新明解「戦略PR」 #16

愛って理屈じゃないんだよね。四の五のうるさいPRパーソンも、たまには情熱をぶつけてみたいのよ。

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

はーい、というわけで今月も行ってみましょ!
前回の原稿(#15 広報とマーケって、もっと仲良くなれるよね?)も大変ご好評いただき、ありがとうございます。皆さんからたくさんの言葉をかけてもらいました。特に多かったのが、「あれって、あのお得意さんのことですよね? いやー、マジ納得。でも大丈夫ですか? あんなこと書いちゃって」っていうコメント。いやーっ! 違いますよ、違います。全然、顔なんか思い浮かべてないし! 特定の方を指しているわけじゃないし! 一般論だし!

しかし、おもしろい反応ですよね。みんながそう感じたということは、常日頃、接しているクライアントさんの状況が、どうもそれに近いということを感じたからなのではないでしょうか? すなわち、「言い得て妙ですねぇ」ということ。これは特定の企業の話ではなく、そこかしこに転がっている話というわけです。そんなさまざまな課題を共有しつつ、少しでも解消していくようなお手伝いをさせていただければと思っています。
さて、前置きはここまで。今回は、いつも冷静なPRパーソンの気持ちを少し解放するようなイメージトレーニングを一緒にやってみましょう!

「ファクトは大事。でもエモーションも欲しい!」

常に申し上げていますが、とかくPRは「ファクトありき」と言われる世界。CM表現だったら創造性や想像性があってもいいのですが、報道は完全なノンフィクションでなければいけませんからね、そりゃ神経質にもなりますよ、はい。しかし、正確無比に事実を伝えるという仕事を恒常的にしてきた我々広報畑の者であっても、「これをこう言ったらびっくりしてくれるかな?」とか、「こういう比喩を使ったら、なるほどーと唸ってもらえるかな?」とか、そういうちょっとトガった表現方法に憧れを持ってしまうんです。脚色とか飛躍させてはダメですが、もうちょっと感情に訴える表現をしてもいいと、最近思うんですよね。つまり、「俺だって、たまには感情的になるよ」ってなわけです。

PRでは、ついロジカルに説明を重ねがちです。例えばある製品の特徴をメディアによる報道を通じて伝えようとすると、やはりその方法は限られてしまいます。でも、広報/PRは何もパブリシティーだけではありませんよね。生活者に対してダイレクトにメッセージを発信していくような取り組みがあってもいいと思うんです。
そんなときは、製品ファクトはもちろん必要な要素ですが、時には情緒に訴え、心に強い印象を残すようなクリエーティブ・アイデアが入っていてもいいはずです。そこで、ここでは、「へぇー!」と驚き、感動できる、ダイレクトなアプローチについていくつか事例を紹介してみたいと思います。
特に今回は、宣伝部にとっては当たり前だけど、広報部が使わなそうな手段で、でもやってみたらコーポレート・コミュニケーションとして十分効果ありそうだよね、というOOH(アウト・オブ・ホーム・メディア)を紹介してみましょう。OOHだって、単に情報リーチのためのメディアに終わらせず、PRのネタとして活用していくのもアリ! 広報部だって、OOHの提案をしてみてもいいかもしれません。私自身もぜひトライしてみたいと思っています。

参考事例:

Constellation Brands「LUNA CORONA」(Cannes Lions 2014)

Constellation Brands「LUNA CORONA」

昼間のビーチで飲むイメージが強いコロナビール。夜にも飲んでほしいと、きっかけつくりを画策。コロナビールのトレードマークといえば、「ボトルの口にライム」ということで、これを大自然の力を借りながら大型屋外看板で展開しようとした。
天文学者と協力して月の軌道と周期を計算、屋外看板の巨大ボトルを用意し、これに実物の三日月がライムのように重なり完成するOOHとした。
近隣のバーと協力しながら、これを眺めつつビールを楽しむコロナビールナイトを実施し売り上げも増加。

Coca-Cola「A RAINBOW FOR THE RAINBOW NATION」(Cannes Lions 2014)

Coca-Cola「A RAINBOW FOR THE RAINBOW NATION」

コカ・コーラが南アフリカの民主化20周年を記念して、多人種国家(レインボーネーションと呼ばれている)の象徴となる「虹」を人工的につくり出しプレゼント。
自社が入る高層ビルの屋上から霧状の水を噴射し、虹を見るイベントとした。これはコカ・コーラ社が、その社会の一員としての存在を明示するために行った、国民のインサイトを捉えた共感づくりの一手といえるだろう。

British Airways「MAGIC OF FLYING」(Cannes Lions 2014)

リティッシュ・エアウェイズの飛行機が飛ぶタイミングに合わせて、大型サイネージが連動する仕組み。飛行機の位置や高度、飛ぶスピードなどの情報が、ビルボードをコントロールするクラウドサーバーに送られ、コンテンツを連動させる。子どもが飛行機を指さすしぐさなどを映し出し、やっぱ飛行機っていいよね! 的な共感をつくり出し、またブリティッシュエアウェイズの存在感を暗に刷り込んでいる。ついつい歩みを止めて見てしまうような楽しさとそれを実現させたテクノロジーが秀逸。

BischÖfliches Hilfswerk Misereor「SOCIAL SWIPE」(Cannes Lions 2014)

BischÖfliches Hilfswerk Misereor「SOCIAL SWIPE」

開発途上国の貧困問題などに取り組むドイツのカトリック系救済団体であるMisereorが行ったドネーションプログラム。通常の寄付は、自分が寄付したお金がどこで何に使われているのかが分かりづらいものが多い。そこで、寄付と同時に疑似的にそのお金の使われ方を理解してもらうインタラクティブなデジタルポスター「PlaCard」を用意。
空港などに設置された大型デジタルポスターは真ん中に溝があり、カードをその溝にそってスワイプ(読み取り)させると、飢餓の子どもたちのためにパンが一枚分切られたり、手首を縛られた綱の手錠が切られて解放されたり。自分が寄付したお金がどのように使われるのか分かりやすくイメージし、わずかなお金を寄付するだけでも、それが役に立っており、世界を少しでも変えられるということが理解・体験できるようになっている。
その後、カードの請求明細と共に「継続的な月2ユーロの寄付はいかがですか?」とつなげるなど次の行動を刈り取る手段もおもしろい。

 

いかがでしたか? 広告的ソリューションも、PR的な視点でプランニングしてみると、新たな効果を生み出すものが結構ありますよね。
皆さんの広告プランニングもPRパーソンと一緒にディスカッションすると、新たな効果や新たな価値が生まれるかも?! そのあたりも一緒にできると楽しいですね。

プロフィール

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

    1990年株式会社電通PRセンター(現株式会社電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手がけるチーフPRプランナー。
     
    企業のコーポレートコミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体広報まで、幅広く手掛ける。最近では、熊本県の赤い特産物をアピールするため仕掛けた「くまモンほっぺ紛失事件」のPRプランを手掛け、世界的なPR業界紙「Holmes Report」が主催するアワードで「世界のPRプロジェクト50選」に選出された他、多数の口コミを起こしたキャンペーンとして、世界的な口コミアワードである「WOMMY AWARD2014」を日本で初めて受賞。
    その他、受賞歴に、Asia Pacific PR Award、日本PR協会「PRアワード グランプリ」、国際PR協会「ゴールデンワールドアワーズ」、SABRE AWARDS ASIA PACIFIC、PR WEEK アワード・アジア、Asia Pacific SABREアワード、Spikes Asia 2014、Global SABRE アワードなど。
    実務のみならず、大学やトレードショー、PR協会での講義による若手育成にも従事。「Cannes Lions 2012」「Spikes Asia 2012」PR部門、「SABRE AWARDS ASIA PACIFIC 2014」「PRWeek Awards Asia 2015」「ヤングカンヌPR部門日本代表選考」審査員。「New York Festivals パブリック&メディア・リレーションズ部門」Grand Jury。2013年6月に「戦略PRの本質~実践のための5つの視点~」を上梓。

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