で、結局サービスデザインってどう実践すればいいの? #02

0→1を生み出す、課題発見における3つのポイント

  • Ywatanebe1
    渡辺 大和
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

さて、前回はサービスデザインの「概論」について書いたが、今回のテーマはサービス設計前の土台づくりにおいてとても重要な「課題の発見」である。

まだ世の中に登場していないサービスのデザインにおいては、課題が不明確なことがほとんどだ。その場合は、単純なアンケートなどの定量的な調査だけでは洞察を得られず、開発者やターゲットとなるユーザー、その他のステークホルダーが集まってワークショップという方法を取ることで質的データを蓄積し、アイデアを検証しながら課題を見つけていくことが大切になる。

しかし実際のところ、現場では多くのケースでこうした「質的調査」実施の難しさにぶち当たっており、試行錯誤しているというのが本音ではないだろうか。

私自身もさまざまな質的調査のためのワークショップに関わる中で、思うようにフィードバックが返ってこない、ファシリテーションが行き過ぎてバイアスがかかってしまう、商品のデザインや細かい機能に話が及び議論自体が散漫になってしまう…などといった数々の失敗とそれに対する改善を重ねてきた。その中から、サービスの課題発見における以下のような3つの示唆が浮かび上がってきたので紹介したい。

1.ワークショップの中ではあらかじめ役割を与える

質的調査のワークショップの中でも、人は無意識に肩書きや立場にとらわれてしまいがちだ。それにより発言にバイアスがかかったり、声の大きい人の意見に引っ張られて議論が建設的な方向に向かわなくなったりする。それを防ぐためにあらかじめ調査対象者に対して役割のローテーションを規定してしまうのである。

例えば、私が以前に学生団体の協力を得て、あるウェブサービスの若年層向け施策に関する課題発見ワークショップを行った際には、各班のファシリテーターを序盤・中盤・終盤で異なるメンバーに担ってもらい、議論をリードする人を入れ替えて視点の複眼化を図った。すると、声の大きい学生や周辺の事象に偶然詳しい学生の考える問題意識のみに固執してしまうリスクを軽減することができ、結果としてサービス開発チームの狙い通り、若年層向け施策における普遍的課題に関して多くの示唆を得ることができた。

2.ターゲットの言語で発話してもらう

サービスデザインの現場では、あるサービスに関する体験を多様な接点とともに構造化したいときに、よくカスタマージャーニーマップを作成して整理する。その際、サービス利用者の立場になりきって感情を想像し記述することが必要だが、なかなかこれが難しい。

例えば、とあるメーカーとの質的調査の中では、調査ターゲットに製品のモックアップを声に出しながら自由に使ってもらった上で、その会話の内容も記録してもらいカスタマージャーニーマップを作ってもらった。サービスとの接点やその時の感情をターゲット自身の言語で発話してもらうことにより、開発者の思いもよらなかった視点から課題が浮かび上がってくるという収穫が得られる結果となった。まだ世の中に存在していない分野の製品であったため、通常のアンケート調査からは示唆を得られないケースであったが、ターゲット自身による発話を誘発させたことが課題発見におけるヒントとなった。

3.フィードバックのフォーマットを決めてしまう

ワークショップの進め方として一般的な、付箋を配って班ごとにディスカッションをする方法だけでは、具体性を欠く単語ばかりを羅列してしまったり、事象の描出だけに終始して本質的な欲求価値にラダーアップできなかったり、後の分析の精度に悪影響を及ぼす結果になってしまうケースがある。

これらを防ぐための方法として、あくまで課題の本質的な部分はユーザーに言語化してもらいつつも、あらかじめ用意したある程度のフォーマット(例:「これはXという課題をYによって解決するサービスだ」のX・Yを埋めてもらうことをゴールとする、など)に乗せることによってアウトプットの散漫化を防げば、ブレがなく比較可能なフィードバックを得ることが可能となる。

課題発見ワークショップの様子

 

また、クライアントとともにサービス課題を洗い出すワークショップの中では、時に広告会社の営業やプランニングセクションにいる人間にとってはドキッとするようなフィードバックが返ってくることもある。例えば、先ほど1の項目で挙げたウェブサービスの例では、情報滞在時間が長いと思われていた媒体が、日記式調査(※)を行ってみると、若年層の間では短期的な情報消費にすぎなかったことが判明し、媒体特性を再考する必要が生じたこともあった。しかしそのようなことが起きても、サービスが世に出る前にリスクをつぶせたと達観し、「パンドラの箱」を開ける勇気を持つことも重要だ。特に新しい技術や概念を導入してサービスを開発する上では欠かせない心構えである。

※日記式調査…ある期間の生活時間をスケジュール表のように区切り、ターゲットがどんな時間の使い方をしていたか、どんな情報媒体に接触していたか、どんなアプリを起動していたかなどを記録してもらう調査。

世の中や業界の常識を変える新しい概念は大抵、みにくいアヒルの子の姿をして現れる。

例えばほんの数年前、ハイプカーブの頂点にフェイスブックやツイッターに代表される“Social Networks”があったころ、一部のテッキーな人たちは「次世代のマーケティングツールだ」と盛り上がりを見せた。しかし成功事例にはまだ乏しく、多くの人にとっては具体的なファクトに欠けた色物的な概念として捉えられていた。

ところが、今や「ソーシャル」とは何か?ということを改めて語るまでもなく、マーケティングでフェイスブックやツイッターの存在を無視することはほぼないし、消費者と接点の生じるほとんどの企業施策になんらかのソーシャル要素が織り込まれている。

同じように、もう少し時間がたてば現在流行語的に使われている「サービスデザイン」という言葉に特別な響きがなくなり、サービスデザイン的な考え方がどこにでも見られるようになるだろうと思っている。

プロフィール

  • Ywatanebe1
    渡辺 大和
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    IT系ベンチャー起業などを経て、2013年電通入社。スマートフォンアプリを中心としたサービス開発や、エスノグラフィ調査に基づくコミュニケーションプラン策定などに従事。

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