総集編「カンヌ!カンヌ!カンヌ!」⑤

PR部門審査員ミッチェルCEOに聞く

PRエージェンシーが初のグランプリ 統合キャンペーンの発展が業界の追い風に

 
 

今年のカンヌでは、これまで影の薄かったPRエージェンシーの台頭という新たなトレンドが見られた。米国のメキシコ料理チェーン、チポートレーのキャンペーン「The Scarecrow」(かかし)で、業界最大手のエデルマンが業界初のグランプリに輝いた。

キャンペーンにおけるPRの重要性が増す中、PR部門のエントリー数は前年を40%余り上回る1850件に達した。ショートリスト(最終選考)に多くは残らなかったが、昨年は2割にとどまっていたPRエージェンシーの作品が今年は4割に増加するなど、積極姿勢が見られた。

The Scarecrowは、食品添加物や大量飼育された食肉などが使われている外食産業の内幕と、自然で健康的な食事の探求をアニメ仕立てで表現、持続可能な 食への啓発を図ったもの。ユーチューブ上での動画公開、全国紙やソーシャルメディア、PR、さらに双方向ゲーム、モバイルクーポンを通じてキャンペーンを 展開した。

 
  電通イージス・ネットワークのPRエージェンシー、ミッチェル・コミュニケーション・グループのエリース・ミッチェルCEO
 

PR部門で審査員を務めた電通イージス・ネットワークのPRエージェンシー、ミッチェル・コミュニケーション・グループのエリース・ミッチェルCEOに、カンヌライオンズの審査、PRエージェンシーの課題、同グループについての抱負などを聞いた。

 

 

――PR部門の審査員を務めてどんな感想を持ちましたか。

一生忘れない貴重な体験となりました。世界中から寄せられた作品を見て、PRが戦略的かつクリエーティブに、今日のビジネスと社会に影響を与えていることが伝わってきて、感動しました。また、世界のあらゆる地域で異なる経済的要因や社会問題、文化上のニュアンスについて学ぶ機会を得ることができて感謝しています。最も大切なことは、さまざまに受けた刺激をミッチェル・コミュニケーションズ・グループに持ち帰り、今後さらにクライアントのために役立てることができるという点です。

 

――PR部門では、PRエージェンシーからのエントリーが増え、初のグランプリを受賞するなど、PRエージェンシーの活躍が目立ちました。

今年のエントリー作品を見て思ったのは、PR業界のクリエーティビティーには活力があるということ。グランプリを受賞した「The Scarecrow」やゴールドを獲得した「This is Wholesome」など、PRエージェンシーによる非常に力強い作品がありました。今後もより多くのPRエージェンシーがエントリーし、業界のクリエーティブ力を示してくれることを、審査員一同願っています。

 

――PRの根幹に必要なのは何ですか。

根本的にPRとは、組織やステークホルダーがお互いにメリットのある関係を築くことです。これが全ての可能性における源であり、ビジネスの成功を左右し、グローバルにもますます大きなインパクトを持つようになっています。また、急激に変化する複雑な現代社会においてPRは必要不可欠であり、その役割は全企業に広がっています。PRは、企業がさまざまな関係を構築し、レピュテーションを上げ、成果を達成するために、ビジネスのノウハウとコミュニケーションの専門知識をうまく組み合わせて活用する重要な戦略ツールだと考えます。

 

――PRエージェンシーは将来、どのようになっていくとお考えですか。

マーケティングコミュニケーション業界では融合の流れが顕著で、分野を超えた統合が確実に起きています。その結果、多くのエージェンシーの業務は互いに似通ったものになりつつあります。こうしたトレンドがどんどん進む中でPRエージェンシーは将来、クライアント全体の統合的ソリューションを担当する戦略能力を持つようになるでしょう。ミッチェル・コミュニケーション・グループは、約5年前に統合型サービスを提供する戦略コミュニケーションエージェンシーとして社を位置付けて以来、急成長を遂げています。PR、広告、デジタルなどに特化するのではなく、結果をもたらす能力や実績が重要になってくると思います。

 

――活動領域として、今後増えていくのはどのような分野ですか。

まずは、ビジネスコンサルティングです。PRエージェンシーは、既にクライアントの幹部とパイプがあり、その上多くのスタッフが戦略的なプランニングに従事しています。国民性や文化に対する私たちのユニークな知見を活用した本格的なビジネスコンサルティングなど、サービスの幅はさらに広がっていくと思います。

そして、テクノロジー分野。「モノのインターネット化」が成長を遂げてますます多くのデバイスがネットワークでつながる中、PRエージェンシーはテクノロジーに基づくコミュニケーションのソリューション、さらには実際の商品開発などを通じて、クライアントとステークホルダーとのより強固な関係構築をサポートします。

また、インサイトに基づく戦略設計もさらに重要になってきます。消費者の認識、行動、影響力といったデータの充実によって、リサーチやインサイト部門が私たちの推進力となるでしょう。消費者とネット上のコンテンツや体験との関わりをよく知ることが、成功の鍵となります。

最後にクリエーティビティー。「ビッグアイデア」を生むことは常に必須の能力であり、今日のどのPRエージェンシーにとっても不可欠です。この先もクリエーティブ力を強化していくためには、必要な人材やツールに投資をしなければなりません。とりわけ、キャンペーンを牽引するのがクライアントではなく消費者に取って代わってきている中で、PRエージェンシーが統合キャンペーンを主導していく機会が増えると思います。私たちPR担当者は、現状に即した戦略によって世の中の反響を呼び、それがビジネスの利益につながるかどうか見極める力を備えています。

 

――最後に、ミッチェル・コミュニケーションズ・グループのCEOとしての抱負を聞かせてください。

私たちは電通イージス・ネットワークのさらなる能力向上に寄与するために、世界最高の新しいPRネットワークの構築と、全てを包括する総合コミュニケーションサービスの提供という大変力強いビジョンを持っています。そして、二つの成長プランを考えています。一つは、既存事業の成長を通して、ミッチェル・コミュニケーションズ・グループを成長させること。そして、他のPRエージェンシー買収によりスケールと専門性を高めることです。その際、電通イージス・ネットワーク内でシナジーを生めるか、最優秀の人材がいるか、成長実績と堅実なビジネスプランを持っているか、従来型、新規型いずれのコミュニケーションサービスにも対応できるかなどを重視しています。

電通イージス・ネットワークの一員として、PRネットワーク構築の責任者を務めることは、私にとって大変な栄誉です。このビジョンによって、クライアントとネットワークに大きな成果をもたらす―。実現に向け、今、私たちは確かな手応えを感じています。

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