テレビとソーシャルメディアのさらにいい関係 #01

ネットとテレビの相互補完性〜バーサスからウィズ、コネクテッドへ

  • Take 02 6559 hirota
    廣田 周作
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター
  • 37
    濱野 智史
    情報社会学者・批評家・日本技芸リサーチャー

2013年1月7日発行の電通報に情報社会学者・批評家の濱野智史さんと電通プラットフォーム・ビジネス局の廣田周作さんの対談「共生へ動くテレビとソーシャルメディア」が掲載されました。ここでは電通報の番外編としてお二人が語り尽くしたテレビとソーシャルメディアのあんな話、こんな話を連載形式でご紹介していきます。


廣田: もともと、友人でもあるのですが、尊敬する社会学者の濱野さんにお越しいただきました。今日のテーマは、「テレビとソーシャルメディアのさらにいい関係」ということで、既存のテレビが、新しいソーシャルメディアとどういう関連性があるかということについて、お伺いしたいと思っています。

濱野さんはメディアの「アーキテクチャ(構造、設計思想)」を情報社会学的な観点から分析するというアプローチで研究をされていますが、テレビとソーシャルについて、どういうふうに考えていけばいいのか、どうすればより価値あるメディア環境が作れるのか、お話をお伺いさせて頂きたいと思います。

濱野: よろしくお願いいたします。

廣田: 数年前までは、ネットとテレビが、視聴者の時間を奪い合うという視点で、割とバーサス(対立軸)の文脈で語られていたと思うんです。それが、最近、ソーシャルメディアに関するデータを読み解いていくと、ネットとテレビは対立しているどころか、むしろ協調関係、相補関係にあるということが分かってきてまして、バーサス(対立)からウィズ(補完)へ、みたいな形に議論がシフトしているように思います。さらに最近では、スマートテレビなどの登場で、デバイスごとテレビとソーシャルがシームレスにくっついていく、いわば「コネクテッド」みたいな観点からも議論もされています。バーサス→ウィズ→コネクテッドみたいな形で、議論は変わってきてますが、実際、一視聴者としても、ソーシャルメディアとテレビがシームレスにつながることで、視聴体験もよりリッチになってきているのかなと思っています。
こういったテレビとソーシャルというのは、いつぐらいから、どういうふうに盛り上がってきているのか教えてください。

濱野: ニコニコ動画が出てきた2007年には、早晩こうなるだろうなとは予想していました。『アーキテクチャの生態系』(2008年・エヌティティ出版)という私の初めての著書では、ニコニコ動画などのネットサービスを社会学的に分析したのですが、そこではニコニコ動画を「擬似同期」という言葉で説明しました。ニコニコ動画というのは一見すると、動画サイトにコメントをつけて、みんなでしゃべって盛り上がるだけのサービスに見えます。しかし実際には、みんなばらばらの時間に動画を見てコメントをつけているのに、動画の再生タイムラインにシンクロさせる形でコメントを画面上に流すので、まるで常にリアルタイムでおしゃべりしながら動画を見ることができる。すると、あまり大して面白くないような動画も、すごくネタ的に面白くなってしまうんですね。僕はニコニコ動画が出た瞬間、これは来るな、と思ったんです。そして、ニコニコ動画がこれだけ面白いのであれば、テレビを見ながらソーシャルメディアで実況したり共有したりする流れも、そのうちすぐに一般化するだろうなと思っていました。事実、そうなったと思います。

ニコニコ動画の本質は、もはや動画コンテンツ自体は面白くなくても構わない、というところです。同じ映像を見ながら視聴者同士がつながっていること自体がみんな楽しい。こういう事態を社会学者の北田暁大さんは「つながりの社会性」という言葉で説明していました。インターネットのようにつながることが容易な環境が整うと、大事なのはコンテンツではなく、つながること、つまりコミュニケーションになってしまう。コンテンツ自体をじっくり味わうというより、みんなでつながっていること自体を確かめるために映像コンテンツなどを消費するようになるし、それこそ物も買うようになる。いまやコンテンツ優位の時代は終わり、コミュニケーションこそが王になる時代が来るのだ、というわけです。

ニコニコ動画の出てくるもっと前から、2ちゃんねるであっても一番盛り上がるのは何かというと、結局、実況だったんですよね。そういう意味で、ずっと源流としては、テレビとソーシャル的なものの相性がすごくいいだろうなという直感はありました。何もツイッターとかが出てきたから急に盛り上がってきたわけじゃないと思うんです。

廣田: テレビは、コンテンツを提供しているので、「いかに注目されるか」というところが価値だと思うんですけど、ソーシャルメディアは、ソーシャルメディア自体がコンテンツを提供しているわけではないので、いかにコミュニケーションをしやすくするか、つまり「つながりやすさ」という価値を提供していることになりますよね。テレビは、いかに注目されるかというところがビジネスになっていて、ソーシャルは、いかにつながりを生んでいくかがビジネスになっています。「エンゲージメント」という言葉が使われますが、僕からすると、エンゲージメントを生むためには、注目される価値も、つながりを生む価値も、それぞれの価値がどちらも必要で、それがようやくお互い重なってきたような気がします。

濱野: そういうことだと思います。
先ほど「つながりの社会性」という言葉を出しましたが、つながるためには、共通の「ネタ」というか、まなざしの一致する場所が必要なんですよね。だからソーシャルメディアというかネット上でつながりたいと思っている人は、実は共通のネタをすごく欲している。そこにテレビがすっぽりハマりやすい。ソーシャルメディアを使うような人はITリテラシーが高くて自分で情報収集もするので、受動的にしか情報を受け取れないテレビは見ないからテレビ離れが進む……というのはある一部の層には当てはまるでしょうが、一概にはそうとも言えないわけです。

逆に言うと、いま廣田さんがおっしゃったように、テレビのようなマスメディアからすると、「いま、このチャネルでやっていることが盛り上がっているんだよ」という空気を作りたいわけですよね。ネット時代になると、まさにその盛り上がりが可視化されるようになる。テレビで報じられたものが、ちゃんとソーシャルメディア上で盛り上がっていることが確認できるようになるわけです。だからマスの側からしても、ソーシャルメディアの存在はありがたいわけですよね。

廣田: 相互補完的に出てきているのかな、と思います。

次回へ続く 〕

プロフィール

  • Take 02 6559 hirota
    廣田 周作
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    2009年に電通入社。企業のソーシャルメディアの戦略的活用コンサルティングから、デジタル領域における戦略策定、キャンペーン実施、デジタルプロモーション企画、効果検証を担当。社内横断組織「電通ソーシャルメディアラボ」「電通モダン・コミュニケーション・ラボ」などに所属。著書に『SHARED VISION』(宣伝会議)。

  • 37
    濱野 智史
    情報社会学者・批評家・日本技芸リサーチャー

    1980年生まれ。慶應義塾大大学院政策・メディア研究科修士課程修了、国際大グローバル・コミュニケーション・センター研究員を経て、現在はウェブ関連サービス会社の日本技芸でリサーチャーを務める。2011年から朝日新聞論壇時評委員、千葉商科大非常勤講師を兼務。専門は情報社会論・メディア論。ウェブサービス、ネットコミュニティーの社会学的分析や、一般ユーザーの実態調査(フィールドワーク)を手掛けている。主著に『アーキテクチャの生態系』(08年、第25回テレコム社会科学賞・奨励賞)、『日本的ソーシャルメディアの未来』(佐々木博氏との共著。11年)、『希望論』(宇野常寛氏との共著。12年)など。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ