第2回日経「星新一賞」記念シンポジウム開催
2014/08/14
日本経済新聞社は7月22日、第2回日経「星新一賞」記念シンポジウム「Imagination Engine / 想像の天才たち」を東京・目黒区の東工大蔵前会館くらまえホールで開いた。星新一賞は昨年、日本初の「理系文学」の賞として、SF作家として著名な故星新一氏にちなみ創設された。同シンポジウムは第2回同賞開催を記念して開かれ、約800人が参加した。
初めに、筑波大大学院教授でサイバーダイン社長の山海嘉之氏が「サイバニクスに託す未来~ビジネスと夢の追求」と題し、世界初のサイボーグ型ロボットHALによる機能改善治療・訓練や自立動作支援、介護支援などの事例や、研究開発成果をソーシャルビジネスとして社会実装していくまでの道筋を紹介。研究者の在り様について「工学分野の研究開発・技術開発には人とテクノロジーが支え合っていくイメージが大切。人を思いやる心、社会を思いやる心で見回すと課題が見えてくる。その課題解決のための研究の軸には、人間観、倫理観、社会観がなければならない」と語った。 |
また日経サイエンス社社長の吉川和輝氏による質疑応答で夢を実行に移すにはと問われ、「研究者や企業が、大きな社会的課題解決意識のもとに、社会全体で欠けているパーツを見つけ出し、それを自分たちで埋めていくという気持ちを持てば、社会に必要とされて自然に実現していく」と述べた。 |
続いて、トークセッション「U氏M氏E氏のイマジネーションを解剖する」では、漫画家の浦沢直樹、芸人の又吉直樹(ピース)、第1回日経「星新一賞」受賞者の遠藤慎一の各氏が登壇。
浦沢直樹氏 |
又吉直樹氏 |
遠藤慎一氏 |
自身の発想法やコツについて浦沢さんは「イマジネーションは無理にひねり出すものではない。ゼロからではなく、見たものや感じたもの、自分の経験の中から生まれてくる。手を伸ばせばそこにあるものだ。連載という過酷なスケジュールの中で、物語と絵を同時に作りあげていくのに編集者との打ち合わせはとても有効。他者との会話から自分が思ってもみない着想を得ることができる」、又吉さんは「小学生の頃は『もしも・・・』と繰り返し考える妄想好きな子どもで、学校の先生から虚言癖があるとまで言われた。お笑いのネタは、自分で全てゼロから考えようとすると狭くなってしまう。相方とネタ合わせでのやりとりが、自分を外側に引っ張り出してくれる」、遠藤さんは「ばらばらだった知識や経験、思いなどの断片が結び付いてストーリーが出来上がっていく」と話した。
大学施設でのシンポジウムということで学生へのアドバイスを求められ、浦沢さんは「今は亡き忌野清志郎さんが言っていたことだが、将来のことを具体的に考えること。できる限り具体的に突き詰めていくと、今日やらなければならないことや、明日必要なことが見えてくる。僕もそうして今に至っている」、又吉さんは「売れている人と自分を比べるばかりで悩んでいる無駄な時期があった。自分は自分だと考えればよかった」、遠藤さんは「学校の先生に限らず、人生の師匠と思える人を見つけることが人生を豊かにしてくれる」と会場に詰め掛けた学生たちにエールを送った。
石橋素氏 |
続いて、エンジニアでアーティストの石橋素氏(ライゾマティクス)が「理系的発想力でアートに挑め」をテーマに講演。東工大出身の石橋さんは、理系出身のエンジニアアーティストとして自身の作品や制作時の発想などについて紹介した。
第2回星新一賞(一般部門・ジュニア部門)は、作品を募集している(9月30日まで)。
詳細は、同サイトで閲覧できる。
http://hoshiaward.nikkei.co.jp/