“社会”からリソースを得る「ソーシャル・ソーシング」の可能性 #05

社会と共創するためのフレームワーク(3)

  • 蓮村 俊彰
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター
 
※用語解説
【ソーシャル・ソーシング】アイデア、資金、スキルなど社会から必要なリソースを提供してもらうことで、社会の皆と共創していく仕組み。
【クラウドファンディング】インターネットを介して広く個人からお金を集める仕組み。「寄付型」「購入型」「融資型」「投資型」など、さまざまな手法がある。
【ファンドレイズ】ある特定の目的のためにお金を集めること。

 

 

 

連載第2回で「電通ファンドレイズパワー分析 3C×2フレーム」を紹介し、クラウドファンディングの成否にはコンテンツ力、コンテキスト力、コミュニティー力の3つが大きく影響することを解説しました。

この3つの中でもファンドの成功の基礎となる要素として、コミュニティー力があります。今回は「サッカークラブ“湘南ベルマーレ”の魅力を伝えるラジオ番組を作りたい!」のクラウドファンディングを事例として、そのコミュニティー力をより深掘りしたいと思います。

◆Jリーグ ベルマーレサポーターによるクラブ応援番組制作ファンディング

クラウドファンディングによるラジオ番組制作プログラム「J-WAVE LISTENERS’POWER PROGRAM」第2弾で新たなファンドが始まりました。
その名も「サッカークラブ“湘南ベルマーレ”の魅力を伝えるラジオ番組を作りたい!」。

ベルマーレ
サッカークラブ“湘南ベルマーレ”の魅力を伝えるラジオ番組を作りたい!

 

平塚生まれ平塚育ちで週末は欠かさずベルマーレの応援に行くサポーター城田彩さんによる、ベルマーレと地元の絆を通じてベルマーレの魅力を伝えるためのクラウドファンディングです。

◆誰に何をどのようにアプローチするか

 「ファンドレイズ コミュニティー 分析フレーム」

図1はファンドの発起人とその仲間たち、支援者、応援者とそれ以外の人たちの関係を図にしたものです。いろいろなファンディングがあり一概にはいえませんが、おおよそは下のようなプレーヤーが存在します。

図1「ファンドレイズ コミュニティー 分析フレーム」
 
図1
 

ファンドの関与者は、ファンド発起人であり一個人であるプロモーターを頂点とし、関与度をY軸、人数ボリュームをX軸としたピラミッド状になると考えられます。関与度が低くなるほど人の数は増える形になります。

ここに今回の湘南ベルマーレの魅力を伝えるラジオ番組制作ファンドの関与者を当てはめてみると、おそらく図2のようになります。

図2「ファンドレイズ コミュニティー 分析フレーム」
「サッカークラブ“湘南ベルマーレ”の魅力を伝えるラジオ番組を作りたい!」の場合
 
図2
 

このように関与度や立場でクラス分けを行うことで「それぞれの層に何をどのようにアプローチしていくべきか」が見えてきます。

(1)プロモーターがまずやるべきはチームビルディング、つまりエバンジェリストの確保です。元々の仲間や同好の士から探すのが効率的と考えられますが、それに限らず自分と一緒に夢を追いかける人間を募ります。

(2)チームができ次第、プロモーターとエバンジェリストは自分たちの夢をサポートしてくれるであろう友達や知人を想定。どのようにコミュニケーションすれば喜んで支援してくれるか、楽しみながら積極的にシェア・拡散してくれるかを考えます。

(3)さらに直接の友人・知人の先にいる、面識はないけれど、興味・関心を持ってくれそうなファン層の心をつかみ、ムーブメントにするためにどんな工夫ができるかを考えます。そもそもどのような人たちがファン層なのか見えづらいケースもあり得ます。ファン層・潜在的ファン層をファンディングの主要ターゲットとして分析する必要があります。

(1)~(3)を行いコミュニティーを形成し、活発な口コミを生むことで更に無関心層・無認知層へのアプローチも目指します。彼らに「何やら楽しそうだな」「最近周りでよく話題に上っているな」という状況にしていくことで、認知や関心を獲得していきます。

◆クラウドファンディングとコミュニティーの関係

前回の連載第4回でも触れましたが、クラウドファンディングはあくまで「プロジェクト実現のための資金調達の一手法」です。いくつかある手段のうちの一つであって、それ自体は目的になりません。

なので、資金を調達するためにコミュニティーをつくるのではなく、プロジェクトを実現する仲間や支援者を募り、応援団というコミュニティーを形成する過程で必要な資金も集める、という臨み方がよいかと思われます。

少なくとも、友人・知人関係に「支援してほしい(お金が欲しい)」としつこく勧誘を繰り返し、人間関係を棄損するような事態は避けねばならないと感じます。

「コミュニティー力」は非常に大切な意味を持ちます。一緒にファンドを集めてくれる仲間、支援をしてくれるファンがコミュニティー化され拡大していけば、ファンドも大きくなります。そして、ファンディングは終了してもそこで得られたコミュニティーはソーシャルキャピタルとして資産となり、資金調達後も続く本来の目的であるプロジェクト推進の大きな力になってくれる可能性があります。

クラウドファンディングはやり方によっては、資金だけでなく、このコミュニティーを形成する方法として、非常に有効なのではないかと考えています。

プロフィール

  • 蓮村 俊彰
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    学生時代にカメラマン業で法人化(起業)。約40カ国を取材。その後、社会的影響力のある組織でソーシャルビジネスを興したく電通に入社。電通主導のビジネスの新規開発に取り組む傍ら、空港民営化などのPFIコンセッション入札事業構想アドバイザリ業務などのPRE/PFIコンサルティング、新規商業施設開発事業構想コンサルなどに従事。
    事業開発例として、2013年日本初のクラウドファンディングによるマスメディア放送「LISTENERS’POWER PROGRAM」事業を構想、立ち上げに参画。2016年日本初のFinTech産業拠点The FinTech Center of Tokyo 「FINOLAB」の事業を構想、 設立に参画、現在も運営チームとして日々活動中。

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