コンテンツマーケティングの時代 #02

消費者にコンテンツをどうやって届けるか?

  • 1625 garai pr
    ヤロン ガライ
    アウトブレイン 共同創設者 CEO
  • Profile imada
    今田 素子
    株式会社インフォバーン/株式会社メディアジーン CEO・ファウンダー
  • Aoki keigo pr
    青木 圭吾
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

第2回

コンテンツマーケティングの時代

 

消費者にコンテンツをどうやって届けるか?

前号では、コンテンツマーケティングが登場した背景や、その定義について紹介した。簡単におさらいをしておくと、コンテンツマーケティングとは、「自らの媒体(≒オウンドメディア)を中心に情報発信して顧客との良い関係をつくり、収益につながる行動を起こしてもらう」こと。その背景には情報空間の構造的変化がある。インターネットの普及やソーシャルメディアの台頭により、消費者が自分な好きなときに、好きなことを、好きな方法で入手し、自らが発信者となりつつ互いに交換し合うことが容易になった影響がある。

また少子高齢化や人口減少など社会的背景の変化により、新規顧客開拓だけでなく既存顧客との良好な関係が求められているといったマーケティング側からの要請も、コンテンツマーケティングが注目される一因といえる。

下記コラムでも触れている通り、コンテンツマーケティングにおけるコンテンツには、ニュースリリースやホワイトペーパー、技術解説、商品のFAQなど多種多様なものが含まれる。これらの多角的な情報を用意することで顧客の関心を引き付け、信頼関係を築くことで商機をつくる―これがコンテンツマーケティングの基本的な考え方だ。


 
   

コンテンツを消費者にどうやって届けるか? これが最大の課題

ここでコンテンツマーケティングには大きな課題があることに気付かれる読者も多いのではないか。“コンテンツマーケティングのコンテンツ”は、エンタメ的要素を含んでいるとは限らない。それゆえ、どう周知・接触させるかが難しいからだ。

一定のコストを掛けて行う従来のマーケティングでも、消費者との接触に腐心するのに、“コンテンツマーケティングのコンテンツ”に対してどのように消費者に関心を持ってもらうのか? 仮に関心を持ってもらえたとしても、その関心を持つ読者はどこにいて、どれほどの量が期待できるのか?

実はこの課題の解決策が出てきた。その代表的なものの一つが媒体社などと協業してコンテンツディストリビューションネットワークを構築している米アウトブレインなどの動き。また、インフォバーンなど複数のウェブサイトを持つ媒体社が自らの媒体はもちろん他社とも提携してコンテンツを流通させようとする取り組みも広告主から高い評価を得ている。

 
   

コンテンツディストリビューションの確立こそコンテンツマーケティングの成功の鍵

アウトブレインは、同社の「レコメンドウィジェット」と呼ばれるコンテンツレコメンドの「枠」を媒体社のサイトに実装し、そこで“オススメ”されたコンテンツを起点にユーザーをサイト内外へ回遊させる仕組みを提供している。

彼らが提供するレコメンドウィジェットは、ユーザーそれぞれの好みに合わせた記事を紹介し、当該サイト内の回遊を促す機能(自社内コンテンツレコメンド)と、ユーザーの好みに合わせた外部のサイトの記事とリンクする機能(外部サイトコンテンツレコメンド)の二つで構成されている。前者は自社内の別の記事をユーザーの嗜好(しこう)に合わせてロングテールに紹介し、サイトのページビューや滞在時間を向上させることで媒体の価値(≒広告価値)が高まることが期待できる。後者は、他のサイトへユーザーを送客する対価として収益を得ることができる。こうして構築されたコンテンツディストリビューションネットワーク(アウトブレインでは「コンテンツディスカバリープラットフォーム」と呼ぶ)は、世界中で月間5億5800万人、米国だけでも月間1億9000万人以上ものユニークユーザーがいる*1。この数字はグーグルに次ぐもので、フェイスブックや米ヤフーを抜く規模というから驚きだ*2

アウトブレインの共同創設者でCEOのヤロン・ガライ氏は、このプラットフォームを「オーディエンスファースト」というポリシーを掲げて提供している。ユーザーが興味・関心のあるコンテンツの提供を最優先とし、それを可能にする媒体社のコンテンツを連携させるのが狙いだ。

「例えば従来の新聞の場合、一般的な読者が購読するのは1~2紙。これをめぐって各新聞社が競争する状況にありました。しかし、インターネットでのニュース閲覧が一般的になり、興味を持つトピックを複数の新聞サイトから容易に得られるようになりました。つまり従来はゼロサムゲームであったが、今はユーザーが興味・関心を持つテーマを用意しておけば、彼らをその領域に引き付けておくことが可能になる。われわれには日々60億件を超えるリクエストを50以上のアルゴリズムで解析してユーザーの好みに合ったコンテンツを紹介できる仕組みがあります。そこにコンテンツマーケティングによって企業が発信する有益な情報を組み込めば、最適なユーザーに届けることができるのです」(ヤロン・ガライ氏)

この仕組みを使うと、特定の興味を持ったユーザーへ次々とコンテンツを紹介できる。そのため、これまでは例えて言えば“砂漠の真ん中に立てられた看板”のようになってしまうこともあったオウンドメディアのコンテンツが、有益と感じてくれる読者へ効率よく届けられる。商品訴求を目的としたコンテンツであってもユーザーに有益とアウトブレインが判断すれば、費用を掛けて流入を促すこともできる。バナーなどのディスプレー広告や、特定のキーワードと連動したリスティング広告などがユーザーに対しプッシュ型の手法なのに対し、アウトブレインのコンテンツディスカバリープラットフォームは、ユーザーが自然とコンテンツを“発見”して引き寄せてくれるプル型の上、その情報が有益であれば結果的には消費行動への近道になる―こんなふうにヤロン氏は考えている。

7月には日本でも媒体社に向けたアウトブレインの説明会が大々的に行われた。新聞社や出版社への導入が進みつつあり、今年春のサービス開始から既に国内月間ユニークユーザーは約3000万人にまで成長している*3

コンテンツマーケティング領域における有望なソリューションを研究している電通ビジネス・クリエーション・センターの青木圭吾氏は、そのポテンシャルについて次のように話す。「新製品の技術情報や開発エピソードなどは、製品を扱う企業自身が最も充実した情報を持っています。よって、それらの理解を深めた上で消費行動を起こしたいユーザーにとっては企業が発信する情報が最も優れていることもある。最近、新たな広告手法としてネーティブアドの有用性が語られていますが、その形式であったり、コンテンツ自体がペイド(広告)かノンペイド(記事)かといったことが本質的な問題なのではなく、ユーザーが求めている情報であるかどうか、という視点こそが重要です。ユーザーの情報の真偽を見極めるスキルが高くなっている上、ソーシャルメディアの普及でユーザー同士が交流することで情報の評価もできる。こうした時代ゆえに企業がしっかりとした意思を持って情報発信をすれば、それはマーケティングとしても有効です。アウトブレインは、こうしたことを可能にするプラットフォームとしてコンテンツマーケティングに関心を持つ企業の方々から多くのお問い合わせを頂いていますし、電通としても注目しているソリューションの一つです」

これまでいかに届けるか、という点に課題があったオウンドメディアの情報を効率よくユーザーに届けられるコンテンツディストリビューションネットワーク。こうした環境の整備がコンテンツマーケティングという手法を加速していくことは間違いない。

*1:コムスコア2014年4月現在のパソコンからの アクセス
*2:コムスコア2014年6月現在のパソコンからの アクセス
*3:コムスコア2014年7月現在のパソコンからの アクセス

   

そもそも
コンテンツマーケティングとは?

コンテンツマーケティングとは、「コンテンツを活用したマーケティング」ではあるが、映画やスポーツ、アニメ、音楽などを売るためのマーケティングとは異なる。

 

①オウンドメディアなど自社の媒体などを活用し、②顧客に有益な情報(必ずしもエンタメ色が強いものとは限らない)を提供し、③ソーシャルメディアなども活用し、顧客との対話によって収益につながる行動を起こしてもらうというのが一般的な定義だ。消費者が自由に情報入手や情報発信ができる時代にこそ求められる対話志向のマーケティングともいえる。

コンテンツマーケティングの第一人者、ジョー・ピュリッジ氏の著書『エピック・コンテンツマーケティング』(マグロウヒル・エデュケーション/日本経済新聞出版社)。電通iPR局などのスタッフが翻訳作業に携わった。

   

ユーザー志向になれば信頼感が高まり媒体価値も上がる

本文でも触れた通り、アウトブレインは同社の専用ウィジェットをウェブサイトに導入することで利用可能になる。例えば「CNN.com」では、一般的なウェブページのデザインとは大幅に異なり、特別なキャンペーンの場合を除き、ディスプレー広告を最小限にとどめている。その代わりにアウトブレインのウィジェットを配置し、自社サイト内の回遊性を高めている他、外部のオウンドメディアのコンテンツを含めて読者に質の高い情報を提供している。アウトブレインの調査では、こうした手法を採用することで記事への信頼感が上がり、オウンドメディアのコンテンツに対する評価も大幅に改善することも分かっている。

 
 
     

[1]通常この位置にはディスプレー広告が配置されている。が、「CNN.com」では、そうした枠はなく、すっきりとしたデザインになっている。このウェブページのデザインを見ると、普段見慣れているウェブページが繁華街の看板のようににぎやかなことに気付く。

 

[2]アウトブレインのウィジェット。ここの領域には、「CNN.com」内の記事が表示されている。ユーザーごとにカスタマイズされた記事が表示されるため、次々と興味・関心を深めていくことができる。

 

[3]他のウェブページとのリンク。ここをクリックすると外部サイトに移動する。他ページへ送客した対価として「CNN.com」には売り上げが計上される。こうしたページの下部で収益化が期待できるのもアウトブレインのウィジェットが媒体社に評価されている理由だ。

   

インフォバーンでは約3年前から積極的に

ギズモードなどの男性メディアに加え、女性のライフスタイル情報や上質な暮らしを扱ったウェブサイトなども運営するメディアジーン。同社を傘下に持つインフォバーンでは、デジタルエージェンシーとしてコンテンツマーケティングの提案を積極的に行っている。
「われわれの強みは、企業が伝えたいことをストーリーにしてユーザーが読みたくなる記事にし、それをきちんと届け、効果を実証的にリポートできることです。以前はメディアのウェブサイトやポータルサイトにユーザーが訪れるのが普通でしたが、ソーシャルメディアやニュースアプリなどが台頭してからは、ユーザーはどんどん回遊して好きなところで情報と接しています。こういう状況で企業の情報に接してもらうためには、やはり興味・関心のあるコンテンツを用意すること、それに接触できる機会を多様に設けていくことが大切です。コンテンツマーケティングではコンテンツをつくることも重要ですが、それをちゃんと届ける手段を用意しておくことがより重要です。今後は他メディアと協業してコンテンツを届けることも視野に入れています」(インフォバーン 代表取締役 CEO 今田素子氏)
アウトブレインとはアプローチが異なるもののインフォバーンでもコンテンツをどう届けるかを重要視している。ただコンテンツをつくるだけでなく、どうコンテンツを届けるかは、コンテンツマーケティングを導入する際、欠くことのできない視点といえるだろう。

   

コンテンツマーケティング時代の歩き方

本文などでも触れた通り、情報空間の主導権は消費者に移りつつある。こうした中で企業が武器にできるのは、消費者と誠実に向き合い、情報を発信していくことなのだろう。コンテンツマーケティングが注目される理由には、そのあたりに背を向けていられないという集合的無意識が働いているようにも捉えられる。消費者にコンテンツをどう届けるかを考えるとき、こうした課題を、企業・広告会社・媒体社などが一緒になって考える時期に来ているに違いない。

 
  ヤロン・ガライ氏(アウトブレイン 共同創設者)

ヤロン・ガライ氏

アウトブレイン 共同創設者 CEO
 

「あるとき、信頼しているブロガーの記事で紹介されたオーディ オシステムを購入したところ、とても素晴らしかった。こうした体験を多くの方に届けたいというのがアウトブレインを開発したきっかけ。メディアを取り巻く 状況は、日本も海外も大差ありません。私たちのサービスは、多くのメディアの方の問題解決となり、その結果多くのユーザーに喜んでいただけるに違いありま せん」


 
  今田 素子氏(インフォバーン 代表取締)

今田 素子氏

インフォバーン 代表取締役 CEO
 

「今、月間で約1900万人のユニークユーザーがいて、月間約1億4500万ページビューがある。興味を持って情報を取得に来るユーザーなので、そのマインドは広告主にもご評価いただいています」


 
  青木 圭吾氏(電通ビジネス・クリエーション・センター)

青木 圭吾氏

電通ビジネス・クリエーション・センター
 

「アウトブレインやインフォバーンのような良質なコンテンツディストリビューションの仕組みが登場してきたことで、インターネット上で効果的なインバウンド施策が可能になりました。既に幾つかの企業が戦略的にこれらの仕組みを活用し始めています」

プロフィール

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    ヤロン ガライ
    アウトブレイン 共同創設者 CEO

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  • Profile imada
    今田 素子
    株式会社インフォバーン/株式会社メディアジーン CEO・ファウンダー

    インフォバーン代表取締役CEO・ファウンダー、株式会社メディアジーン代表取締役CEO・ファウンダー。
    出版業界で書籍・雑誌の編集発行・海外版権交渉などに関わった後、ワイアード日本版の立ち上げおよびビジネス・マネージャーを務める。その後独立し、1998年インフォバーンを設立し、企業のコンテンツマーケティング戦略をサポート。戦略立案、オウンドメディア構築・制作・運営を行う。2008年メディアジーンを設立。GIZMODO JAPAN、lifehacker日本版などのブログメディアや、cafeglobe、MYLOHAS、GLITTYなど女性メディアを含む8つのメディアを運営するメディア企業として、ネイティブアドをはじめとしたコンテンツデリバリーの施策を提供。インフォバーングループとして、コンテンツマーケティングにフォーカスしたデジタルコミュニケーション全般に対し、戦略立案、コンテンツ企画制作、メディア運営からディストリビューションのためのメディアプランニングまでを一気通貫で提供している。

  • Aoki keigo pr
    青木 圭吾
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    1998年電通入社。中部支社、新聞局中央部、地方部を経て、プラットフォーム・ビジネス局、ビジネス・クリエーション・センターで主にデジタル領域の事業開発に携わる。現在は、デジタルコンテンツ流通事業の推進とアプリ開発支援、メディアのデジタル事業コンサルティングなどに加えて、国内外の有望な新興企業との新領域開発を主な業務とする。

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