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『アイカツ!』人気の秘密を探る!No.2

ウェブ、グッズ、ライブ…拡張するアイカツ!の世界。そしてアジア進出へ

2014/10/15

小学校低学年に受け入れられるために徹底した「リアル感」を追求する「アイカツ!」。今回は、アイカツ!の世界観を広げるための施策や今後の展開について、前回に続きバンダイでアイカツ!のカードゲームを統括する廣瀬剛氏、グッズ展開を手がける同社の橋本佳代子氏、そしてアニメのプロデューサーであるサンライズの伊藤貴憲氏にお話を伺った。

──ターゲットの女児にとってキャラクターの共感ポイントというのはどこにありますか。

伊藤:単純なカテゴライズでキャラづくりをしないようにしています。というのも、キャラをつくるとき、どうしても個性を濃い目に設定してしまうのですが、女の子たちから見ると「こんな子いないよ、リアルじゃないよ」となってしまうからです。ですので、女の子たちと同じ目線に立って憧れや親近感を持てるキャラクターをつくるよう心がけています。

──男児物とのストーリーの違いとして、キャラクター同士の闘いがあまりないことが特徴として挙げられますが、意識されていることはありますか。

伊藤:ストーリーを描いていく方法としては、悪役の存在や戦いで刺激するというのは割と簡単な方法なのですが、アイカツ!ではあえてそれをしないことを意識しています。ステレオタイプな悪役キャラには描かずに、どのキャラクターも素直に視聴者に応援してもらえることを目指して、キャラづくりをしています。それぞれが困難にぶつかりながらも乗り越えて成長していくさまがストーリーの中心になっています。

橋本:小学校低学年のうちは、ケンカやドロドロした部分は知らなくていいと思いますし、親も見せたくないと思うでしょう。アイカツ!の基本には誰が見ても楽しめることがあるので、そこは徹底しています。

伊藤:アイカツ!ならではの悩みとして、後から出てくるライバルキャラをいかに好きになってもらうかということがあります。ライバルでもただの悪役、引き立て役ではなく、キャラクターとして愛されるように、新キャラの初登場時には特に注意してシナリオを開発します。

──ブームの背景には親世代の感覚の変化というのもありそうですね。

廣瀬:子どもの親がまさにゲーム世代だったり、アニメやおしゃれ文化を経験しているので、アイカツ!の世界観に抵抗がないのは大きいでしょうね。子どもがゲームをしている横で、バインダーを広げてカードを見ている母親というのが典型的なプレースタイルです。

伊藤:父親にとってはアニメのストーリーがハマるみたいで。娘と一緒に見ていたら泣けた、スポ根だった、あおいちゃんはいい子だ!という声も聞きます。霧矢あおいはいちごの親友で、特にお父さん世代に愛されるキャラなんです。

廣瀬:大人の女性のファンも多いですね。想定外の利用層ではありますが、誰がやっても楽しめるというのは狙っていたことでもあるので、うれしいですね。コアターゲットは押さえた上で他の層にも広がると、メジャー感や継続性が出るので、お財布を持っている親にとっても安心できます。

──ゲームのマイキャラはウェブでも楽しめるようになっていますが、その狙いは。

廣瀬:これまで女児はウェブを見ないという固定観念がありましたが、面白ければ流行するという自信がありましたし、時代的に小さい時から親のスマホと触れ合って育っているので、ウェブに抵抗を感じないという仮説もありました。ゲームの中で提供できる情報量には制限があるので、補完する詳しい情報をウェブの中で提供するということで作り込んでいます。

メディアミックスの基本ですが、アイカツ!という世界観を広げるウェブやグッズを通して、アイカツ!のど真ん中のゲームにどれだけ引き寄せられるかということを考えています。カードもゲームで遊ぶだけではなくて、家に持って帰ってから何ができるかということを常に考えていますね。

──カードとの連動ということでは他にどのようなことがありますか。

橋本:グッズではアイカツフォンがあります。アイカツフォンは高単価商品(10月発売のアイカツフォンルックは希望小売価格1万2000円)ということもあって、カードと連動させて長く遊べるようにしています。アイカツフォンは、アニメの中でもアイドルが全員持っている重要アイテムです。

廣瀬:筐体とは別に通信機能を持ったデータスポットというのが各所に設置されています。このデータスポットに、アイカツフォンのマイクロSDカードを挿入すると、新しいドレスなどのデータを取得できるようにする仕組みを取り入れ、遊びの拡張を目指しています。

──多角的に展開する中でどう世界観を統一していますか。

橋本:服の商品化では各ブランドに専属のデザイナーがいて、デザイン案を作ってもらい社内で承認するのですが、却下になることもあります。その理由は例えば「(アニメに出てくるデザイナーの)夢小路さんはこんなデザインはしない!」ということ。アイカツ!という世界に存在し得るかどうかは商品開発をする上で、ひとつの判断基準になっています。

伊藤:作り手として商品を打ち出したい、もちろん買い手側も喜ぶだろう、という時でも、アイカツ!の世界観にマッチしないときは取り下げます。登場するキャラクターを通して商品を見直すことで、アイカツ!のブランド、世界観を統一できています。

──アニメの最後のライブCGの技術力も高いですね。

伊藤:ライブCGはサムライピクチャーズさんに制作してもらっていますが、われわれから見ても、そこまでこだわらなくても…というほどの情熱で作っていただいています。アニメのキャラクターが忠実に再現されているだけでなく、カメラワークや演出も本物のアイドルのステージと同様にたくさんの工夫の下、作られています。

30分というアニメの時間枠の中で、冒頭で物語が始まり、キャラクターの努力や友情によって問題が解決し、最後はCGのライブシーンで締めくくるというのはシリーズを通じたパターンとして定着しています。

視聴率も時間枠の後半に行くほど上がっていくので、ライブCGを楽しみにしている人も多いと思います。

廣瀬:ゲームはキャラクターCGを自分が操作している感覚を大事にしていますが、サムライピクチャーズの方と話していた時に、アニメのライブCGは観客としてキャラのステージを見ているという感覚を目指しているとおっしゃっていたのを聞いてなるほど!と思いました。

──8月に開催した「アイカツ!LIVE☆イリュージョン」も好評だったようですね。

橋本:「初めて行ったライブはアイカツ!」と言ってもらいたくて、つくり上げたステージでした。プリキュアのライブでは、着ぐるみを使うのですが、小学生になると着ぐるみは本物ではないと分かってしまうんです。では、本物ってなんだろうと考えた時に、ホログラムでキャラクターをステージに投影し、ライブを行うということになりました。

伊藤:ライブ終了後にヒアリングしたところ、「本物のいちごちゃんに会えた!」「いちごちゃんがこっちを見て手を振ってくれた」と言ってもらえたので、成功だったなと。

──今後の展開については。

伊藤:10月からのストーリーは大空あかりがフレッシュな新メンバーと一緒にアイドルを目指していくことになります。バックボーンや目指しているものが少しずつ違うキャラクターたちそれぞれの成長物語として、時事ネタや流行を織り交ぜながら1年、2年を見据えてストーリーを作っています。

いちごがアイドルとして高いステージに立ったので、今度はあかりを中心に原点回帰、日々の生活、仕事、カードとの出合いをフレッシュに描きます。もちろん先輩アイドルたちも登場するので、アイカツ!の世界が広がり、深堀りできるようになります。そして、いちごの憧れだった神崎美月は、アイドル活動における重大な決断をします。

橋本:新キャラクターの登場に合わせて新しいブランドが登場しますし、グッズもたくさん登場しますよ。

廣瀬:世界市場としては、インドネシアで日本と同じようにゲーム、アニメ、グッズを展開する予定です。インドネシア版のAKB48であるJKT48とコラボしてプロモーションも大々的に行いますよ。インドネシアは今後伸びる市場と捉えており、アイドル人気も日本の感覚と近いので期待できそうです。

橋本:世界展開では、これまで韓国、台湾、香港にアニメ中心で展開しています。キャラクターやブランドの名前を各国に合わせてローカライズして、受け入れやすくしています。香港では、ゲーム筐体を提供できないため、透明なカードを用意していて、重ねていくとファッションが完成するような仕掛けにしました。

伊藤:12月には「劇場版アイカツ!」が控えています。トップアイドルになったいちごちゃんのお話で、LIVE☆イリュージョンとは違った形で星宮いちごの生ライブを見に行ったように感じられるよう絶賛製作中です。トップアイドルであるいちごが劇中で「見てくださった方がステキな明日を迎えられるようなステージにしたい」と言うのですが、まさにそんな感動を覚えてもらうような映画にしたいです。

──ますます楽しみですね!ありがとうございました。