カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル #01

チタニウム部門グランプリを受賞して
(前編)

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    菅野 薫
    株式会社電通 CDC / Dentsu Lab Tokyo グループ・クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト

カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルのチタニウム部門グランプリを受賞した電通の菅野さんに、受賞の喜びやカンヌで感じたことなどを伺いました。

菅野薫氏

胃が痛いほどのプレッシャー…

 

──(電通報)受賞の喜びをお聞かせください。

正直、喜びというよりは、ほっとした気持ちでした。「Sound of Honda/Ayrton Senna 1989」(以下Sound of Honda)はサイバー部門でグランプリをとるのではないかと海外メディアが事前予想していたこともあり、周囲から期待された部分がありました。3月のアドフェスト2014でグランプリ3冠を頂いて、5月にはD&ADのブラック・ペンシルを受賞しました。周囲からも、極めて革新的な作品にのみ与えられるとされ世界一受賞が難しいといわれているブラック・ペンシルを受賞したのだから、「カンヌでもSound of Hondaはグランプリだろう」というムードが漂っていて、それなのに自分がサイバー部門の審査員でしたから、相当胃が痛く、プレッシャーをすごく感じていました(笑)。

審査期間中、自分の関わったプロジェクトがどのように評価されているか点数として常に分かっている状態でしたが、僕には何ともしようがないので、祈るような気持ちで見ていました。金賞になって、グランプリの候補になるところまではスムーズだったのですが、グランプリを決めるという段階で、「Sound of Hondaについても皆でもう一度議論する」というので、当事者である僕は退室させられました。僕の不在のところで決選投票が行われて、戻ってきたら「グランプリじゃないよ」と言われて、「グランプリじゃないっ!?(泣)。みんなに申し訳なくて合わせる顔がないし、日本に帰りたくない」という感じで審査を終えました。ところが、まさかの最後の最後に更に難関のチタニウム部門でグランプリを頂けて(笑)。
チタニウム部門はそもそも「最もプレステージ性の高い賞として、刺激的かつ全く新しい次元を切り開く斬新なアイデアを賞賛すべく設立されました」と定義されているような賞で、実際、他部門よりも点数が高いんですね。授賞式の前に「グランプリ受賞のコメントをください」と連絡を頂いたときには膝から崩れ落ちました。感動というか、ほっとした気持ちの方が強かったです。Sound of Hondaは奇跡みたいなところがあって、頻繁に何本もつくれるものじゃないという気持ちもあったので。結果、合計すると15個のライオンを頂きましたが、5年か6年に分けて少しずつもらった方がよかったかな。グランプリのインパクトが強過ぎてフィルム部門の金賞とか実は相当大きな受賞の存在感が薄れてしまったし、毎年2個ずつとっている方が偉い感じがするじゃないですか(笑)。

今回審査員をやって、あらためて感じたことがあります。日本の場合、海外の賞を受賞して初めてその存在が知られるようなプロジェクトがたくさんありますが、海外の応募作品はそんなことないわけです。カンヌで賞をとっている作品はみんなが知っていますし、普段の生活の中でちゃんと多くの人が見たということなんですね。別の言い方をすれば、ビジネスとして日々汗を流してやっている仕事の延長上に広告賞はある。日本のプロジェクトはなかなか文化や言語的な部分でそこを一致させるのが難しいんですね。そういう状況の中で今回、ホンダさんと一緒に話しながら、日々汗を流しながらやってきた仕事から生まれた広告でグランプリを頂けたことは本当にうれしいです。

グローバルなトレンドを肌に感じて

 

──(電通報)審査員を経験されて感じたことをお聞かせください。

自分がエントリーしていなかったら、審査員を務めさせていただけたことをもっと純粋に楽しめたと思います(笑)。丸7日間、朝から晩までずっと、22カ国25人の審査員で一緒に朝ご飯を食べて、日中はずっと審査だけをして、晩ご飯も一緒に食べて、バーに行ってワールドカップを応援して、同じホテルに帰って寝てというのを延々と繰り返す。3600点もの作品を見て、考えて、議論する。世界屈指のクリエーティブディレクターが参加する集中研修みたいで、友達もできるし、なにより勉強になる。審査員になる方はその時点で既に一定の実績を持っていますが、審査員を経験することによってさらにレベルが上がるんだなと実感しました。

菅野薫氏

インターネットによって、いろいろな意味で国境がなくなってしまったので、企業活動同様、広告ももはや「日本で評価されればいい」ということだけではなくなった。グローバルでどう評価されるのか、世界中にいるライバルはどういうプレゼンテーションをしているのか、どういう視点で仕事をしているのか。カンヌには世界中からクリエーティブをはじめとしたエージェンシーの人間、メディアもクライアントもたくさん来ますし、グーグルなど広告の定義を脅かす、ライバルなのかライバルでないのかも曖昧な会社の人間も参加しています。そういう空間に身を置くのは非常に刺激的で、世界のクリエーティブ業界が今どういうトレンドなのか、最新の傾向を肌で感じたことはすごく勉強になったと思います。

後編に続く)

プロフィール

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    菅野 薫
    株式会社電通 CDC / Dentsu Lab Tokyo グループ・クリエーティブ・ディレクター/クリエーティブ・テクノロジスト

    2002年電通入社。データ解析技術の研究開発業務、国内外のクライアントの商品サービス開発、広告キャンペーン企画制作など、テクノロジーと表現を専門に幅広い業務に従事。
    2014年に世界で最も表彰されたキャンペーンとなった本田技研工業インターンナビ「Sound of Honda /Ayrton Senna1989」、Apple Appstoreの2013年ベストアプリに選ばれた「RoadMovies」、東京オリンピック招致最終プレゼンで紹介された「太田雄貴 Fencing Visualized」、国立競技場56年の歴史の最後の15分間「SAYONARA 国立競技場 FINAL FOR THE FUTURE」企画演出など活動は多岐にわたる。
    JAAA クリエイター・オブ・ザ・イヤー(2014年)/ カンヌライオンズ チタニウム部門 グランプリ / D&AD Black Pencil / One Show -Automobile Advertising of the Year- / London International Awardsグランプリ / Spikes Asiaグランプリ/ ADFEST グランプリ / ‎ACC CM Festival グランプリ / 東京インタラクティブ・アド・アワード グランプリ / Yahoo! internet creative awardグランプリ/ 文化庁メディア芸術祭 大賞 / Prix Ars Electronica 栄誉賞 / グッドデザイン金賞など、国内外の広告、デザイン、アート様々な領域で受賞多数。

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