総集編「カンヌ!カンヌ!カンヌ!」②

古川裕也が総括

「次の仕事をつくる場所 Cannes 2014」

次の仕事をつくる場所 Cannes 2014
 
 

フィルム部門審査員
電通CDCセンター長

エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

古川裕也氏


今年は日本にとって歴史的な年だった。チタニウムとライオンズヘルスと二つのグランプリ獲得が史上初なら、電通(東京)のエージェンシー・オブ・ザ・イヤー第2位も史上最高位。これは、何百とある世界中のエージェンシー・オフィス全てのライオン獲得ポイントをランキング化したもので、基本、グランプリ10点、ゴールド7、シルバー5、ブロンズ3というふうに機械的に集計した結果である。3位まで発表されるのだが、そこに入ったのがそもそも日本のエージェンシーとしては初めてだった。

今年の代表作は、ボルボ・トラック「The Epic Split」、ハーベイ・ニコルズ「Sorry I Spent it on Myself」、ホンダ「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」の三つ。コンテンツとして圧倒的だったボルボ。統合キャンペーンでインサイトが優れていたハーベイ・ニコルズ。全く新しい広告を提示したホンダ 。この3本がほぼ全てのカテゴリーでグランプリを争った。フィルム固有のシズルに満ちていたボルボとハーベイ・ニコルズがフィルムのグランプリ。インダストリーそのものを引き上げるような仕事に与えられるチタニウムのグランプリにホンダ。それぞれ適切な評価だったと思う。
新しさという意味では、ホンダが図抜けていた。そのままでは意味を形成しないデータを、クリエーティブの力だけで、ヒトの気持ちを動かす深くエモーショナルなアウトプットに変換したのである。これは明らかに歴史上初めての仕事であって、データなるものが効率や正しさだけでなく、驚きや感動や新しさを、つまりコミュニケーションにとって最上の価値を生み出すことができるものであることを証明した。100%新しい方法論たり得ている仕事はめったにあるものではない。

今年あらためて確認されたのは、カテゴリーが増えれば増えるほど、テクノロジーをはじめとする手段がリッチになればなるほど、僕たちの仕事にとって重要なのはただ一つ、優れて新しいアイデアだということだ。

今年からフェスティバルの直前にライオンズヘルスが新設された。医療・医薬品産業に特化したアワードとセミナーなのだが、狙いはクライアントを呼び寄せ、そのインダストリーを活性化させ、カンヌをビジネスメーキングの場にしていくことにあると思われる。
今後も、さまざまなクライアントの参加が増えていくだろう。それを世界中のエージェンシーが次の仕事を生み出すチャンスと捉えている。エージェンシーのみならずクライアントにとっても、カンヌはグローバルビジネスにおける重要な場になってきている。それぞれの能力をプレゼンし、次のビジネスを構築する場に。プレゼンスを高め、能力を証明するためのいわば方法として、アワードとセミナーがある、という構造だ。それによって、エージェンシーはグローバルコミュニティーに選手登録され、世界のピッチに立つことを許されるプレーヤーになっていく。

個々のエージェンシーの成長もさることながら、アドバタイジング・インダストリーそのものが現在、危機ともチャンスともいえる重要な分岐点にいる。カンヌは、ビジネスソースを提供する場であり、僕たちが「使うもの」になったのである。

 

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