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中国発★夜型の人に天国 「24時間書店」開業ラッシュ

2014/08/27

    中国の大都市で書店営業の24時間化が相次いでいる。都会に増える「夜眠らない人」にくつろげる居場所を提供しようというアイデアで、既存の書店が営業を24時間化したケースが多い。既存店の一角の24時間化や、近隣の2書店が1日ずつ交代で終夜営業するケースもある。コーヒー店との共同経営により店内飲食が可能な店や、同じビルのコーヒー店も終夜営業に切り替えてもらい客に飲食物を提供するなど、飲食サービスを組み合わせた営業スタイルで売り上げ向上を狙う。

    1200bookshop店内
    1200bookshop店内

    開店10日で増床を決断

    今年7月、広州市に初の24時間書店「1200bookshop」が開業した。同市では夜型生活の人々が増える一方、終夜営業する店はナイトクラブ、カラオケ店、レストランなど飲食店が主だった。「静かに夜を過ごせる居場所の需要が必ずある」と考えたオーナーの劉二キ(キは喜2つ横に並べる)氏(30)は、24時間書店に賛同する仲間30人から出資を募って店を立ち上げたという。

    出店場所は繁華街に面した商業ビル2階の約150平方メートル。文学、芸術を中心に約1万冊が壁の書棚に並ぶ。木材を多用した落ち着いた店内はカフェと一体化し、飲食物を注文すればテーブル前のソファに腰掛けながら本を読める。

    深夜になると学生やクリエーター風の若者が次々と訪れる。若い女性客も少なくない。話をする客はまれで、店員も控えめ。中国の繁華街では珍しい静かで落ち着いた空間だ。インターネットで同店を知り、郊外から訪れた男子高校生は「長時間居られて本が読める。とても楽しい」と話す。

    建築家でもある劉氏は、昨年まで留学していた台湾の有名書店をヒントに自ら店を設計した。劉氏が台湾本島を徒歩で旅行した際、しばしば夜を過ごす居場所に困った。そのため、店にはバックパック専用の置き場所や横になれるソファを設置した。金が無い若者に宿を貸すことで知られるパリの「シェークスピア・アンド・カンパニー書店」もモデルになった。凝った内装やインテリアも含め、居心地の良さが多くの客を引きつけている。

    約60人が座れるが、これまでのところ昼夜を問わず客があふれ、通路に座り込む客もいる。劉氏は、開店から10日足らずで店の拡張を決め、階下に新たに100平方メートルを確保した。現在、急ピッチで内装工事が進んでいる。

     本当の売り物は「居場所」

    同店の売り上げは飲食物と図書がほぼ半々。平日が6000元(約10万円)、週末は各8000~1万2000元。劉氏は「中国では海賊版の氾濫もあり、本だけでは十分な売り上げが見込めない。カフェと一体営業することでビジネスとして続けられる」と語る。

    北京商報によると24時間書店の多くが経営的に苦しい状況にあり、夜間の売り上げは水道光熱費にも足りていない。西安市のある書店は、終夜営業の一晩の売上高が1万元で収支が均衡する3万元に遠く及ばないという。各店とも、これまでのところ書籍・雑誌だけでは十分な売り上げがなく、飲み物や軽食が収益の柱になっている。

    また、青島日報によると、それでも各書店が24時間営業を行うのはネットショップに対抗し生き残りの道を探るためだ。ウェブサイトと実店舗(オフライン)を連携させるビジネスモデル「020(オンライン・トゥ・オフライン)」の試みの1つで、書店で手に取って見た本を、自社のネットショップで買ってもらう狙いもあるという。

    しかし、24時間書店の本当の売り物は、深夜に活動する人々の「居場所」かもしれない。
    青島日報によると、青島市で終夜営業しているのはカラオケ店や酒場、大衆食堂ばかり。文化の薫りがする場所はほぼ皆無で、一部の市民や観光客から夜に出掛ける場所がないことへ不満の声が上がっていた。青島市の書店が4月の「世界図書・著作権デー」に1日だけ午前零時まで営業したところ、予想外の2万元を売り上げたという。Wi-Fi(無線LAN)の無料サービスを行う別の書店も、深夜に長時間くつろげる場所として若者を中心に人気は上々だ。

    開業ラッシュともいえる24時間書店。この熱気が去った後も存続できるかどうかは未知数だ。夜型生活の都会人に、いかに魅力的な「居場所」を提供できるかが鍵になるだろう。