広報パーソン必見!上場企業479社の広報力 #07

広報オクトパスモデル

その3「戦略構築力」

  • Togami pr2
    戸上 摩貴子
    株式会社電通パブリックリレーションズ コーポレートコミュニケーション戦略部 シニア・コンサルタント/企業広報戦略研究所 主任研究員

日本の上場企業479社を対象に企業広報戦略研究所が行った「第1回企業の広報活動に関する調査」の連載も7回目。今回は、企業の広報活動を「8つの広報力」に分解して考える「広報オクトパスモデル分析」の3つ目、「戦略構築力」について解説したい。

 
図表1 広報力総合評価と広報活動オクトパスモデル分析スコア

 

「戦略構築力」は「8つの広報力」の中で“準備フェーズ”である4カテゴリー(情報収集、情報分析、戦略構築、情報創造)のうちの一つである。当研究所では「戦略構築力」を、①「経営課題に対応する広報戦略の構築」、②「ステークホルダー別の目標管理、見直しを組織的に実行する能力」と定義している。つまり、過去の連載で述べた「情報収集力」「情報分析力」のように情報を“知覚”する段階から一歩進んで、収集し分析した情報を元に、自社の経営課題や経営戦略に即し、あるいはステークホルダー別に、広報戦略を“構築”していく局面を担っている。

今回の調査に回答いただいた上場企業479社における「戦略構築力」を業種別で見ると、第1位が「電気機器」で、全体平均より10ポイント以上上回っている。2位は「食料品」(33.1点)、3位は「輸送用機器・精密機器」(31.3点)と続いているが、全体平均は26.2点で、ほとんどの業種が30点以下と全体的に低い傾向だ(図表1)。

「戦略構築力」の後に続く、“アウトリーチ/エンゲージメントフェーズ”で効果を上げるためには、情報を収集し(情報収集力)、分析し(情報分析力)、その上で戦略性を持って情報に付加価値をつけてストーリーテリングを行うことが求められるが、現状では課題も多い。

 
図表3_情報分析力に関する企業の広報活動実態(情報分析力の10設問から主要設問を抜粋)
 
※回答した上場企業479社が戦略構築力関連で当てはまると回答した数をパーセンテージ表示している。
  星印は、専門家パネルが重要視した上位3項目(数字は順位)。

 

調査の結果、「戦略構築力」の設問での実施率ベスト3は、「広報戦略の経営戦略とのリンク」(49.5%)、「自社の強み、弱みを意識した広報戦略の策定」(37.0%)、「重点メディアごとの個別戦略の策定」(29.4%)の順であった(図表2)。しかしながらベスト3であっても、過半数に達する項目は皆無で、戦略構築は各企業の広報にとって後手に回りがちな分野であることがうかがえる。

ただし、「戦略構築力」において専門家パネル(研究者、メディア、広報実務家)が重要であると指摘した4項目(図表2)と、調査結果の上位4項目が同じ順位であったのは、企業の広報担当者と専門家パネルの、重視すべきポイントが一致していることを意味している。特に、最もポイントが高かった「広報戦略の経営戦略とのリンク」は、冒頭の戦略構築力の定義①「経営課題に対応する広報戦略の構築」とも合致している大切な項目であるため、まずはこの見直し、策定から始めることが、「戦略構築力」を高める糸口になると言える。

戦略構築においては、②「ステークホルダー別の目標管理、見直しを組織的に実行する能力」も重要な要素である。つまり、どれほど経営課題に即した広報戦略を構築したとしても、ステークホルダーに合わせた戦略を策定しなければ、その広報活動は不完全である、ということだ。

そのためには、まず、自社にとって重点を置くべきステークホルダーを詳細に把握することが重要になる。「広報戦略の経営戦略とのリンク」とは、自社の獲得したいレピュテーションと現状とのギャップを埋めることであるが、獲得したいレピュテーションは、ターゲットを明確にすることが第一歩だからだ。

今回の調査で、広報活動における重要なステークホルダーを聞いた設問では、「株主・投資家」(90.2%)を筆頭に、「顧客」(88.1%)、「メディア」(69.1%)と、回答が多岐にわたっていた。中でも「顧客」は、細分化して自社の事業内容に即したターゲットを定めることが必要だ。それには、クラスター分析や重回帰分析などで顧客をセグメントし、彼らに響くメッセージや媒体などを把握するのもいいだろう。

「広報戦略の経営戦略とのリンク」と「ステークホルダー別の目標管理」、この両輪を回してこそ、「戦略構築力」は生きる。このようなプロセスを通じ、「戦略構築力」を盤石にすることが、広報活動の次のステップである情報の創造へと実を結ぶのである。


  企業広報戦略研究所(C.S.I.)

企業広報戦略研究所について

企業広報戦略研究所(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称CSI)とは、企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制等について調査・分析・研究を行う電通パブリックリレーションズ内の研究組織です。

プロフィール

  • Togami pr2
    戸上 摩貴子
    株式会社電通パブリックリレーションズ コーポレートコミュニケーション戦略部 シニア・コンサルタント/企業広報戦略研究所 主任研究員

    電通パブリックリレーションズ入社以来、メディアリレーションズ、リサーチ、ヘルスケアなどの部門を担当。各部門で、メディアプロモートやPR調査、ツール制作などを通じた疾患啓発やマーケティングプロモーションを行う。現在は、報道論調分析やヒアリング、ネット調査など、調査を起点としたコーポレートコミュニケーションを担当。

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