で、結局サービスデザインってどう実践すればいいの? #01

現場目線で考える 実践的サービスデザイン「概論」

  • Ywatanebe1
    渡辺 大和
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

今日も世界のどこかで、新しいサービスが生まれている。
しかし、優秀なビジネスマンや素晴らしい技術者たちが集まって、一生懸命長い時間会議を重ねたにもかかわらず、いざサービスをローンチしてみると閑古鳥が鳴いてしまうことが多いのはなぜだろうか?

一方で、誰でもプラットフォームに乗っかりさえすればサービス提供が容易になった今、時には法人の体すら成していないゆるやかなチームやたった一人の高校生によって、世の中を驚かせたり世界を変えたりするような新しいサービスが生み出されることもある。

この違いはどこから生まれてくるのだろうか?
その疑問を解消することこそが、本連載の趣旨である。

Tシャツにジーンズ姿の男が行ったプレゼンテーションによって、たった一夜にしてゲームのルールや、スマートフォン上で展開されるサービスの生態系がガラッと変容してしまう時代。ユーザーの日常生活において使われるサービスの移り変わりは非常に激しく、多くの人に使われ続ける定番サービスというものは、指を折るほどしか存在していない。

十年一昔どころではなく、十週一昔の時代、企業にとって「機能の実現」だけを追い求めることは得策ではなく、顧客の求める「価値観」にフォーカスして自社の事業を捉え直すよう、観点をシフトさせることが必要とされている。

また、iPodのためにiTunesというサービスが開始された事例のように、商品を買ったら終わりではなく、買った後にどんなサポートが受けられるか、他のどんなサービスと併用できるメリットがあるのか、などもユーザーにとっては重要になってきている。

そういったユーザー視点への移行に合わせ、企業としても自社の商品をそれ単体としていかに売り込むかではなく、サービス全体の中でどういう文脈で、どういう価値を提供するかということに焦点が移ってきている。

そこで注目されているのが、サービスデザインだ。これは、視覚化やプロトタイピングといった、デザイン思考のアプローチによってビジネスにおける競争力やイノベーションを引き出し、企業が提供する価値の設計を試みるという考え方である。

サービスデザインの基本的な流れは、

サービスデザインにおける4つのフェイズ

という大きく4つのフェーズにブレークダウンされる。サービス開発チームのミッションは、これらのプロセスを繰り返すことにより、そのサービスがマーケットの中で成長していく確度を高めていくこととなる。

この連載では、サービスデザインの各フェーズにおいて実際のサービス開発の現場でも使える手法をこれから5回に分けて、できる限り実例を交えながら連載していきたいと思う。

どうして「ワイガヤ会議」を止めるべきなのか

優秀な人材が集まって、一生懸命長い時間会議をしてもなお一向にサービスの課題が解決されていないとすれば、それは議論が不足しているのではなく、そもそも議論する課題が間違っていると考えた方がよい。

どんなサービスも構想段階では、ユーザーにどう受け止められるかはあくまで想像上のものでしかない。

例えばiPhoneがこの世にまだなかった時には、「MP3プレーヤーが付属したタッチパネル式の携帯電話が欲しい」などと言っていた人はほとんどいなかったはずだ。ユーザーに、どんなプロダクトやサービスがあったらいいと思うかインタビューしても、いまだ世の中にない製品やサービスについては、そもそもユーザー自身がニーズを言語化できないケースが多いだろう。

したがって、サービス開発当初から市場への伝達方法までホリスティックに考慮されたサービス設計を行っていくためには、従来のように定量調査をかけて想定ユーザーのデモグラフィックやニーズを探るだけでは足りない。

真の課題発見のためには、まずエンドユーザーが誰なのかをはっきりさせた上で、自社の製品やサービスとは直接関係なさそうなことも含めていろいろなことを教えてくれる関係性をユーザーと築き、ユーザーとの共通の言葉を見つけようとする「ユーザー中心」の姿勢が重要である。

「ユーザー中心」のサービスデザインの実現のためには、以下の手法が有効だ。

ユーザー中心のサービスデザインにおける3つのポイント

サービス成功の確度を上げるのならば、同じメンバーでの漫然とした密室会議に時間を割くよりも、多様なユーザーに傾聴して一つでも多くプロトタイプを作ることにその時間を充てた方が賢明かもしれない。

ただここで間違ってはいけないのが、「ユーザー中心」を盾にしてクライアント企業の意向を無視したり、クライアント企業との会議を軽視したりしていい、ということではない。

むしろ協業してサービス開発を行う以上、クライアント企業をサービス開発の上で最も重要なステークホルダーの一つとして捉え、作ったプロトタイプやサービスコンセプトに関して、クライアント企業内のマーケティングや事業開発のセクションだけでなく、サービスの実施に関わる多様な部署の人たちにもきちんと説明し、積極的に彼らの意見を吸い上げていくべきである。

広告会社としてサービスデザイン領域に取り組むべき理由

「広告」という二文字が表わす通りに「広く」「告げる」ことでの付加価値を生み出しにくくなって久しい。いくつもの商品・サービスを展開することにより利益の最大化を目指す企業にとって、特定の商品のマスプロモーションの効果を磨き上げるだけでは、局所的なビジネスの助けにしかならない。たとえで言うと、おいしいおせち料理を作りたいと思っているクライアント企業に対して、栗きんとんの質だけをひたすら上げるソリューションしか提供できないのでは、当然足りない。

個人的な考えでは、企業のサービスデザインのプロセスとマス広告のプロモーションは密接に連動して、できれば同一の主体によって行われるべきである。その連携をもし阻害する要因があるとすれば、今すぐに取り払う必要がある。

そもそも人々のニーズに対して先んじて投資し、そのニーズを喚起できるメッセージ開発を担うというのは、広告会社の本業である。

SNSの発達でエンドユーザー同士がインタラクティブに大量の情報をやりとりし、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)の加速によりモノも情報の海の中に溶融していく中、メッセージ開発が必ずしもマス的な方法だけではなくなってきており、広告会社としてはサービスデザイン領域のソリューション化を図っていくことが、今後重要になってくるだろう。

次回からは、私たちが現場でも実際に導入しているフレームワークを紹介していく。まずはサービスデザインの起点となる、「課題の発見」について触れていきたい。

プロフィール

  • Ywatanebe1
    渡辺 大和
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    IT系ベンチャー起業などを経て、2013年電通入社。スマートフォンアプリを中心としたサービス開発や、エスノグラフィ調査に基づくコミュニケーションプラン策定などに従事。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ