テレビとソーシャルメディアのさらにいい関係 #10

結局泥くささみたいなことが大事かも

  • Take 02 6559 hirota
    廣田 周作
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター
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    濱野 智史
    情報社会学者・批評家・日本技芸リサーチャー

廣田: 「日本はおもてなしの文化を輸出して外資を稼ぐんだ!」みたいに大ざっぱなことを言う年長世代の人たちと、バリバリとソーシャルゲームで皆がハマれる仕組みを細かくつくって、経験を積み上げている若い人たちというのは、今は全然つながっていません。日本のサービス精神のコアである「おもてなし」って、意外にちゃんと研究されてない気がします。もっと「人に喜ばれる瞬間」の構造とか、仕組みとかがわかってくれば、魅力的なサービスやプロダクトに応用できるかもしれませんよね。

濱野: 全然つながっていないです。でも、共通項はいっぱいあるんです。

廣田: その研究をちゃんとやると、「日本のおもてなし文化」みたいな、ふわっとした概念が、きちんと仕様として定義されていって、そこには新しい価値が出てくるかもしれません。

濱野: 出てくると思います。ヨーロッパ人やアメリカ人の発想というのは、こういう政治思想はクールだとか、人類は皆平等とか、そういう理念を構築するのは得意。でも、非言語的で感覚的な、いわば美的な領域に関する体系化というのは、あまりやられていない。

いまこれだけソーシャルメディアなり、もしくはセンサー系の技術とか出てきて、いままでは口で何となく言うしかないとか、暗黙知レベルで伝えるしかなかったものが、ビッグデータじゃないですけど、データレベルで形式知で表せるようになってきている時代だと思うわけです、急にでかい話になっていますけど。

でも、こういうでかい話をしているからといって、ユーザー目線で開発するという、さっきの結論からブレてはいけないんですよ。ユーザーといっしょになってつくるからこそ、異様な洗練が起こるものだと思うので。

廣田: つまり、そこも情熱を持って、泥くさくユーザーと向き合っていく必要があるんですね。

濱野: そうそう。しかも、情報を隠さず、オープンにしていくと、あそこの研究はいいねという話になって、ファンが増えて、みたいな流れも期待できる。どこか極秘にショッカーみたいな組織が密かにそういう技術をつくっているという話だと、それはすっげえ怪しいという陰謀論が沸き上がって、叩かれて終わりなので、それは避けねばならないというだけだと思いますね。そして日本はまだ人と向き合っていく土壌のある社会だと思うんですよ。いまの大企業でそういうのがやりづらくなっているだけであって。

廣田: というか、むしろ誠意を示すためにも、ずっと開発を続けなきゃいけない、みたいなこともあるかもしれません(笑)。

濱野: いけないわけですよね、そこは。

廣田: フェイスブックとかニコニコ動画とかも、常に仕様が変わり続けているのは、そういうことなんですね。

濱野: だから、普通の企業の体系からすると、面倒くさいなという話になるんですけどね。いままでの企業慣習とか含めて、全部丸ごと変えないとだめな時代になってきているんだと思います。そこは難しいところなんですけど。

廣田: 何となく今後の展望っぽいキーワードも出てきたと思うのですが。

濱野: いわゆる分かりやすいキーワードというのが出てこなかったですけど。

廣田: 泥くささが大事、ということははっきりしましたね(笑)。

濱野: ですね。全然かっこよくはないんですが(笑)。でも、泥くさいの大事ですよ。AKBなんて全くクールじゃなくて、泥くさいドサ回りをやってきたからこそ、今がある。そういう積み重ねがファンとの信頼関係に結びついている。

廣田: そこは、マスメディアをつくってきた人たちも、面白い番組をつくるためだったりとか、面白い紙面をつくるために、ある種命がけでやってきたというところがあって、そういった「気づかい」とかは、もともと得意なんですよね。だからこそ、新しい技術をうまくつなげていくと、まだまだ価値が掘り出せる気がします。

濱野: よく考えたら、マスメディア業界ほど人間関係がすべてだという業界もないわけです。人脈がすごく大事なわけじゃないですか。その人間関係の気配りセンスを、業界の内側だけじゃなくて、新しく出てきた領域や一般のユーザーに、もうちょっと振り向けるだけでいいのに、という気がしますね。

廣田: 実際、放送局の方とか、出版社の方とかで、フェイスブックなどのソーシャルメディアをうまく使いこなしている人が、そこで企画のアイデアをうまく見つけていたりします。まさにユーザーの声と向き合うことで、数字が良くなったという話があったり。変にテクノロジーを敵視したり無視したりせず、より泥くさくユーザーと向き合うための一つのツールと捉えていくことで、自分たちが誠意を持ってつくっていることも伝わりますし、ユーザーからいろんなアイデアをもらうこともできるのかな、ということですね。

濱野: これだけいろいろ変わってきたら、本音トークの部分で分かった気にならないと、先へ進めない。ソーシャルメディアの時代は、泥くささとか、本音とか、本気とか、そういう体育会系っぽいノリが実は一番伝わるし、共有されやすいんだなってことは、常々実感しています。

廣田: そうですね。どうもありがとうございました。



連載「テレビとソーシャルメディアのさらにいい関係」は今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。

プロフィール

  • Take 02 6559 hirota
    廣田 周作
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    2009年に電通入社。企業のソーシャルメディアの戦略的活用コンサルティングから、デジタル領域における戦略策定、キャンペーン実施、デジタルプロモーション企画、効果検証を担当。社内横断組織「電通ソーシャルメディアラボ」「電通モダン・コミュニケーション・ラボ」などに所属。著書に『SHARED VISION』(宣伝会議)。

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    濱野 智史
    情報社会学者・批評家・日本技芸リサーチャー

    1980年生まれ。慶應義塾大大学院政策・メディア研究科修士課程修了、国際大グローバル・コミュニケーション・センター研究員を経て、現在はウェブ関連サービス会社の日本技芸でリサーチャーを務める。2011年から朝日新聞論壇時評委員、千葉商科大非常勤講師を兼務。専門は情報社会論・メディア論。ウェブサービス、ネットコミュニティーの社会学的分析や、一般ユーザーの実態調査(フィールドワーク)を手掛けている。主著に『アーキテクチャの生態系』(08年、第25回テレコム社会科学賞・奨励賞)、『日本的ソーシャルメディアの未来』(佐々木博氏との共著。11年)、『希望論』(宇野常寛氏との共著。12年)など。

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