電通スマプラ #07

スマートフォンが日本のファッション文化をダメにする!?

  • Asai pr
    浅井 康治
    株式会社電通デジタル ストラテジックプランナー

電通スマプラメンバーで、三度の飯より服が好きな浅井です。今回のテーマは「ファッションとスマートフォン」です。

私は「洋服には人を幸せにする力がある」と信じてやみません。オシャレをすることで人は前向きに、自分にポジティブになることができます。スマートフォンの普及によって、私たち日本人のファッションとの向き合い方はどう変わるのか。ファッション業界はスマートフォンとどう関っていくべきなのか。

情報収集・購買デバイスとしてのスマートフォンの普及が進み、ファッション業界も大きな影響を受けています。今だからこそ、ファッションとスマートフォンの関係について考察してみたいと思います。

1.ファッションは「守破離」の文化である

考察に入る前に、突然ですが、ある思想の話をします。

日本の茶道や武道の世界では古くから「守破離」という考え方があります。師から教わった「型」を忠実に覚え、そこからその「型」を破り、自分独自の「型」を身につける。そうすることで「型」という概念から離れて自在になれる、という考え方です。私はファッションにもこの考え方が当てはまると思っています。

スマートフォンがこんなにも普及する前のことを考えてみてください。私たちはファッションといえば雑誌や友人の話などから今こんなアイテムが流行している、こんな着こなしがイケている、といった情報を入手していました。そうして得た情報をもとに、実際にお店に見に行って、試着してみて、自分に似合うかどうか確認してから買う、という流れが一般的でした。この購買プロセスの中で、私たちは少なからず雑誌や友人の話から得たファッションの「型」を意識し、その「型」について自分なりに考え、最終的に自分に合う「型」を見つけていたはずです。

そして参考にした「型」から色やアイテムの組み合わせを変えてみたり、ある「型」とある「型」を融合してみる、といった試行錯誤の中で、今までになかった新たな「型」が生み出される。

ファッションはこうして「型」を少しずつ更新しながら自分らしく進化していき、日本のファッション文化は今やパリやミラノ、ロンドンに肩を並べる、世界中の人々から認められるものとなりました。

2.スマートフォンが日本のファッション文化をダメにする!?

私は、日本のファッション文化、特に東京のファッション文化はアニメや映画などに並ぶ独自のカルチャーとして世界に通用する輸出コンテンツになり得ると思っています。

しかし昨今のスマートフォンの急速な普及によって、日本のファッション文化が停滞する恐れを私は感じています。その原因を2つの観点から考察してみます。

まず1つ目にスマートフォンが普及したことで、ファッションに関する情報量は爆発的に増えました。情報量が増えたことで、参考にできるファッションの「型」もとてつもなく増えました。それはファッションの多様性という観点からプラスでもありますが、「型」の選択肢があまりにも多くなったために、今の若者たちは自分なりのベースとすべき「型」が分からなくなっているように見えます。

2つ目として、スマートフォン上でいつでもどこでも服やアクセサリーを即座に購入できるようになりました。いつでもどこでも即座に好きな服を買えることは確かに便利なことです。しかし、即時性を手にした結果として私たちは本当にその服が自分に似合うのか、そもそも本当に欲しかったのかどうかさえ、考える時間的余裕を失ってしまっているのです。
このように、スマートフォンの普及による情報量増加と即時性によって、これからのファッション文化を牽引するはずの若者たちは「型」に対する思考ができなくなっています。ただ偶然目にした着こなしをとりあえずそのまままねしてみて、何となくそれに満足。飽きたらまた別の、周りでよく目にする着こなしをそのまままねしてみる。つまり、他人の「型」のまねはなんとなく無意識にしているが、自分なりの「型」、自分だけのスタイルを進化させる段階にまで至れていないのだと思います。

ならば、ファッション業界はスマートフォンとどう向き合っていくべきでしょうか。

3.スマートフォンをファッション文化の起爆剤に

私はこれからのファッションに関するアプリやEコマースサイトには、若者たちのファッションに対するイマジネーションを刺激する力が必要だと思います。彼らが自発的に進んでファッションのことを考える、そして自分ならではの新たな「型」を創造してみようと思う環境をつくるべきです。

そのためのポイントは大きく2つ。

1つ目はまずは「型」に気づかせることです。自分のファッションのロールモデルを見つけるお手伝いをしてあげるのです。私は高校生の頃に読んだ某ファッション誌に載っていたフランスのとあるお店の店員さん(いつか会いたい!)の着こなしに衝撃を受け、今でもその着こなしを自分の中のひとつのお手本、「型」としています。私は幸運にもマスターしたいと思う「型」と出合いましたが、スマートフォンが普及した今なら、例えばお店で気になった着こなしやアイテムを写真に撮って投稿すると、登録しているショップ店員やファッション感度の高い他のユーザーが投稿された着こなしやアイテムに対するアドバイスをしてくれる。あるいはそのアイテムをこう着ればオシャレに見えるというセオリーのようなものがまとめられているコミュニティーサイトがあってもいいのではと思います。ファッションに関する情報を楽しみながら得ていく中で、スタート地点としてこうすればほぼ間違いなくかっこ良く、かわいくなれるといった見本、「型」を学ぶ場を若者たちに提供するのです。スマートフォン世代の若者たちが「型」を意識してまねすることによる成功体験を積めば、オシャレの楽しさを知り、彼らの中にオシャレに対する向上心が生まれてくるのではないでしょうか。

2つ目は「型」を破るサポートをすることです。自分の今の着こなしに対して、もっと自分らしさを表現できる方法があるんじゃないか、別の自分を演出できるのではないか、という気持ちを抱かせることです。例えば、毎日の着こなしをスマートフォンで撮影して、そこにその服を選んだときの気持ちを書き込んで、ライフログとして記録していくと、そのログ情報やその日の気候、その時SNS上に拡散しているファッション情報などを分析して新たな着こなしやアイテムを毎日提案してくれるアプリがあってもいいのではないでしょうか。また自分の手持ちの服を登録できるデジタルクローゼットのようなアプリは既に存在しますが、自分が登録している服のデータベースとEコマースサイトが連動して、クローゼットの中にはない、新しい色や形の服をサイト内から見つけてレコメンドしてくれるようなサービスが出てきてもいいのではと思います。クローゼットのデータベースを各社のファッションEコマースサイトのデータプラットフォームとして機能させる仕組みをつくることもチャレンジする価値があるのではないでしょうか。

ファッション業界におけるスマートフォン時代への対応はまだ始まったばかりです。これからいろいろなサービスがどんどん出てくるでしょうが、単に情報発信するだけでなく、日本の若者たちを巻き込み、彼らのオシャレ魂に火をつけるような仕組みや仕掛けが必要だと思います。

私も日本のファッション文化とスマートフォンの発展に貢献できるように、もっとファッション領域におけるスマートフォンの可能性を探りながら、たくさん服を買っていきたい(笑)と思います。

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スマートフォンを中心としたスマートデバイス(パソコン、タブレットなど)上のビジネスの立ち上げ、成長・拡大に貢献するプランニング・ユニットです。
チーム内には、スマートフォンのゲームやアプリなどのマーケティング・コミュニケーションの実績が豊富な戦略プランナー、コミュニケーションプランナー、コンサルタント、コピーライター、プロデューサーなど、多種多様な人材をそろえています。また、一人一人が何かしらのオタクであるため、課題への深堀りはもちろん持ち前の個性と人間力でクライアントに向き合うことをモットーに、マーケティング活動を支援していきます。

 

プロフィール

  • Asai pr
    浅井 康治
    株式会社電通デジタル ストラテジックプランナー

    2010年電通入社。金融や保険、アパレルや通信などさまざまな業界のマーケティング・コミュニケーション戦略立案やコンサルティングを担当。3度の飯より服が好きなファッション馬鹿。

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