スタートアップって何?~新しい経済成長エコシステム~ #02

経営力が弱くても投資!? 高打率のスター投資家が語るスタートアップ

  • Prof watanabe
    渡辺 洋行
    B Dash Ventures株式会社 代表取締役社長
  • Fmnakajima1
    中嶋 文彦
    株式会社電通 CDC 部長 事業開発ディレクター

スタートアップについて考える本連載、2回目はスタートアップを資金面、ビジネス面で支援するベンチャーキャピタル(VC)に焦点を当てていきましょう。

今回は、ソーシャルゲーム、アドテクノロジー、メディア関連のスタートアップを中心に数々の投資を成功させている注目の投資家、B Dash Venturesの代表取締役・渡辺洋行氏にVCの仕事、成長するスタートアップ、投資家から見るマーケティングやメディアついてお話をうかがいました。

B Dash Ventures 渡辺氏、電通 中嶋氏

B Dash Ventures 渡辺氏(左)、電通 中嶋氏

 

中嶋:渡辺さんはどういう経緯でB Dash Venturesを創設したのですか?

渡辺:もともと三和総合研究所というシンクタンクで、インターネット、IT関連事業のコンサルタント、アナリストをやっていました。2000年のITバブル、その後の盛り上がりなどを経験する中で、起業家、投資家、金融機関などと関わりが深くなり、コンサルタントではなくもっと事業に直に関わっていきたいと思うようになりました。その時は起業家になるのか、投資家になるのか決めてはいなかったんですが。

07年に三菱UFJキャピタルに移りまして、ここでITやインターネット関連の投資を開始しました。当時は3年ほどで独立したいという気合で始めたんですよ。

そして3年たった10年に、ネットエイジ(現ユナイテッド)の投資事業のテコ入れで事業本部長として呼ばれました。この時、想定より早く事業を軌道に乗せられたんです。そしてちょうどそのころ東日本大震災があり、人生どうなるか分からない、好きなことは早めにやった方がいいと感じて、11年に独立しました。

中嶋:独立されてから3年ですね。渡辺さんのところは投資の後の展開が非常に早いですよね。

渡辺:パフォーマンスも高いですよ(笑)。とにかくスタートアップはスピードが命。成功モデルが見つかるまでどんどん事業を回転させ変更する。それを経営者と一緒に行うのが我々の役割。それと、投資先のイグジットにコミットすること。IPOでもM&Aでもなんでもいい。我々を信じて投資を受けてくれた経営者のためにも、そして、インターネット業界全体のためにも成功事例をたくさん排出するのが我々の役目だと思っています。

逃げる人には投資できない。最後までやりきれるなら、マイナスがあっても投資する

中嶋:投資対象をメディア、ゲーム、Eコマース、アドテクにフォーカスしている理由は?

渡辺:ドカンと当たるのはやはりゲームですね。ただファンドマネージャーとしてはポートフォリオを組むにももう少し幅を広げる必要があります。アドテクは盛り上がっているタイミングでもありますし、実際昨年にスケールアウトのM&Aも成功しました。と、これは自慢ですね(笑)。

中嶋:いえいえ、実際に打率が高いですよね。渡辺さんはどういう観点で投資先を選定しているのでしょうか。人なのか、数値なのか、戦略なのか…。

B Dash Ventures 渡辺氏
 

渡辺:まずは人ですね。経営者の中にたまにスーパーサイヤ人みたいにどんな事業をしようが「絶対に買い」な人がいる。実績があり、業界ネットワークがあり、ビジネス戦略、能力などいろいろ合わさっている人ですね。例えばiemoの村田マリさんはその典型です。本当に凄い起業家。まったく手が掛からないで、DeNAにバイアウトされました。

ですがそのような人はなかなかいないので、あとはどれだけ見極めていくかですね。その中でも一番大事なのが絶対あきらめないで、逃げないこと。話していると大体分かりますね、この人は切羽詰まったら逃げるなと思ったら投資するのは厳しいですね。

 

資金面だけでなくビジネスでもサポート。投資までいく案件は数%

中嶋:その次に見るものは何ですか?ビジネスの組み立てでしょうか。

渡辺:それだけではだめで、突破力、営業力でしょうか。クラウドワークスの吉田浩一郎さんやgumiの國光宏尚さんは突破力がすごい。お二人の会社はそろそろIPOという状況ですが、今後さらに期待できますよね。

別の例ですとKDDI子会社のmedibaに売却したスケールアウトは、技術力は日本トップクラスですが、ビジネスモデル、営業力の点ではかなり弱かった。でもそれを支えるのもわれわれの役目です。普通なら投資しない可能性もありますが、エンジニア陣の高い能力と代表の山崎大輔さんの逃げずにあきらめない性格。その点で投資を決め、シードのレベルからサポートしました。当時、収益のために受託開発をやっていたのをやめ、DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)の開発に注力してもらいました。

 

中嶋:渡辺さんにくる案件のうち、実際に投資に至る割合というのはどれくらいなんでしょうか。

渡辺:案件としては年に数百件ほどの話を検討しますが、その中で投資するのは10件程度でしょうか。確度の高い案件とそうでないもののバランスを見ながら決めます。実際、まだまだビジネスモデルが確立していない会社、経営者のほうが、リスクは高いですが投資リターンは高いという面もあります。

中嶋:実際にグロースする会社に共通する特徴はあるのでしょうか?

渡辺:マーケットが8割です。大きくなるマーケットを選べば勝てます。経営者の力量が少し足りないだろうが、ビジネスモデルが多少崩れていようが伸びるマーケットに早く入れば勝つ可能性は高くなります。

今はかなりスマートフォンに注力していて、そこで伸びている分野に投資していけばだいたいグロースはかけられますね。

中嶋:11月に2号ファンドも始めるそうですね。

渡辺:1号ではシード・アーリー、レイターへの投資が中心でしたが、2号ファンドではシード・アーリー、シリーズB(事業成長~拡大期のビジネスへの投資)、レイターが中心となります。かなり全般的にカバーしますが、やはりシード・アーリーを軸としてポートフォリオを構成するつもりです。

スタートアップの広告展開、アプリ×テレビでどうグロースをかけるのか

中嶋:海外展開、特にアジア市場などはどう見ていますか?

渡辺:海外は…どうしましょう(笑)。アジア、アメリカの7、8社くらいには投資していますが。やはり投資の観点から見ると、スマホアプリ、ネット関連の事業で当たるのは日本、アメリカ、中国ですね。中国は市場に入りにくいので、アメリカになりますがアメリカに現地会社を作るというほど注力することはないですね。というのも東京と同じようにシリコンバレーにはシリコンバレーのネットワークがあって、そこに入り込まないと投資家としてやっていけないからです。

もちろんアジアには成長している企業もありますし、インドネシアなどが注目されていますが、投資のパフォーマンスを考えるとまだ早いです。5年から10年遅れている印象がありますので、典型的なEコマース事業などであれば投資を検討するようなレベル感です。2020年以降が本番じゃないでしょうか。

中嶋:渡辺さんが広告マーケティングに期待することは?最近は、渡辺さんの投資先でもあるGunosy、gumiなどテレビCMを大々的に展開するスタートアップが急増しています。

渡辺:テレビ広告とネット、アプリのグロースのあり方が、ここ1年で明らかに変わりましたね。アプリとテレビ広告をどう連動させてどのようにグロースにつなげるか、まだ正確な解がない中で、Gunosy、gumiでは徹底的に研究してある程度方向が分かってきました。

また、アプリをどう浸透させるのかを考える際もマーケティング手法を抜本的に変えていかないといけない。サービスやコンテンツの内容によって、全く手法が異なります。アプリとしてグロースをかけるのか、スマホのウェブコンテンツとしてSEOでページビューを伸ばすのか、また、そこからアプリにどうやってユーザを誘導するのか。例えば、Gunosyなどのニュースキュレーション系だと徹底的にマスを取る必要があるので、テレビCMなどを使って多くの人に認知してもらいアプリをダウンロードしてもらう必要がある。他方、女の子向けキュレーションメディアとして人気の「MERY」はアプリ化していないけれど、SEOを活用することでWebコンテンツとしてかなりのページビューを持っているようです。今後はこれをアプリに誘導し、マネタイズするのだろうと思いますが、「MERY」のようなバーティカル系のメディアですと、この手法の方が費用対効果が高いですよね。

中嶋:渡辺さんは投資家としての才能とマーケティングについての知見がすごくありますよね。

渡辺:僕らの商売はお金を投資するのが仕事ですが、経営者と一緒にマーケティングを考え、ビジネスモデルのKPI(評価指標)を構築・修正するのも重要な仕事です。でも、事業を立ち上げて半年も一緒にやっていくと、若い経営者の方が詳しくなって、そのうち色々と教えてもらうことになりますが(笑)。

中嶋:最後に、メディアというのは今後どうなっていくと思いますか?

渡辺:スマホの登場によりメディアの概念が変わってきて、ニュースメディアだけじゃなくて、例えばメルカリなどのEコマースサービスもメディアのようになってきています。見る人は買おうと思って見ているわけではなくて、手近にある雑誌感覚で見ている。これからはEコマースでもなんでも手軽なメディアとして人に常に見てもらうというのが大事になってくるでしょう。暇つぶしでも何でもいいから、接触機会を増やせばメディアとして成立する。それがスマホ時代のメディア。その中で、どうやって購買、あるいは広告などでマネタイズしていくかというのが肝になりますね。

中嶋:これからの渡辺さんの投資活動には注目ですね。またB Dash VenturesやVC各社の活動も活発になってくるのを強く感じました。

テレビCMをはじめとしたスタートアップの広告・マーケティング活動が盛んになってきている中で、より早い企業成長やビジネス拡大につなげるために、広告会社とVCとのやりとりも増えてくる予感がします。またお互いの知見や活動領域を活かして取り組めるプロジェクトなども沢山ありそうですね。ありがとうございました。

プロフィール

  • Prof watanabe
    渡辺 洋行
    B Dash Ventures株式会社 代表取締役社長

    B Dash Ventures株式会社 代表取締役社長

  • Fmnakajima1
    中嶋 文彦
    株式会社電通 CDC 部長 事業開発ディレクター

    電通でマーケティング局、営業局で国内外のクライアントのマーケティング戦略と実施を担当。退職後、アイ・エム・ジェイに転職。ネットマーケティング部門運営、子会社役員、CCCのTポイントECモールの事業化などを行う。2008年末に電通再入社。現在は、位置情報データやセンサー技術などを活用して自社、クライアント、パートナー企業との事業開発、サービス開発を行う。モバイル広告大賞、グッドデザイン賞など受賞。1971年生。

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