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顧客を動かすデジタル・マーケティングの実践No.8

「コンテンツマーケティングの進め方」後編

~マーケターが編集者のように考えるために必要なこと~

2014/08/26

コンテンツマーケティングにおいてマーケターは編集者になる心構えが必要になる。そして顧客が求めている情報、顧客にとって価値のある適切なコンテンツを届けていくことが重要となる。前編で紹介した基本を踏まえ、後編では、郡司がコンテンツマーケティングの実践方法を具体的に解説し、継続することで得られるゴールを提示する。

コンテンツマーケティングに必要な5つのポイント

では、マーケターが編集者のように考えるためには何がポイントになっていくのでしょうか。これまでやってきたマスメディアのキャンペーンとの違い、という視点から5つにまとめました。

1つ目は、コンテンツには読者がいるということです。広告は、商品の買い手をターゲットとして商品ベネフィットを伝え、買い手のニーズを満たすコミュニケーションですが、コンテンツマーケティングは、商品へのニーズを満たすとともに、その商品周辺の情報ニーズをも満たしていくことが特徴です。そのため、ターゲットを商品の買い手よりさらに広く捉えることもできます。例えば住宅で考えると、今すぐ買うわけではないがいろいろな住宅の例を見るのが好きな人や、将来のために情報だけは欲しいという人もターゲットになります。誰にどのような情報ニーズがあるのか明らかにするために、広告同様、オーディエンス・ペルソナの設定が不可欠です。ペルソナの設定には「彼/彼女は誰で、普段どんな暮らしをしているのか」「情報ニーズは何か」「なぜ、自分たちの企業やブランドに関心があるのか」という3つが必要となります。広告作業に似ているところもあるのですが、ソーシャル時代の情報ニーズは、よりニッチに捉えていった方が届きやすいといわれています。例えば、「ペットを飼う人の情報ニーズは何か」というより「ペットを飼っていてペットと旅行したい年配の人の情報ニーズは何か」といったふうに考えていくということです。ペルソナはたくさんつくる必要はなく、まずは、いちばん買ってくれそうな人を数人ピックアップしてペルソナをつくってみるというところから始めるのでも十分です。実施しているうちに、次のヒントになりそうないろいろなことが分かってくるためです。

ポイントの2つ目は、コンテンツマーケティングは、長期型、ストック型のコミュニケーションであるということです。「コンテンツを貯めていく」「ユーザーデータを貯めていく」「生活者との関係をつくり上げていく」など続けることで価値が生まれ、意味が大きくなっていきます。実際に始めてみると、とにかくコンテンツの量が必要になります。オリジナルのコンテンツをつくるだけでは間に合わないので、インタビューを活用する、ユーザーにつくってもらう、専門家に記事を書いてもらうなど多様な制作パターンを考える必要があります。また、コンテンツの形式も、ブログや記事、動画はもちろん、メールやホワイトペーパーなどさまざまです。

これら大量のコンテンツをマネジメントするために必要なのが編集カレンダーです。どのペルソナに向けた、どんなテーマのコンテンツを、どんな形式、どんなキーワードで、いつリリースするのかといった戦略寄りのカレンダー、あるいは、どのコンテンツを、いつ、誰がつくり、どんなタイミングでどのチャネルに配信するのかといった制作寄りのカレンダーなど、つくり方は目的によってケースバイケースです。いずれにしても重要なのは、定期的に発行すること、そして継続していくこと、です。

3つ目のポイントは、いろいろなタイプのコンテンツや制作者が関わる中で、ブランドの人格や、オーディエンスに何を提供していくのかの指針を統一するための編集方針(ミッションステートメント)が必要だということです。その際に必要な要素は「核となるオーディエンスは誰か」「オーディエンスに届けられるものは何か」「オーディエンスが得られる成果は何か」の3つです。ミッションステートメントは、長期にわたってさまざまなコンテンツが企画されていく中で、何を選んで何を選ばないのかを決める大きな指針になります。また、具体的なコンテンツアイデアの中で、なぜそのチャネルを選ぶのか、なぜそのデザインを選ぶのかなどを決めていく基準ともなります。ミッションステートメントは、オーディエンスの「解決したい悩み、課題、興味関心」と、「ブランドが専門家になれる領域の情報」との接点にあります。もし、これらに関係ないコンテンツが発信されているとしたら、フィルターとしてのミッションステートメントを持っていない、ということになるでしょう。

4つ目のポイントは、コンテンツを流通させるためのプランニングが必要ということです。ウェブ上のコンテンツは、つくって置いただけではターゲット・オーディエンスに到達しないというのが前提です。オウンドメディアを発信基地としながら、コンテンツを流通させていくための出口、オーディエンスが入ってくるための入り口としてSNSを活用する方法や、レコメンドの仕組みなどを使って、ユーザーにオウンドメディア内外でのコンテンツ回遊を促し、多くの人に接触させていく方法などが考えられます。

最後はマーケティング目標です。大きなゴールから目の前の測りやすいゴールまでプロジェクトによって目標はさまざまですが、「ゴールを決めること」が何よりも大事になります。ページビューやユニークユーザー数、「いいね!」数などの指標は現状把握の指標として非常に大切ですが、これだけでは個々のコンテンツの評価で終わってしまいます。データを蓄積していくことで、どんなコンテンツが人気か、どんなコンテンツが長く見られているかなどが分かるようになり、それらをもとに仮説を導き出しながら次のコンテンツをつくり、改善を繰り返してゴールに近づいていくというのがコンテンツマーケティングなのです。

コンテンツマーケティングは、広告のような一方通行のコミュニケーションや単なるウェブコンテンツの更新とは違います。コンテンツマーケティングを推進していく、つまり有益な情報を定期的に発信していくことにより、やがてその企業は、役に立つ情報をくれる企業として認知されていきます。そのような企業は、さらに情報発信を続けることによって自然とその領域、業界のリーダーと見なされていきます。そして最終的には、業界も超えた社会、世界のオピニオンリーダーとして常に注目され、一目置かれる存在となり、企業ブランドとして究極的な差別化が完成していく。コンテンツマーケティングとは、そういう未来が待っている考え方なのです。