MITメディアラボと朝日新聞社がシンポジウムを開催「メディアが未来を変えるには~伝える技術、伝わる力~」

MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボと朝日新聞社は5月12日、シンポジウム「メディアが未来を変えるには~伝える技術、伝わる力~」を港区の東京ミッドタウンホールで開催した。メディアをテーマにした共同シンポジウムは昨年に続いて2回目。データを元に記事を作成する「データジャーナリズム」などをキーワードに、メディアの未来について議論した。

新聞もテクノロジーとともに

冒頭の主催者あいさつでは、朝日新聞社の木村伊量社長が「新聞ジャーナリズムの使命を果たしていくためには、紙でもデジタルでも、いかに読者に伝えるか、役立ててもらうかを目指すべき。朝日新聞はテクノロジーを柔らかく受け入れ、時代とともに新しい伝え方を追求し、全ての人に意味のあるメディアに生まれ変わり続ける」と力強く述べた。

木村社長
木村社長

 

データジャーナリズムの可能性

続いて、3月に朝日新聞社が開催した「データジャーナリズム・ハッカソン」(記者や編集者、エンジニア、デザイナーが各種データを活用して短期間で報道制作に取り組むイベント)でグランプリを受賞したチームが登壇。脳梗塞の治療にかかる日数を病院ごとに比較したコンテンツ「データで透明化する医療」を紹介し「データの公開で読者側の分析が可能になり、ジャーナリズムの質を高める透明化が図れる。データジャーナリズムには、情報ソースや編集・分析過程が明確であるという特徴があり、メディアが未来を変える大きな可能性を持っている」と結んだ。

「データジャーナリズム・ハッカソン」優勝チーム
「データジャーナリズム・ハッカソン」優勝チーム

 

データジャーナリズムの課題

次に、MITメディアラボの伊藤穰一所長とニューヨーク・タイムズのアマンダ・コックス氏、ザ・ハフィントン・ポストのニコ・ピットニー氏がそれぞれプレゼンテーションを行った。伊藤氏は、情報を視覚化したビジュアライゼーションの実践例として、動画や地図、テキストをシームレスに混ぜて制作したニューヨーク・タイムズの記事「Snow Fall」を例に挙げた。このように報道記者とデータ分析の専門家が共同で記事を作る機会が多くなっているが、文科系、理科系の両方にまたがるデータジャーナリズムの人材をどう育てていくかがこれからの課題であると述べた。また伊藤氏は自らが東日本大震災の直後に立ちあげた、地図にデータを組み込んだ放射線量マップ「Safecast」を挙げ「今は一般市民もデータジャーナリズムの手法でインパクトのある発信ができるようになっている。民主主義の未来や、国と国民の関係性の中で、どう技術やデータが役割を果たしていくかという視点からも、データジャーナリズムを考えるべき」だと締めくくった。

伊藤氏
伊藤氏

 

新興メディアの台頭

パネルディスカッション「メディア×テクノロジー:進化の先のジャーナリズム」には、伊藤氏とコックス氏、ピットニー氏が参加し、朝日新聞社の西村陽一デジタル・国際担当取締役がコーディネーターを務めた。海外のスター記者の独立や、新興メディアの立ち上げは既存メディアにどう影響するのかという西村氏の投げかけに対し、ピットニー氏は「大手パブリッシャーがイノベーションのリーダーになれない訳ではない。ただ新しいアプローチが必要で、低コストで実験できることと、スピード感が大事。新しい技術になじんでいる若い力が求められる」と述べた。伊藤氏が、デバイスの種類の変遷が早く混沌としている現状を指摘すると、コックス氏はモバイルの台頭を強調しつつ「5年たてば全く変わってしまうかもしれないわけで、柔軟性を持ったやり方が勝ち組になる。アルゴリズムに頼るのではなく、常に人の力が必要だ」と語った。

左から、西村、伊藤、コックス、ピットニーの各氏
左から、西村、伊藤、コックス、ピットニーの各氏

 

質疑応答はツイッターで

来場者からの質問はツイッターで受け付けるという手法が取られた。ジャーナリストの津田大介氏が集約してパネリストに伝え、活発な質疑応答が行われた。

津田氏
津田氏

 

※写真はいずれも朝日新聞社提供

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