顧客を動かすデジタル・マーケティングの実践 #01

デジタルソリューションの新潮流

  • Yasuharusasaki2013s
    佐々木 康晴
    株式会社電通 第4CRプランニング局 局長/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/デジタル・クリエーティブ・センター長

これからのデジタルソリューションに必要なのは、多くの人の心を動かす「Big Story」。ユーザーが共感し、語りだす大きなストーリーがあることで「Big Community」が生まれ、新しいサービスやプロダクト、アプリなどさまざまなソリューションにまで広がっていく。大きなソリューションを生む「Big Story」をどのようにつくり、機能させていくのか、その方法をクリエーティブの視点から解説する。

 

「Story」ではなく「Big Story」

今回は、「デジタルソリューション」の話をします。でも、ひとくちにデジタルソリューションといっても、みんなそれぞれ違うところを見ていたりしますよね。マーケティング的な視点、メディアの視点、表現の視点。ターゲットのこと、効率のこと、そしてもっと大きな効果のこと。デジタルに関わる人も今はさまざまな領域に広がっています。私はクリエーティブサイドの人間なので、今回はその視点からデジタルソリューションについて考えたいと思います。でもこの話は、どの領域の方々にも大事なことだと思っています。

デジタルソリューションをクリエーティブの視点で単純化して考えると、3つの要素に分けられるでしょう。まず広告しなければならない商品やブランドがあり、そのために必要なストラテジーを立てて、その上で適切なソリューションを組んでいく、というごく当たり前の3つのパーツです。最近はこれらをつなげるデータが見えるようになってきて「ビッグデータ」とか呼んだりすることもありますが、そのデータを見ながらストラテジーやソリューションを最適化していくわけですよね。

この3つのパーツのうち、ソリューションの部分だけを見ても、ユーザーとの出会いをつくるトラディショナルなメディア(マスメディア、OOHなど)や、これを受けるウェブにモバイル、繰り返し見たくなるようなコンテンツ、そしてユーザーを集めて広げるSNS、さらにみんなを活性化させるプロモーションやPR、そして最終的に買っていただくための実店舗やEコマースでの施策…、やるべきことは本当に多岐にわたります。SNSもフェイスブック、ツイッターのほか、インスタグラムのようなスペシャルなものなど多様で、それぞれにファンやコミュニティーが形成されているわけですから、どこでどう出会ってもらい、何を見せて、どこで活性化して…、と考えることはもりだくさんです。一つ一つの細かい部分はとっても大事ですが、でも、今はその細かい部分ばかりに目がいってしまい、息切れして、すぐに測れる数字や目先の効率を上げるテクニックだけにとらわれていないか、とクリエーティブとしてはちょっと気になっています。

今、デジタルソリューションがつくられるプロセスには、大きなミッシングピースがあると思います。それは「Story」です。しかも、いま必要なのは普通のStoryではなく、「Big Story」です。「Big Story」があることで、ストラテジーやソリューションを楽につくることができ、かつ大きなソリューションを生むことができるのです。

「Big Story」とは、商品の特徴や他社との差といった「Small Story」を語るのではなく、ブランドの信念や存在意義を話すことです。ユーザーが聞きたい「Big Story」を提供して、ユーザーに気付いてもらい、自分ごととして話してもらい、体験してもらうことが大切で、そうすることでブランドとユーザーとの結び付きは深まっていきます。これはデジタルだからこそ実現できることです。ユーザーが共感する大きなストーリーを持つことで、キャンペーンの認知やネットでのインプレッションが飛躍的に向上し、実際の売り上げにもつながっていきます。

「Big Story」の力は、広告にとどまらない

いままでのコミュニケーションスタイルは、ユーザーが聞いている前で、高い台に上って、ブランドが言いたいストーリーを叫ぶ形でした。高い台はメディアということです。もちろんこの方法はいまでも有効ですが、最近は、SNSなど声高に話す装置を手にしたユーザーの中に分け入って、同じ目線から、友達のように話す必要があります。そして、ここで語るべきなのが「Big Story」なのです。みんなでわいわいテーブルを囲んだときに、大きな夢のことやみんなが好きなことを話せば友達が増えますし、自分のいいところを自慢するだけの人は多分、そんなに好かれませんよね。これがソーシャル・デジタル時代のブランドの立ち位置です。もちろん、ただ「いい話」をするだけの人も、さほど魅力はありません。Big Storyとは、単にソーシャルグッドの話をすることでもありません。まず、みんなが本当に聞きたい「大きなストーリー」を見つける。そしてそれを基にして、SNSでやるべきこと、メディアでやるべきことなどのタクティクスを各論として考えていく必要があります。

「Big Story」がうまくつくれると、自然に「Big Community」が生まれます。ユーザーをわざわざ1カ所に集めなくても、いろいろな場所でコミュニティーが生まれ、それが大きなコミュニティーになります。ストーリーが大きいほど、よいコミュニティーがつくられ、持続的に回っていきます。プレゼントキャンペーンなどで集めたコミュニティーは、プレゼントが続かないと不満が生まれ、人は去り、扱いが悪ければ、最悪、敵に変わる可能性だってあります。

それから、「Big Story」があると、ソリューションは広告だけではなく、新しいサービスやプロダクト、アプリ、コンテンツ、プラットフォームなどさまざまな領域に展開しやすくなります。

クリエーティブの仕事は広告表現をつくることと思われがちですが、それだけではなく、クライアントと一緒に「Big Story」をつくり、さまざまなサービス、プロダクト、コンテンツ、プラットフォームなど、表現だけではないソリューションを提供するところまで広がっています。「デジタル」にはやるべきことがたくさんありますが、私はその最初のステップである「Big Story」をつくっていくところから皆さんと一緒に仕事をしたいと思っています。デジタルソリューションに対し、僕らクリエーティブは既存のやり方にとらわれず、もっと深く関与していくべき時に来ていると思います。

プロフィール

  • Yasuharusasaki2013s
    佐々木 康晴
    株式会社電通 第4CRプランニング局 局長/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/デジタル・クリエーティブ・センター長

    1995年入社。コピーライター、インタラクティブ・ディレクターなどを経験した後、2011年からニューヨークに出向。帰任した現在もCDCとDentsu Aegis NetworkのExecutive Creative Directorを兼任し、グローバルとデジタルの間で、日々面白いものをつくろうともがいている。カンヌ金賞やCLIOグランプリ、D&ADなどの広告賞を数々受賞し、審査員経験も多い。2011年クリエイター・オブ・ザ・イヤー・メダリスト。

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