ブランド再構築に欠かせない「スイートスポット」論 #03

ブランド再構築のために欠かせない

デジタル戦略と高次元の企業目的

  • Ao4 4565 1 pr
    David A. Aaker
    カリフォルニア大学 バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス カリフォルニア大バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス名誉教授
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    緒方 玲子
    株式会社電通 マーケティングソリューション局グローバルマーケティング部 マーケティングソリューション局グローバルマーケティング部長

デジタル戦略でも重要になる「スイートスポット」への視点

緒方:アーカー教授が『ブランド論』で、「スイートスポット」と共に新たに提示なさったデジタルに関する見解についてもお伺いできますか。デジタルやソーシャルメディアをブランド構築にどう活用するのかという点ですね。

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アーカー:デジタルが現代のブランド構築に果たし得る役割は四つあります。一つ目は、従来から行われてきたように、自社商品・サービスに関する詳細な情報を提供するという視点。二つ目は、主製品の付加価値を高めブランド価値そのものをより豊かにする手法。例えば、スポーツシューズのメーカーが運動量を記録するブレスレットを販売したような戦略が挙げられます。三つ目は、顧客とのコミュニケーションプラットフォームを構築する手法。これは、従来になかったデジタルの活用方法ですね。最後の四つ目は、マーケティングプログラムやプロモーションを実現する手段として、デジタルを使うやり方です。例えばおむつメーカーが、眠っているお子さんの写真を生活者から送ってもらうというプロモーションです。これも、デジタルというチャネルを利用しなければなかなか実現できない方法ですね。

緒方:その四つの活用法のうち、将来的に、もっとも重要になってくるのはどれでしょうか。

アーカー:2番目の顧客のスイートスポットに訴えるものです。3番目のコミュニケーションプラットフォームとして活用するという点も重要性が高いでしょうね。デジタルを使って、製品価値を拡大することができるのであれば、1番目の自社商品・サービスに関する情報も重要な差別化のポイントになり得ます。

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緒方:興味深いですね。デジタルを活用するという意味では、アーカー教授も、ブロガーとしてご自身の考えや思想を広く伝えていらっしゃいます。こうしたデジタルメディアやソーシャルメディアについて、どのような可能性があるとお考えになっていますか。

アーカー:現在私は2カ所でブログを開設しています。その一つLinkedIn(リンクトイン)では、私はいわゆるインフルエンサー(影響力のある人間)として登録されていて、約9万人のフォロワーがいます。私自身のブログではすでに2年半ほど書いていますし、『ハーバード・ビジネス・レビュー』のサイトにも時々書いています。合わせるとひと月に20万人前後の読者が読んでいるということになります。

だから、書き続ける価値は十分にあると思っています。雑誌の記事として寄稿するなら3~4カ月かかる内容もあれば、本として出版するなら3年はかかりそうなアイデアもあります。その一方で1時間半か2時間考えて書けるものもあります。例えば、最新の市場の動向を取り上げて、私の考えや理論に当てはめて考察してみる。またどこかのブランドがしていることが目についたら、そのブランドはなぜそんなことをするのか、なぜそれが賢明な選択なのか、あるいは逆にあまり賢明ではないのかといった理由を説明することもできます。その簡便性は、ブログならではですね。

高次元の企業目的を持つことが、顧客との関係性を強める鍵

緒方:なるほど。それでは最後に、日本のマーケティング担当者やビジネスリーダーたちに向けて、この先、マーケティングやブランディングをどう推し進めていったらよいのか、メッセージを頂けますでしょうか。

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アーカー:第一に、ブランドは長年築き上げてきた資産であるということ、さらに、ブランドには資本価値があることを、あらためて認識することです。既存の戦略を成功させ、また未来の戦略を実現する上で、ブランドを活用することは本当に重要なことです。

第二に、ブランドの活力の問題です。過去10年から15年の間、世界的に多くのブランドが衰退してきたのを私たちは見てきました。ですから、製品ラインを見直したり、マーケティングに活力を与える何かを見つけて、それと自社ブランドとを結び付けるといった方法でブランドを活性化するのは重要です。特にブランドを支える活力の源泉が何かを見極めることはたいへん重要なことなのです。

そして三番目が、高い次元の目的を持つということです。世界の主要ブランドは高い目的を持つという方向に向かっています。高邁な目的を持つことには、採算や金銭的な利益といった側面を超えて意義があると私は思いますが、実益面でも優れた効果があります。従業員を鼓舞して活気を与える効果がありますし、敬意を伴う関係性を顧客との間で築く上でも役立ちます。

例えば多くの企業が、気候変動に関わる環境問題や水問題などに取り組んでいます。そういった企業の経営陣に話を聞くと、「それが当社の価値観です。創業以来ずっとやってきたことですから、何も新しいことではありません」と言うのです。たいへん感銘を受けますね。

緒方:高い次元の目的と価値観を持つこと。日本の企業人にもたいへん参考になるメッセージだと思います。ありがとうございました。

プロフィール

  • Ao4 4565 1 pr
    David A. Aaker
    カリフォルニア大学 バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス カリフォルニア大バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス名誉教授

    ブランドアイデンティティーの概念を提唱し、ブランド研究の世界的な権威として知られる。
    1996年、マーケティング領域で目覚ましい業績を残した研究者に贈られる「ポール・D・コンバース賞」を受賞。

  • Ao4 4541 pr
    緒方 玲子
    株式会社電通 マーケティングソリューション局グローバルマーケティング部 マーケティングソリューション局グローバルマーケティング部長

    91年電通入社以来、マーケティング部門で国内外のクライアントのマーケティング・ブランド戦略、新事業開発、海外市場参入戦略等に関わる。
    特に近年は日系企業のグローバルブランドマネージメント案件を多く担当。
    共訳書にデービッド・A.アーカー著「カテゴリー・イノベーション」

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