通販王国発! マーケティング新発見! #01

発見! 「売る」とは、コップに水を注ぐような行為だった

  • 香月 勝行
    株式会社電通九州 CP局ダイレクトマーケティング部

通販王国、九州へようこそ!
ここは、広告は「どれだけ売れるか」がすべて、というシンプルな世界。
だからこそ、「売る」の本質に迫るヒントが、たくさん転がっています。

■「売る」って、いったい何なのだろう?

オフィスで狂喜乱舞。もし九州の広告会社でそんな場に遭遇したのなら、それはおそらく、新たに制作したテレビショッピングCMに注文の電話が殺到した瞬間、だと思って間違いないでしょう。通販に関わる広告人として、自分たちがつくった広告が当たるのはそれほどうれしいことであり、逆にいえば、そのくらい当てるのが難しいのが、通販広告なのです。
私は、このような通販業界に身を置いて、間もなく10年になります。10年間ずっと、マーケターとして、そして時に制作者としても、「どんな表現をつくったら、どんなレスポンスが生じるのか」というリアルな市場の反応と向き合ってきました。ブランディングもエンターテイメントも一切なし、あるのはただただむき出しの数字とお蔵入り案の山。そんな経験を繰り返す中で、最近、長年持ち続けた疑問の答えが、徐々に見えてきました。そう、「売れる広告ってどんな広告?」という本質的な問いの答えです。

■「買う」という行為に潜んでいた、3つのポイント

この答えにたどり着くきっかけとなったのが、膨大なレスポンスデータを洗う中で導き出された、「買う」という行為に潜む3つのポイント。まずはそこからご紹介していきましょう。
<ポイント1> 「買う」のスタート地点は、常に「ニーズ」
マーケティング書などで「新たなニーズをつくり出そう」みたいなことがよく言われますが、残念ながらほとんどの場合、人はすでにニーズを感じているものしか買わない傾向にあります。
ただし、このニーズ、つね日ごろ意識されているかというと、そうではありません。むしろメモをしなきゃ買い物の品を忘れてしまうのと同じように、よほど大きくない限り、ニーズは心のどこかにいつも置き忘れられてしまいがち。だからこそ購買意欲をつくり出すには、普段は心の戸棚の奥にしまわれているニーズに目を向けさせ思い起こしてもらう、つまり「つくる」のではなく、「気づかせる」ことが重要なのです。実際のデータでも、あらかじめニーズを思い起こさせた広告とそうでない広告とでは、レスポンスに大きな差が出ることが観測されています。
<ポイント2> 「買う」を決めるのは、常に「右脳」!
当たった通販広告に共通するもう一つのポイントが、右脳に訴えかける表現が入っているという点です。具体的にいえば、理屈や理論という「左脳型」の機能説明だけでは反応は鈍いが、「うれしい」「気持ちいい」「美しい」「おいしい」といった感覚に直接響く「右脳型」の要素が加わるとレスポンスは良くなるというデータがあります。まさに、右脳が購買を決めているということです。身近なところでは、理由なく買う「衝動買い」という行動も、左脳でなく右脳が購買を決めているという事実を物語るものだといえます。
ちなみに左脳は全く役に立たないのか、というとそうではありません。買うべき理由を組み立てて右脳の決断をフォローするという、いわば参謀役を果たすようです。衝動買いしてしまった品物の評価を事後に口コミサイトで確認する、といった行動はその最たる例。通販広告においても、左脳型の説明が一切ない表現だと、レスポンスはやはり低下してしまう傾向にあります。
<ポイント3> 「買う」とは、肯定の気持ちが溜まって決壊した状態
では、「購買の決断」は何をもってなされるのでしょう?私たちがたどり着いた答えは、「解なし」。つまり、買うって、そもそも決断されるものではなく、蓄積された肯定的情報が一定量を超えると、勝手に買いたいモードに入る、という類のもののようなのです。
その証拠に、通販の広告は、たいていが同じ情報の繰り返し型になっています。情報の積み重ねが結果を生むからこそ、各社一様にそのような「型」を採用しているわけです。通販購入者を対象にした調査でも、ほとんどの人が、ある程度情報が蓄積されてから購買行動を起こした、と回答していました。これらのことから私たちは、肯定の気持ちが一定量を超えてあふれ出すと、買いたいモードに突入するのだという結論に達したのです。

■逆算から生まれた、「売る」ための必須構造

以上3つの「買う」心理のポイント。これらを逆算して組み立てると、おのずと「売る」ために必要な構造が見えてきます。模式図で整理してみましょう。

3Step

この構造は、接客業におけるセールストークのあり方と似ているそうです。対面販売であろうが広告による通信販売であろうが、対象とするのが人である限り、購買を決める心理は不変であるということでしょう。その意味では、一般的なマスキャンペーンにおいても、このような購買心理を意識した組み立てをしていくことで、より結果を高めることができるかもしれません。

■「売り」をより強めていくために…

徐々に見えてきた「売る広告のあり方」。いかがでしたでしょうか。私たちのチームではこの概念を、新たな購買心理モデルとして「AIDBA」モデルと呼んでいます(その由来を知りたい方は、本稿末の解説をお読みください)。もちろん、概念だけでモノが売れれば苦労はしません。そこで次回以降では、この概念に基づいた、より具体的な売るための技術について、さらに掘り下げていきたいと思います。お読みいただきありがとうございました!

★おまけ解説:AIDBAモデル

AIDBAモデル

プロフィール

  • 香月 勝行
    株式会社電通九州 CP局ダイレクトマーケティング部

    1997年電通九州入社。メディア・クリエーティブ・マーケティング・営業・デジタル部門を経て現在ダイレクトマーケティング部在籍。

    さまざまな分野での経験を元に、ダイレクトマーケティングにおける各種課題抽出~クリエーティブ制作~PDCAまでトータルに対応する、ダイレクトの「何でも屋さん」。

    何でも屋ならではの視点から生まれる企画で、全国の担当クライアントのCPO・LTV向上のために日々奮闘中。

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