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総集編「カンヌ!カンヌ!カンヌ!」①

今年の勝者、4万作の頂点に

2014/07/30

    カンヌ!カンヌ!カンヌ!世界のクリエイティビティが激突

    第61回「カンヌライオンズ  国際クリエイティビティ・フェスティバル」が6月15~21日、フランス・カンヌで開かれた。「ラーニング」「ネットワーキング」「セレブレーション」を目的に掲げる同フェスティバルに、94カ国・地域から約1万2000人が参加。クライアント、テクノロジー企業、投資家含め、広く広告に関わる人材が集結した。アワードの表彰に加えて、コミュニケーションの最先端事例や未来を提示するセミナー、対話形式でインサイトを深めるフォーラムなど数多くの学びの場を提供。会場の外ではトップマネジメントらによるミーティングが活発に行われ、街全体がビジネスの場と化した。

    (現地写真=Getty Images) 

     

    今年の勝者、4万作の頂点に

    アワードの部門数は毎年のように増え続け、プロダクトデザインが新たに加わり17部門で審査が行われた。97カ国・地域から3万7427作品がエントリー。日本は1146件の応募から、21作品が合計44の入賞を果たした。

    今年のグランプリ作品はこちらでご覧いただけます → http://bit.ly/1iAbtCF

    AdAge: Cannes Lions Recap: See All the 2014 Grand Prix Winners

    今年度最多4部門を制覇

    今年最多のグランプリ4冠(フィルム、インテグレーテッド、プロモ&アクティベーション、プレス)を達成したのは、英高級百貨店ハーベイ・ニコルズのクリスマスキャンペーン「Sorry I Spent it on Myself」(ごめんなさい、自分に使っちゃった)。最先端ファッションの発信源とも称される同店が、「お金は人のためではなく、自分のために使いたい」というインサイトに基づき打ち出したのは、数十円~数百円という「安上がりギフト」シリーズ。消費者心理を突いた意外性ある大胆なマーケティングと、ユーモラスに展開したメディア戦略が評価された。キャンペーンでは予告編として、同ギフトシリーズから「缶詰入りクリスマスランチ」「小石の詰め合わせ」「金ダワシ」「流しの栓」「歯ブラシ」の5点を取り上げた印刷広告とインターネットCMを展開して話題を先行させ、発売日からドラマ仕立てのテレビCMを放送した。高価な品物を期待させる、同店の名を冠したプレゼント。喜々として開けて目にした「輪ゴム」や「つまようじ」に拍子抜けする家族や、「流しの栓」にあぜんとする息子の横で鏡に眺め入るドレス姿の母親といったユーモアあふれるCMは、昨年のクリスマス商戦一番の注目作となった。2万6000点のシリーズ商品はわずか3日で完売した。

    フィルム/サイバー部門グランプリ

    フィルム/サイバー部門グランプリ

    ボルボ・トラックの性能をさまざまな状況で実証する一連の映像作品「Live Test」シリーズがサイバー部門、同シリーズの「The Epic Split」(究極の開脚)がフィルム部門のグランプリを受賞し、2冠となった。The Epic Splitは、アクション映画俳優ジャン=クロード・ヴァン・ダムのクローズアップ映像に始まり、カメラが引くにつれて彼がバックで並走する2台の新型トラック「ボルボFM」のミラーの上に立っていることが明らかになる。さらに、2台のトラックが徐々に間隔を広げるのに合わせて彼の両脚はゆっくりと開いていき、最後に見事な180度開脚の体勢を維持することにより、ボルボ・ダイナミック・ステアリングの安定性と精度を効果的に示した。音楽にはエンヤの曲を採用したことでスピリチュアルな雰囲気が醸し出され、インパクトがありながらも静かで美しい映像作品は、トラック購入層に限らず多くの人々の共感を呼んだ。SNS上で広く波及。トラックという無骨な素材の魅力度を高く引き上げた秀逸なアイデアが評価された。

    チタニウム部門グランプリ

    チタニウム部門グランプリ

    カンヌで最高の栄誉とされるチタニウム部門グランプリには、ホンダの「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」が輝いた。1989年に伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナがF1日本グランプリ予選にホンダのエンジンを搭載したマシンで参戦し、当時の世界最速ラップを記録。ホンダに残された走行データ(アクセル開度、エンジン回転数、車速の変化など)をあらためて解析し、当時のエンジン音と走行軌跡を再現することに成功した。鈴鹿サーキットのコース上に数百のスピーカーとLEDライトを設置し、音と光でセナの走りを復元、体感を可能にした。この映像を3Dの体験型コンテンツとして同社サイト上に公開すると、日本のみならず、セナの故郷のブラジル、欧州、米国をはじめ世界中のメディアに取り上げられ注目を集めた。審査員は「無味乾燥なデータをエモーショナルな作品に変化させた素晴らしい作品。データを人に寄り添う形で示しながら、伝説と未来を同時に感じさせるという偉業を成し遂げた」と称賛した。

    グランプリ for good

    グランプリ for good

    カンヌには、チャリティーや非営利目的で作られた作品はグランプリに選出できない、という規則がある。受賞資格のないものの中から最も優れた作品に贈られるのが「グランプリ・フォー・グッド」。今年は、オランダの児童保護団体Terre des Hommesの「Sweetie」が選ばれた。今日、開発途上国の子どもたちがウェブカメラの前で性的行為を要求される「セックスツーリズム」が広がりを見せており、犯罪者は75 万人に上るといわれる。同団体はその摘発を目的に、CGで架空の10歳のフィリピン少女Sweetieを開発。おとりとしてネット上で性的犯罪者たちと接触させ、71カ国1000人の 検挙につながった。