セカイメガネ #23

ジャカルタのチョウ

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    Keat Soh
    キート・ソー
    電通インドネシア エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

オフィスに通勤するのに、普通なら30分。昨日は近道を選んだのに道がひどく渋滞していて、結局82分かかった。二つの打ち合わせに間に合わなかった。三つの打ち合わせの開始が遅れた。昼食を取れなかった。たまった仕事は深夜まで片付かなかった。家族との夕食はおじゃんになった。娘に枕元でお話を聞かせてやれず、彼女はひとりで眠るはめになった。私はテレビをつけっぱなしにしたままソファで寝てしまった。まずいことにごみを出し忘れた。一連の事態に妻はまったく納得していない。

それにしても、なんだって交通が渋滞したんだろう? 原因は誰かがトラックから落とした卵のかごだった。

先週クリエーティブ・チームが、ここしばらくお目にかかったことのない素晴らしいアイデアを思いついた。みんな歓喜した。これなら競合に勝てるし、広告賞も取れるに違いない。クライアントだってこの案に飛びつくだろう。きっといいキャンペーンになると誰もが自信を持った。

私は好奇心でチームのメンバーに質問した。どうやってこのアイデアを思いついたんだい? マッピングの手法でも使ったのかい? それともブレーンストーミング? あるいは20のアイデアボックスにアイデアを放り込み続けたあげく、金のタマゴにぶつかったとでも?

どんな返事が返ってきたかって? コピーライターが新品のiPhoneをうっかり便器に落としたことがきっかけで、アートディレクターがアイデアを思いついたんだって!

10月、ジョコ・ウィドドがインドネシア大統領に就任した。彼、ジョコウィは貧しい家庭に生まれた。権力の座に着くまでの年月は現代政治における波は 瀾らん万丈の物語だ。注目を浴びたのは、その物語がインドネシアで生まれたからだ。無名だったジョコウィが、いまや世界で4番目の人口を持つ国の最高権力者に上り詰めた。東南アジア最大、世界で16番目の経済力をリードしている。フォーチュン誌が世界の偉大な指導者50人のひとりに選び、タイム誌の表紙をはじめ、数え切れないほどのメディアが取り上げた。彼がどうして政治の世界を目指したのか? 子どものころ、自分の家から追い出されたことがきっかけだったのだ。

カオス理論によれば、ブラジルのチョウの羽ばたきはシカゴの竜巻につながっている。ジャカルタのチョウの羽ばたきが、世界にどんな変化を引き起こすのか、私は注目している。

(監修:電通イージス・ネットワーク事業局)

プロフィール

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    Keat Soh
    キート・ソー
    電通インドネシア エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

    キートは困難な課題に取り組むのが喜びだ。
    三部リーグのサッカーチームを監督して、マンチェスター・ユナイテッドを本拠地オールド・トラッフォードで打ち負かすのが野望だ。
    キートはグッド・イノベーションを信じている。ライバルたちが脚光を浴びようと広告賞を狙う姿をよそめに、黙々と舞台裏で世界をよりよく変えていくことを望む。
    彼の生活の原則は「改善」だ。

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