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「そのひと言」の見つけ方No.3

書くのではなく「見つける」。

2014/11/06

電通のコピーライターですと自己紹介すると、「コピーライターってどうやって言葉を思いつくのですか?」「どういうふうにアイデアって湧いてくるのですか?」などと訊かれます。
でも僕は、アイデアというのは自分から湧き出るとかすぐにぽんぽん出てくるものではなくて、どちらかというと「見つける」という感覚に近いなと思っています。
商品の価値を自分自身が開発するのではなく、この価値は何なのだろう? ということをいろいろな角度から見つけにいく、発見するのが、コピーライターの仕事なのです。

切り口の話と少し近いのですが、よい切り口を見つけると、自動的によいコピーが生まれます。「何かよい表現を書こう」というのではなく、「何かよいものが見つけられないかな。何かよい事実を発見できないかな」という感じです。
そういう、自分にしか見つけられないかもしれない「宝探し」的な意識が、読んでもらえる文章のコツなのではないかと思います。

コピーライターの仕事をひと言で言えば、
「みんなが思っていることを、みんなとは違う言葉で書く人」
です。
みんなが思っていないことを書いたら、誰にもわかってもらえない。
でも、みんなが思っていることを、みんなとは違う言葉で書けたら、「あ、こういうふうに言ってほしかった!」となる。それを書ける人がコピーライター。

その「みんなが思っていること」を、自分が創作して書くのではなく、事実として見つける。どんな切り口がいいか見つけるということです。
見つけたらその先がコピーライターの仕事で、どう表現するのかを考える。みんなが使わない言葉、手垢のついていない表現で、ちょっと新鮮な文章を考えるのです。
それが「人に届きやすい言葉」なのかなと僕は思います。前回の「切り口と表現のかけ算」に照らし合わせてみると、

みんなが思っていること(切り口)
    
みんなとは違う言葉で書く(表現)
    
人に届きやすい言葉(コピー)

ということですね。

では、「見つける」には具体的にどういう訓練をすればよいでしょうか。
僕は、何か気になったらその理由を考えることにしています。それは、「みんなはどう思っているのか?」を考えるきっかけになるからです。
たとえばニュースを聞いたり雑誌を読んだりして、「どうしてこれがいま流行っているのだろう?」と考える。映画やテレビドラマを見ても、「なぜ僕はこれがおもしろいと思ったのだろう? みんなはどう思っているのだろう?」と言葉で説明できる理由を考える。お店でめずらしいものを手にとれば、「なぜこの商品が生まれたのだろう?」と想像をめぐらす。そうやって理由を探すと、「みんなが思っていること」に対して想像力が働くようになり、切り口の引き出しが増えていくはずです。
僕の場合、そういうトレーニングを普段から心がけていたら、いつかそれは習慣となり、何をしていても自然と理由を考えるようになりました。
そういえばマザー・テレサの言葉にも
「行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから」
という言葉がありますね。

見つけられるまでのプロセスは実にしんどいです。吐きたくなるくらいしんどい。でもそれは、必ず、見つかります。見つけたら、人に届く言葉まで、あとちょっとです。

 

イラスト

絵/前田大作(電通 第4CRプランニング局)