半径ワンクリック #10

和田裕介(ボケて)×土屋泰洋:後編「ウェブネイティブな笑い」

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    和田 裕介
    株式会社オモロキ
  • Portrait
    土屋 泰洋
    株式会社電通 CDC

前編に続き、プランナーの土屋泰洋さんが、「ボケて」の“ゆーすけべー”こと、和田裕介さんに話を聞きます。「ボケて」の世界展開(!)、そして和田さんがポッドキャストをする理由とは!?

ある日突然アクセス数が6~7倍に

土屋:アプリのダウンロード数やPV伺ってあらためてすごいなと思うんですが、「ボケて」って、ローンチ当時から人気があったんですか?

和田:実はローンチした2008年から2012年までの4年間はずっとアクセスが低くて、鎌田が問題のある画像を毎日消して、僕はメンテナンスをして…、といったこと以外は基本は放置でした。最初、サービス自体を売ってしまおうか、という話もしていたくらいで。それが2012年の5月12日から13日にかけて、これは日付まではっきり覚えているんですけど、携帯に「ボケて」のサーバー負荷がすごいぞっていうメールがバンバン届きはじめたんです。最初はサーバーのトラブルかと思ったんですけど、アクセスログを見たら、すごい数字になってる。で、グーグルアナリティクスを見たら、アクセスが普段の6倍とか7倍になっていて…。

土屋:それはかなり興奮しますね! 何がきっかけだったんですか?

和田:2ちゃんねるのまとめサイトに載って、ほぼ同時に「Naverまとめ」にも載ったんです。それまで何年も「ボケて」の中でコアなユーザーが面白いコンテンツを貯め続けてきて、それがある日キュレーションサイトで評価されてドンとアクセスが増えたんです。いわゆる「スラッシュドット効果」とよばれる現象があって、一時的に話題になってアクセスが増大しても、すぐにアクセスが落ちるのが普通なんです。でもこの時は話題になった後に全然アクセスが落ちなかった。だからすぐにサーバーもプログラムも、増えたアクセスに対応できるようにしました。

土屋:なるほど一気に軌道に乗ったわけですね。そしてその後、モバイルのアプリを出したわけですか。

和田:そうですね。モバイルのアプリを作るために、パートナー体制を作ったんです。それがうまくいって、その年の10月にiPhoneアプリを出して、そしたらその分さらにアクセスが上がりました。

土屋:マネタイズに関しては、いつぐらいからうまくいくようになったんですか。

和田:ウェブサイトとモバイルアプリに広告を載せて、企業とのコラボを始めたのが、その翌年の5月くらいですね。「ボケて」が、やっとビジネスができるサービスになったんだなあって思いました。

土屋:今の「ボケて」からすると、スタートして4年間もアンダーグランドだったっていうことにビックリしますけど。

和田:その間、オフ会をやったこともあるんですよ(笑)。写真を貼ったフリップとペンを用意して、「ボケてください」って感じで。

土屋:リアルで「ボケて」が行われたんだ(笑)。何人位来たんですか。

和田:20人くらいですかね。オフ会は、アンダーグラウンドの4年間に何度かやりました。あと本も出てます。

土屋:あ、コンビニで売ってましたね。

和田:最初がコンビニ本で、その後に単行本が第3弾まで出ました。

土屋:シリーズで出るってことは、結構人気だったわけですよね。その4年の間にもコアなファンがいたんですね。

和田:そうですね。ユーザーが少ないから面白くないかっていうと、全然そんなことなくて。続けていくことで、どんどん面白くなっていく。CGMみたいなサービスは、長い目で見た方がいいと思います。

土屋:ユーザーが増えて、コアなユーザーによる純度の高いボケが、薄まるような現象はありましたか。

和田:質が落ちるようなことはないけど、質が変わったっていうのはあったと思います。モバイルのアプリが出てから、見てくれる人がお子さんとか学生さんが増えたので、どうしてもアニメやマンガの絵にボケるっていうパターンが増えました。

土屋:前はもうちょっとブラックな感じというか…。

和田:今と比べると、ややシュールな感じがありましたね。

「ボケて」は笑いと癒やしをもたらすサービス

土屋:ボケを投稿する人って、なんか深夜ラジオのハガキ職人みたいな感じがありますけど、そこから有名になった人とか、実は有名な人が投稿していることってあるんですか。

和田:実はコピーライターさんが投稿しているという話は聞いたことがあります。あとはお笑い芸人さんがガンバってるとか。

土屋:腕試し的な感じもあるんですね。

和田:お題を出すのも面白くて、ボケがたくさん付くと、レスを返してもらえるみたいでうれしいんですよ。ただ、やっぱりセンスが必要で、僕が出したお題には全然ボケが付かないのに、隣の席の女の子が出した「ただ、甘エビを撮っただけの写真」にたくさんボケがついたり。

土屋:お題を出す人と、ボケる人は別なんですか。

和田:ルール的には自分でお題を出して自分でボケてもいいんですけど、ある程度は分かれていますね。

土屋:「ボケて」って、ずっと見ていると、何か面白いボケを考えたり、ネタを提供するなり、なんとかして仲間に入りたい気分になってくる(笑)。

和田:「ボケて」は「笑い」をめざしていたんですけど、最近では「まてよ、笑いだけじゃなくて癒やしっていうのもあるんじゃないか」って鎌田と話していて。内部的には、「「ボケて」は笑いと癒やしをもたらすサービスです」っていう標語があります。

土屋:分かります。ちょっと悲しいことがあったときに、「ボケて」見ると問答無用に笑えるし。

和田:以前就活セミナーで少しお話をさせていただいたことがあって、その時に女の子が近づいてきて「「ボケて」大好きです!」って言うんですよ。話を聞くと、「「ボケて」を知ったきっかけは、私が失恋して泣いてばかりいたら、友だちが面白い画像を送ってくれて、それが「ボケて」だったんです」って。その話を聞いた時すごくうれしかったですね。

土屋:あぁ、それは良い話だなあ…。

和田:「ボケて」をやっていて、その時が一番うれしかったかもしれない。

人が笑いを求めるのは23時

土屋:今後「ボケて」をどうしていきたいですか。

和田:やってみたいのは、世界ですね。

土屋:「ボケて」世界展開!

和田:これは本当にやりたいんですよ。アメリカ人は何で笑うのか、中国人は? 韓国人は? フランス人は? って。民族学じゃないですけど、知りたいと思っています。

土屋:たしかに。世界各国の「殿堂入りボケ」を並べて見てみたいかも。

和田:各国対応は一緒のサイトでやるとグチャグチャになりそうだから、アメリカだったらアメリカ用って、箱を変えて作るのがいいかなと思っています。

土屋:確かに、単純に言葉の違い以外にも文化ごとに求められる機能の違いとかもありそうですよね。

和田:そうですね。今はログイン認証は独自のものにしてますが、世界で展開するのであれば、ログインの鍵としてフェイスブックを使うのは必須かなとは思ってます。

土屋:いろいろな国の人たちがあのフレームでどんなネタをつくるのか、ホント気になりますね。早く見てみたいなあ。

和田:まだ調査の段階ですけど、準備は始めていて、形になるのは1年くらい後位かなと思っています。

土屋:海外に「ボケて」みたいなサービスってあるんですか?

和田:面白画像系だったらありますね。9GAGとか。

土屋:あー、面白画像サイトは昔からありますね。でも大喜利みたいなのってやっぱり見ないですね。

和田:「ボケて」ができるまで、「ウェブネイティブな笑い」って無かったと思っていて。例えばテレビで作られた笑いをユーチューブに載せるっていうのはあったけど、ウェブ独自に笑いが生まれるプラットフォームって無かった。「ボケて」でまさにウェブネイティブな笑いが生まれるプラットフォームが作れたと思ってます。

土屋:確かにそうですね。すでにある画像や動画にコメントを付けるっていうことだと、『ニコニコ動画』は近いけど、むしろ動画に「みんなでツッコむ」みたいな感じですよね。

和田:そうだね。似てるけど違う。

土屋:「ボケて」の場合、お題とボケっていう一対一の関係が保たれているから面白いんですよね。ところで、「ボケて」の殿堂入りって、最近のものだけを表示しているんですか。

和田:そうです。殿堂入りの計算ロジックは1年以内のボケが対象になっているので、埋もれてしまった過去の名作がたくさんあるんですよ。それをどうやって掘り出して見せるかを、今検討しています。

土屋:こういう切れ味良く笑えるコンテンツって古くならないから、過去のコンテンツを埋もれさせずにどう見せていくかって大事ですよね。常に最新のものが一番面白いというわけではないし。

和田:過去のデータを集めて『ボケてクロニクル』を作るべきかもと思っていて。

土屋:『ボケてクロニクル』! 時事ネタも多いから、2014年の7月はこの画像でみんなボケてたな、とか、人気だった画像が時系列で見れたりしたら、確かに面白そう。

和田:今データを蓄積して解析する仕組みを作っていて、うまくいけば面白い情報が取れそうなんです。例えば、ボケが評価されやすい時間が分かってきたりする。そうすると、コラボする企業にコンサルができる。

土屋:なるほど。人はいつ笑いを求めているのか分かるかもしれない。

和田:PVから見ると、人が笑いを求めるのは23時ですね。

土屋:23時!?

和田:平日と休日のPVの差がはっきりと分かれていて、平日は昼12時に伸びるんです。お昼休みに見ているんですね。休日のお昼はなだらかで差が見えない。でも23時は平日休日関係なく伸びます。

土屋:23時って、かつての「テレホタイム」(※)を思い出しちゃいますね。23時くらいからチャットルームがにぎわい始めるあの感じ。常時接続があたりまえになって、かつスマホアプリが出てもやっぱりホットなのはいまだに23時なんですね。

※テレホタイム:かつてインターネットへの接続方法が電話回線主体だった頃に流行した「テレホーダイ」サービスにおいて、通信料金が定額になる夜23時~朝8時の時間帯を指す。

 

和田:23時っていうのは、たぶん寝る前にスマホで見ているんだと思いますよ。

土屋:なるほど!

最近は月に1回のポッドキャストが楽しい

土屋:今インターネットで気になる動きはありますか。

和田:最近みんなSNSで記事をシェアするじゃないですか。あれって、やけに意識の高い価値を強要されているような感じがして、あまり好きじゃないんです。

土屋:確かに僕も「仕事に疲れたときに読む10の言葉」みたいなのシェアされるより、むしろ「今日このCD買ってよかった」みたいな生の声の方が好きですね。

和田:シェアばかりで、オリジナルのコンテンツが少なくなってきているのは気になるところです。逆に、最近楽しいのは、僕と鎌田で、月に1回ポッドキャストをやっていて、これが結構楽しいんです。

土屋:今、あえてポッドキャスト!

和田:聞いている人がいることを意識しながら、2人の近況を伝え合ったり、くだらない話をしたり、それがすごく面白い。

土屋:おしゃべりを配信するなら、Ustreamとかニコニコ生放送とかもあるけど、なぜポッドキャストなんですか。

和田:大きな理由は、ポストプロダクションがあることですね。僕は音響のプロじゃないんで勘で音を整えている感じですけど、そこからMP3にしてサーバーに置いて…、っていう段階を踏んでいると、一つの作品を作った感じがあるんですよ。

土屋:「完パケる」感覚。

和田:そうそう。しかもウェブとRSSがあって、そこにMP3がリンクされていれば誰でも配信できるっていう仕組みが面白い。自分で音源を作って、ディストリビューションまで全部自分でやるところが、インディペンデントな気分で楽しいんですよ。

土屋:同人誌作る感じと似てるのかな。

和田:多分それに近いんじゃないかな。プラットフォームに依存しないで、全部自分でやる感じが面白い。

土屋:ブログだとキーワードで検索できるけど、ポッドキャストの中身って音声だから、今のところ検索できないですよね。だから後から検索しにくくて、一期一会なんですよね。そういう、はかないところが良いなと思ったりします。

和田:そうそう、僕らも検索できないはかなさが良いって思ってる。

コミュニケーションの画像化

土屋:この連載でさまざまなインターネットに精通している方々と対談させていただいてきたわけですけど、なんとなく「スローインターネット」な気分になってきてる方が多い印象を受けるんですよ。「あえてツイッターやフェイスブックじゃなくて、ブログが面白い」とか和田君の「ポッドキャストが面白い」っていう話とか。みんな「グーグルで検索できない向こう側」に行こうとしている感じがすごく面白いなと思ってます。

和田:それでいうと、ヘルスケア系のアプリなんかで、体重を計るとその情報がクラウドに行って、でも僕だけしか見られないっていう仕組みがあるじゃないですか。今ってなんでもシェアする流れがある一方で、ネット上にはあがるんだけど自分だけしか見れないというアプローチも出てきて、それって面白い傾向かなと思ってます。

土屋:ライフログはライフログでよくて、それを無理にソーシャルにする必要もないし。ヘルスケアのアプリから、あなたと同じ血圧の友達はこの人ですとか言われても困る(笑)。

和田:そりゃあ困るね(笑)。

土屋:ちょっと話変わっちゃうんですが、最近フェイスブックのメッセンジャーアプリで、「いいね」ボタンを長押しすると、押した長さだけスタンプの大きさが大きくなるっていう機能がついたじゃないですか、あれはちょっと未来を感じたんですよ。

和田:あのUIでやるっていうのは面白いよね。

土屋:例えばクリックする強さとか、画面をタップする強さって考え方は今までになかったんだけど、この仕組みだと、「いいね」ボタンを押す「強さ」が伝えられますよね。簡単な工夫だけど、今までよりもぐっとこのボタンだけで伝わる情報量が多くなっている。

和田:LINEのスタンプもそうだけど、どんどんコミュニケーションの画像化が進んでいくっていうのはあるんでしょうね。

土屋:スタンプって、画像でコミュニケーションの速度を上げるためのものですよね。スタンプにさらに文字で補足すると伝えられる情報量の幅が広がるので、スタンプとコメントを組み合わせて送るみたいな、画像とテキストがミックスされたコミュニケーションが今後増えていく予感はありますよね。それこそ「ボケて」的な感じ。

和田:それ、ぜひとも「ボケて」でやりたいですね。今でも「ボケて」のアプリには、ボケ、つまり写真とテキストをスタンプっぽい画像にして保存するっていう機能があって。次のバージョンでは、その画像をLINEに直接送れるようにする予定です。この前「ボケて」が、フェイスブックとツイッターとLINEでどれだけシェアされているかカウントしたら、みんなLINEに送っていることが分かったので。

土屋:SNSにシェアするんじゃなくて、メッセージとしてあくまで個人的に送ってたりしてるんですね。あるいは、グループで面白ネタを集めるような感じで使ってるとか。

和田:そう。インターネットっていう技術を使って、広くつながるのではなくて、クローズドな人たちと情報を共有する、いわばインターネット的じゃないことをしている人たちがいる。そういう、僕らの知らないところで何かが動いている可能性って、すごくあると思う。

土屋:そう、僕らがパソコンで見ている「ウェブ」が、インターネットの全てではないんですよね。そういう今まで知らなかったようなところに「ボケて」のコンテンツがシェアされて、「ボケて」に流れてくる人がいる。そういう流れって、これから増えていくんでしょうね。

今日はありがとうございました。「ボケて」の世界展開楽しみにしています!

プロフィール

  • 765 large pr
    和田 裕介
    株式会社オモロキ

    慶応義塾大学政策メディア研究科修了。2003年情報処理推進機構(IPA)未踏ソフトウェア開発事業「未踏ユース」採択、「未踏ユース」準スーパークリエーター認定。学生時にACM SIGGRAPH Emerging Technologies採択。プロジェクトのリーダーを務める。現在は、株式会社ワディット代表取締役、株式会社オモロキ最高技術責任者。ウェブサービスを主戦場として、小粒なWebサービスをいくつも開発。
    オモロキでは「ボケて」のファウンダーとしてバックエンドの開発を全て担当。カンファレンスなどの発表も多数あり、YAPC::Asia2012及び2013では60個上のトークセッション中、ベストトーク賞1位を2年連続で獲得した。著書に『Webサービスのつくり方~「新しい」を生み出すための33のエッセイ』(技術評論社)などがある。

  • Portrait
    土屋 泰洋
    株式会社電通 CDC

    1981年神奈川県生まれ。広告制作プロダクション勤務を経て、2006年より電通 関西支社、2012年より本社コミュニケーション・デザイン・センター 次世代コミュニケーション開発部に所属。新規事業開発やデジタル技術を利用した広告企画に従事。東京インタラクティブアドアワード金賞、スパイクスアジアシルバー、Yahooインターネットクリエイティブアワード特別賞など受賞歴多数。

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