スポリューション #12

スポリューション×ライフスタイル

生活充実都市ポートランドの今と、

東京のこれから

  • Itoh ami pr
    伊藤 亜実
    株式会社電通 マーケティングソリューション局 ストラテジックプランナー/ブレークタイムデザイナー
スポーツコンテンツをメディア枠と捉えるだけではなく、ソリューションとしても捉えることで、新しいビジネスチャンスを生み出すことにトライしているソリューションユニット「SPOLUTION(スポリューション)」チーム。そのチームメンバーたちが、それぞれの視点から、これからのスポーツ関連のビジネスチャンスについて、リレーコラム形式でご紹介します。
スポリューション

 

こんにちは!スポリューションチームの伊藤亜実です。

今回は、アメリカのポートランドという街で見つけてきた、スポーツのあるライフスタイルについて、そして、これからの東京にも起こるであろう変化について、少しだけご紹介します。

オレゴン州ポートランドは、アメリカ合衆国の北西にある小さな街ですが、最近では全米で一番住みやすい都市といわれています。

Portland

(出典:Google Maps)

 

暮らしやすさの理由は、リビングコスト、治安、環境など、いろいろあるようですが、ポートランドではスポーツも盛んらしいと聞きつけたスポリューションチームは、暮らしやすさとスポーツの関係をリサーチするべく、現地に向かいました。

結論、ポートランドはまさに「生活充実都市」と呼ぶにふさわしい街で、そしてそこで「スポーツ」が果たす役割は、非常に大きなものでした。

Cyclist

以下では、そこで見つけた事象をいくつかご紹介します。

①肥満が少ない!
これは、非常に率直な驚きです。
アメリカでは、肥満が社会問題になっています。成人の肥満率は35.3%で、日本が3.6%であることと比べると、その深刻さは明らかです(OECD Obesity Update 2014)。

実感としても、アメリカのいくつかの都市を訪問した際に、体の大きな人をよく見かけるように思います。私には、それが「アメリカっぽさ」だというイメージすらありました。が、ポートランドの街を歩いているといないんです。いわゆる肥満はあまり見かけませんでした。現地に暮らすアメリカ人に、この発見を伝えたところ、

「ここはHealthy cityだからね」

と爽やかに言われました。
彼らの健康をつくっているものは一体何なのだろうと、ますます視察に熱が入ったことは言うまでもありません。

happy city

②サイクリング・エブリデイ!
ポートランドは、自転車フレンドリーな街として有名です。
街中に、自転車専用のレーンや、駐輪のためのポールなどが整備され、自転車用の標識もあります。
ポートランド市では、1991年から橋を通過する自転車の通行量を計測し、自転車定着率の指標のひとつにしていますが、2012年の通行量は、1991年に比べて約6.5倍にまで増えています。この計測期間中、自動車の交通量はほぼ一定とのことで、自転車の増加が顕著です(PORTLAND BICYCLE COUNT REPORT 2012)。

私たちも実際に、自転車を借りて走ってみましたが、非常に快適に移動することができました。既に十分な整備が進んでいるようにも感じられましたが、自転車レーンの距離は、今も伸び続けているとのことです。市では、2030年までに全体の交通量の25%以上を自転車にすることを、次の目標としています。

bicycle

ポートランドの自転車通行量、自転車レーンの距離は年々増加している

 

③朝の散歩はトレッキング!
ポートランドは、街づくりの信念が非常に明確です。彼らは、都市が際限なく広がることを防ぐために「都市境界線」を設け、周辺の森林や田園風景を守りました。

その結果、都会と自然が密接しており、ダウンタウンから20分程度のサイクリングで、豊かな森林地帯にたどり着くことができます。

この森林で過ごす時間は、ポートランド市民生活に欠かすことのできないワンシーンです。朝の散歩に行くと、鍛え上げた体を惜しみなく披露するトレイルランナー、ペットを散歩させている妊婦さん、会話を楽しみながら散歩しているおじいさんと少年、川遊びに夢中になっている小さな子どもとお父さん、ガールズトークに花を咲かせている女性たちなど、思い思いの時間の過ごし方をする市民でにぎわっています。

日本でも、登山などをしてから会社に行く「エクストリーム出社」が一時期話題になっていましたが、ここではそれもノーマルな朝の過ごし方のようでした。

trecking

④歩く・歩く・歩く!
トレッキングだけではありません。街なかでも市民はよく歩きます。
アメリカは、国民1人当たり1台の車を保有するといわれる超・車社会ですが、ここでもポートランドらしい街づくりの信念から、中心部は「Walkable(歩いて移動できる)」サイズで区画整理がされています。

アメリカには、車なしではまったく生活が成り立たない郊外都市が、よくあります。歩かないことにより運動不足になったり、歩行者が減るので町の治安が悪化したりといった、負の連鎖が起こっている地域もあります。

ポートランドも、以前はさびれた倉庫地帯が広がる郊外都市でしたが、1970年代に大きく方針を転換しました。30年にわたって6000万ドルをかけ、自転車向けの道路や歩道を整備し、Walkableな街づくりへの舵切りをしたのです。

現在、アメリカ人の収入の約5分の1が移動コストになっているといわれていますが、ポートランドでは、そのコストが20%少なくなっています。移動コストが浮いた分、レストランやさまざまなレクリエーションにお金をかけるので、魅力的な店やスポットが増え、ますます街歩きが楽しくなる、という正のスパイラルが生まれています(Jeff Speck, The walkable city, <ジェフ・スペック: 歩きやすい都市> TED talk)。

walking

⑤カラダ実感がそこかしこに
前述のように、ポートランドでは、自然がすぐ近くにあります。
食事に使われている素材は多くが地産地消で、中には、レストランのオーナーが自ら農業にコミットしている場合もあります。住宅地には、市民が野菜を育てるコミュニティーガーデンが多数あり、毎週開かれるファーマーズマーケットが日常的に市民の台所となっています。

このようなアクティビティーは、いわゆるスポーツではないですが、日常的に、手で触ったり足で踏みしめたりしながら、生きていくための糧をつくる作業に触れることで、自分のカラダに意識を向けるきっかけになっているようです。

farmers

■これからの東京のスポーツライフスタイル

生活充実都市であり、全米でいちばん住みたい街、美食の街として名高いポートランドですが、そこでの生活には、広義のスポーツが必要不可欠な要素になっているようです。世界がうらやむライフスタイルの、ひとつの鍵はスポーツなのです。

このようなスポーツライフスタイルは、日本においても今後広がっていくと思われます。
一例ですが、東京都の舛添知事は、2020年の東京オリンピック開催までに、都道2155キロのうち120キロに、自転車レーンを整備する方針を示しています。今年9月21日に行われた、都内43キロのコースを自転車で走るイベント「東京シティサイクリング」には、幅広い年齢層から約2000人が参加しました。今後、東京マラソンのような一大イベントに成長していくのでは、と期待されています。

既に区単位・地域単位では自転車シェアリングサービスなども始まっており、都がこの方針を強く推進すれば、一気に東京の自転車シティ化が進みます。人の移動が大きく変わり、また、個人のスポーツライフという視点でも、大きな変化になりそうです。
また、Walkableな街が若者を呼び寄せ、次第に魅力的な街へと生まれ変わらせていくという視点は、車生活化と過疎化が進む日本の地方都市にも参考にできる部分があると思います。

国や自治体レベルでの変化には時間がかかりますが、個人レベルの変化は既に起き始めています。無茶な働き方や遊び方をして、武勇伝のように不健康自慢をする、という光景は次第に過去のもなり、「健康に楽しく長生き」を目指してカラダを大切にする、というライフスタイルが、実践され始めています。
こうした健康志向は一時のブームでは終わるものではなく、中長期的に見て人々の価値観や判断基準、働き方などに少なからぬ変化をもたらしていくのではないでしょうか。

こうした未来の暮らしや、変化のベクトルについて、スポリューションメンバーを中心に研究を始めています。今後も関連した活動や情報発信を行っていく予定ですので、引き続きご注目下さい。

★「スポリューション」チームとは?
スポーツコンテンツを、「メディア物件」として捉えるだけではなく、事業課題や、プロジェクト課題を解決するための「ソリューション」として捉え、企画する電通社内ユニットです。
チーム内には、スポーツプランニングの実績が豊富な戦略プランナー、プロモーションプランナー、コピーライター、アートディレクター、テクノロジスト、コンサルタント、プロデューサーなど多種多様な人材をそろえており、ソリューションディレクター制によって、「表現のアイデア」だけでなく、「解決策のアイデア」をワンストップでご提供いたします。

プロフィール

  • Itoh ami pr
    伊藤 亜実
    株式会社電通 マーケティングソリューション局 ストラテジックプランナー/ブレークタイムデザイナー

    人の気持ちに寄り添い、思いを引き出し、社会にとって価値あるストーリーを伝えるために日々精進しています。個人的なテーマは、ダンス産業の拡大、モノづくりの復興、デコボコで多様性ある暮らし方・働き方の推進など。

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