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顧客を動かすデジタル・マーケティングの実践No.12

デジタルが加速するプロモーションとアクティベーション

2014/09/11

今回の「顧客を動かすデジタル・マーケティングの実践」は、プロモーションとアクティベーションについて、電通 プロモーション・デザイン局の孫生京氏と森田章夫氏が解説。デジタルを活用したプロモーションの具体例として、1カ月間で施策を行った事例を紹介します。

デジタル環境下のプロモーション

テクノロジーの進化がプロモーションに大きな影響を与えていることは言うまでもないでしょう。eコマース、今や販促ツールのど真ん中に存在するスマートフォンの普及。
これらの変革によって生活者の「購買行動」も大きく変化しており、プロモーションが提供できるソリューションの幅も広がり続けています。消費者の立場に立てばより正確に、より便利に、自らにとって適切なブランドを選択し、「買いやすくなる」という大きな価値が創造されました。

一方で売り手である企業の側から見ると、セールスの最大化、そのための最適なプロモーション実現のために考慮するべきデジタル要素は加速度的に増えています。スマートフォンの位置情報による来店クーポンの提供、リアル店舗での購買体験とオンラインでの購買をシンクロさせる仕組み、オム二チャネルの進化に対応したソリューションなど。現在の進化したプロモーションにおいては顧客行動全体を統合的にマネージすることが必要です。顧客行動全体でアクティベーションを実現するアイディアやソリューションを創造することがプランニングの主な目的になっていると思います。(孫生京)

アクティベーション実現への三つの鍵

実際のプランニングにおいてはさまざまな施策をきめ細かく連動させる必要があるでしょう。現在において、プロモーション、アクティベーションを成功させる鍵となる三つの要素を挙げたいと思います。

まずは「ビッグ・ストーリー」です。「大きく、新しい、語りたくなるストーリー」が、消費者自身の発信が購買に大きな影響を持つ現在において、機能的にも大事でしょう。

次に、「ニュー・コネクション」。プロモーションやキャンペーン自体が、新しい繋がりを創りだす。SNS、LINE、アプリなどは言うに及ばず、新しいコネクションを創りだせるプラットフォームが日々生まれています。そして「ニュー・カスタマー」。「プロモーション」の本来目的である顧客を獲得すること、新しい顧客を具体的にうみだすことこそが、セールス最大化というゴールにもつながります。

技術の普及過程を示すモデルに、ガートナー社による「ハイプ・サイクル」があります.最初のブームが一段落した後、広く普及する段階まで、また暫く時間がかかるという考え方です。新しく注目されているテクノロジーが一般に浸透するまでには、「一定の波や成熟過程」があると思われます。

「進化の、どの段階にある、どの?テクノロジー」を実際に活用していくかは、現在のプロモーションにおけるビジネス・センスが問われる部分です。次から次へと登場するテクノロジーを、どのように最適に活用するかは競争優位確保のための鍵ですし、マーケティング革新にとっても、重要な視点だと思います。

そして、プロモーションやアクティベーションには、その目的によって、施策が直接効果を発揮させる「最適な時間の幅」があります。時間単位として1日、1カ月、1年間それぞれで、アクティベーションの具体方法も変化してきます。例えば、一夜にして一気に話題を広げたい、メディア上でのPRも強く意識したデジタルプロモーションでは、アウトドアや、アンビエントなどイベントを利用するケースが効果的でしょう。また1カ月という単位の場合は、「人に伝えたくなるコンテンツ」をデジタルメディア上で拡げていくキャンペーンが典型的なケースです。1年という単位になると、顧客を育てていく、ファン化するようなウェブマガジンやオウンドメディア構築、CRMなどのソリューションが主軸となります。(孫生京)

A  MONTH・アクティベーションのケース:日本中央競馬会(JRA)「進撃の有馬記念」

「人に伝えたくなるコンテンツ」で大きな拡散を起こすことができたキャンペーンをご紹介します。このケースでは若者の競馬離れが進んでいる中、若者の接触機会の多いインターネットを活用したプロモーションにより競馬の魅力を訴求し、話題化させることが課題でした。プランニングを進める中で、競馬未経験者層に過去のドラマチックな競馬レースを見せると興奮して興味を持つことが分かりました。しかし、競馬レースを見るきっかけがありません。そこで競馬未経験者層が見たくなるエンターテインメントをつくり、ドラマチックなレース疑似体験を提供しようと考えました。

着目したのは、当時人気が高まっていたアニメ「進撃の巨人」です。アニメの中に登場する騎乗シーンを再構成し背景を競馬場に差し替え、ラジオNIKKEIの競馬アナウンサーや声優の方にも協力いただき、登場人物たちが競馬レースをするゲームを作成しました。「進撃の巨人」を全く違う物語に作り替えたストーリーや作り込みのクオリティーの高さが話題になり、コンテンツ公開初日からアクセス数、滞在時間、シェア数など大きな反響を得るとともに、多くのメディアでもニュースで紹介されました。

1カ月間のキャンペーン期間中、GIレースに合わせた二つのレースの公開など、3回のリニューアルをする度に話題性を意識した企画を公開し、期間中「進撃の有馬記念」への注目を集め続けることに成功しました。結果JRAのインターネットコンテンツ史上最大の話題を獲得し、若者たちの競馬関心を高めることに成功しました。

デジタル、プロモーション、アクティベーションの統合はマーケティング・コンバージェンスのコアとなると思います。引き続き、価値のあるプランニングと最適なソリューション提供を目指してまいります。(森田章夫)