スポリューション #13

スポリューション×テクノロジー

Augmented Sports「概論」

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    堀田 高大
    株式会社電通 ビジネス・クリ エーション・センター
スポーツコンテンツをメディア枠と捉えるだけではなく、ソリューションとしても捉えることで、新しいビジネスチャンスを生み出すことにトライしているソリューションユニット「SPOLUTION(スポリューション)」チーム。そのチームメンバーたちが、それぞれの視点から、これからのスポーツ関連のビジネスチャンスについて、リレーコラム形式でご紹介します。
スポリューション

はじめまして。スポリューションチームの堀田です。
スポリューション×テクノロジー第2回です。今回は私自身が大学時代に研究していたAugmented Sports(オーグメンテッド・スポーツ)の話題にしようかなと思います。

「Augmented Sports」、最近世間でも聞くようになりました。ただ、まだ研究分野の近い人たちだけで盛り上がっている感は否めません。そもそも、スポーツとテクノロジーが合わさることで何ができるのか、ほとんどの人はイメージできていないのではないでしょうか。
Augmented Sportsは訳すと拡張型スポーツ。つまりスポーツを拡張するわけです。では、「具体的にスポーツの何を拡張するのか?」。ここから説明していきます。

Augmented Sportsの定義

最近いろいろな場所で、著名な方々のAugmented Sportsの定義を聞きます。
そんな中で恐縮ですが、私はAugmented Sportsは大きく2つに分類できると考えます。

1. Doスポーツの拡張
2. スポーツ観戦の拡張(スポリューション×テクノロジー第1回はこの2番)
※ちなみに私は2番のスポーツ観戦の拡張を専門に研究してきました。

この2つの他にもう一つ大事なことがあります。それはAugmented Sportsがスポーツを全ての人が楽しめるものにするということです。
それでは、まずは「Do スポーツの拡張」から簡単にご説明していきます。

1. Do スポーツの拡張

これは主にスポーツをやる人、スポーツの場自体を拡張します。
スポーツを普通にやっていても楽しいのですが、ここにテクノロジーを付加することで普段やっているトレーニングや趣味のスポーツをもっと新しいものにすることが可能になってきました。
例えば、

「スポーツタイムマシン」
これは、山口県山口市の中心商店街にて開催されたYCAM(山口情報芸術センター)10周年記念祭で実際に3カ月展示された「過去の自分や他の動物との競争」を映像表現によって可能にしたAugmented Sportsです。
これは視覚的情報を用いて普通の駆けっこを拡張しています。実際に体験した子どもたちは駆けっこだけではなく、さまざまな創造力を働かせて別の遊びにも発展したそうです。

  sports_tech01  
 
YCAM 10周年記念祭でのスポーツタイムマシン
 
 

このように、Do スポーツの拡張を体験してみれば、イメージが膨らみ、さらに拡張が起き、いくつもの派生が生まれるという可能性も秘めています。

「スポーツ超LIVEテクノロジー」
これは今年のニコニコ超会議のニコニコ学会βブースでTeam Communication And Technology (Team CAT)という社内の自主研究チームで試験的に製作したシステムです。普通の重量挙げにリアルタイムでエフェクトをかけるとどうなるかを実験しました。仕組み的には難しいことはしていませんが、実際に体験した人からは評価も高く、自分の動きに合わせてモニター越しではありますがエフェクトがかかると面白く感じていただけるという結果が出ました。

  sports_tech02  
 
ニコニコ超会議ニコニコ学会βブースでの
スポーツ超LIVEテクノロジー
 
 

これらの応用先としてはエンタメ領域だけでなく、ジムでの単調なトレーニングにエフェクトをかけたり、何回持ち上げたかなどの基本的な情報を付加してモチベーションを上げていくことが考えられます。

今回ご紹介したものは映像を用いた拡張になりますが、この他にも拡張の方法はあります。例えば、人間の身体能力を上げる「能力の拡張」や逆に全ての人を同じ能力へと中庸化させるために制限をかける「制限によるスポーツの平等化」というマイナスの拡張もあり得ます。
自らのスキルを競うスポーツも大事で、もちろん面白いのですが、Augmented Sportsの根元にあるのはみんなが楽しめることです。
そのため、その一つの手法としてスポーツとテクノロジーにより、誰でも楽しめるものとしていくことが、この「Do Sportsの拡張」の目的でもあります。

2. スポーツ観戦の拡張

観戦の拡張はさらに2つに分けられます。
・視覚・聴覚の拡張
・触覚情報の追加

<視覚・聴覚の拡張>
視覚・聴覚の拡張はこれまでのスポーツ観戦で見ていた・聞いていた情報を拡張し、スポーツ観戦に新しい体験をもたらします。
例えば、私が研究していたのはボール視点の映像を作るというもので、これは今まで見ることができなかった映像で視覚的に観戦の体験を拡張します。
百聞は一見にしかずです。実際の動画を御覧ください。

BallCam01   BallCam02
画像処理前
 
画像処理後
 
※電気通信大時代の小池英樹教授の元で研究したものです(現在は小池教授は東京工業大に在籍しています)。
 

これはアメリカンフットボールの中にカメラを組み込み、それを投げた時にカメラが撮影する映像を画像処理で加工し、ボール視点の映像を提供しています。

  BallCam03  
 
実際に作成したボールカメラのプロトタイプ
 
 

球技スポーツにおいて、選手の邪魔をせず、一番選手に近づけるのはボールです。つまりボールから映像を提供できれば、選手により近い映像の提供が可能だと考え、この研究を行いました。
他にも最近では審判目線のカメラが実際の中継で使われたり、テニスではライン判定のため、またサッカーではゴールかどうか際どい部分の判別のため審判の補助で使われるシステムを実際の中継で可視化したりしています。
視覚的な情報は人間にとって非常に重要です。今まで見ることができなかった映像を提供することができれば、今後新たな感動を巻き起こすことができると考えています。
次は触覚情報の付加についてご説明します。

<触覚情報の追加>
私が所属した研究室の分野的には非常にホットな領域です。ただ、まだ世間ではそれほど重要視されていない部分でもあります。それではどうやってスポーツと触覚を重ねていくのか…。一度テレビゲームを思い浮かべてください。ある時期からゲーム機のコントローラーに振動がつきました。これはみなさんもご存じだと思います。
野球のゲームをしてボールを打った時、サッカーゲームではポストに当たった時、格闘ゲームではパンチが当たった時、殴られた時…振動するようになりました。
私はこれを小学生とか中学生の頃に体験しましたが、今ではゲームコントローラーに振動は当たり前。普通に視覚・聴覚・触覚で楽しんでいます。
これと同じ現象が今リアルスポーツでもできる。そんな土台はセンサーの小型化やスマートフォンの普及によって整ってきたと思っています。
では、どのような情報を触覚によって再現するか、あくまで私の考えですが、
例えば、

ボクシングであの殴られた人には、どのくらいの衝撃があるんだろう…。
バレーボールのアタックをレシーブするとき、どのくらい痛いんだろう…。

など、想像したことがあるかと思います(私はそういうことを考えました)。
これをどう実現していくかですが、これも実際に研究を行いました。
「スマボ」という「スマートフォンをボール内部に入れたもの」を作り実際にそれを投げます。そのボールを受け止めた時に選手が受ける衝撃をボール内部に入れたスマートフォンで識別します。
そして、そのスマートフォンからその場面を見ている観客のスマートフォンへ振動情報として提示するという非常に簡易的な仕組みです。
これにより、選手がボールを受け止めた時の衝撃をアプリ越しに振動で感じることが可能になりました。

  sports_tech03  
 
衝撃共有のイメージ
 
 

実際に殴られたり、レシーブすると死ぬほど痛いと思います(多少は調整しないといけないと思いますが…)。でも、そこまで感じてこそ本当のファン。痛みも共にしてこそ、その選手に感情移入ができる。そんなふうに考えていました。
この研究では確かに衝撃を受け取ったという感覚を共有できます。ただ、触覚はそう簡単なものではないのです。本当はそこまでお話ししたいのですが、触覚についてお話をするとそれだけで別の話になってしまうので、ここでは割愛します。

映像や音に比べ、触覚はまだまだ一般化しているとはいえません。
ただ、先述したように土台は整いつつあります。触覚を用いた観戦の拡張は多分すぐそこまで来ています。
視覚・聴覚に加えて触覚で楽しむスポーツが一般化してくると、付加情報が増え、健常者だけでなく、障害のある方も触覚で不足した情報を補うことができ、新しい楽しみ方を提供できるのではないかと考えています。

Augmented Sportsはこれからの分野

今回ご紹介したことはまだまだ技術的には発展中です。ただ、今後このようなテクノロジーを用いたスポーツの拡張が行われてきます。今まで見ることができなかった視点の映像、スポーツデータの可視化・可触化、応援の拡張など、今までと違うスポーツの楽しみ方が今そこまで来ているのは事実です。そして実際にここでは紹介していない、スポーツを拡張する研究もたくさん存在します。
そして、今回のテーマがスポーツとテクノロジーということで、テクノロジーを用いたAugmented Sportsのお話をしましたが、テクノロジーはあくまで手段であり、Augmented Sportsはテクノロジー以外でも実現が可能です。
そんなAugmented Sportsの可能性をスポリューションチームではこれからも研究していきます!

つたない文章にもかかわらず、最後までお付き合いいただきありがとうございました!


★「スポリューション」チームとは?

スポーツコンテンツを、「メディア物件」として捉えるだけではなく、事業課題や、プロジェクト課題を解決するための「ソリューション」として捉え、企画する電通社内ユニットです。
チーム内には、スポーツプランニングの実績が豊富な、戦略プランナー、プロモーションプランナー、コピーライター、アートディレクター、テクノロジスト、コンサルタント、プロデューサーなど、多種多様な人材をそろえており、ソリューションディレクター制によって、「表現のアイデア」だけでなく、「解決策のアイデア」を、ワンストップでご提供いたします。

プロフィール

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    堀田 高大
    株式会社電通 ビジネス・クリ エーション・センター

    2013年電通入社。テクノロジーを用いたイベントやPRのプランニング、O2O関連の事業に従事。画像処理・フィジカルコンピューティング・センシングなどを駆使しAugmented Sportsの研究を行っていたことからスポリューションのメンバーとして活動中。

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