニティを想定すると、ブランドのコミュニケーションの仕方も自ずと変わってきます。そこではブランドの名前や価値を一方的に刷り込むモノログではなく、顧客や生活者の関心に寄り添い、話題を拡げるようなダイアログにコミュニケーションの話法を転換していくことで、より共感や支持を獲得していけるはずです。

ダイアログとは具体的にはどういうことでしょうか。
(図2)にそのテーマの例を示していますが、簡単にいえば、顧客に話題にしてもらいたければ、まず顧客自身のことを話題にすればよいのです。なお、これはマス広告やソーシャルメディアといった、特定のメディアに関わらないコミュニケーションアプローチであることを念押ししておきます。

4.インプレッション(露出)から、顧客によるエクスプレッション(表現)へ

最後は、ユーザーやファンが共有・参加できるブランドのコンテンツや活動などを通じて、ブランドについて顧客自身に語ってもらう、ということです。今日では、生活者の情報発信やシェアオブボイス(話題量)が、ブランドパワーと活力を生み出す大きな源泉となっています。企業発信によるメッセージから、顧客自身による話題やコンテンツ共有を生み出す仕組みをうまく創り出せれば、マーケティング投資をはるかに超えたブランド資産を生み出し、継続的な効果を拡げられるチャンスがあるのです。

このように、デジタルであれリアルであれ、生活者やステークホルダーと関係基盤を築き、その力を借りながら、新しい事業や価値を生み出していくシステムを創ることこそが、「ブランドコミュニティ戦略」の狙いです。もちろんそこでは、顧客が共感・参加したいと思える、「動詞」としてのブランド価値定義が必要になってくるわけですが。
ということで、あなたのブランドの「動詞」は何ですか?

ダイヤモンド・オンラインで、本トピックと関連してさまざまな事例を紹介した対談記事を掲載しています。よろしければこちらもご覧ください。

プロフィール

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    小西 圭介
    株式会社電通 マーケティングソリューション局 コンサルティング・ディレクター

    1993年入社。2002年米国プロフェット社に出向し、デービッド・アーカー氏らとグローバル企業のブランド戦略構築に携わる。現在はコンサルティング・ディレクターとして、数多くのクライアントのブランド・マーケティング戦略サポートを行うとともに、多数の講演、執筆などで、デジタル時代の新しいブランドおよびマーケティング戦略モデルを提唱している。著書「ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略」、訳書に「顧客生涯価値のデータベースマーケティング」(いずれもダイヤモンド社)他。

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