ICT×教育 #04

帰ってきた「エデュカッション」

  • Sekijima n2
    関島 章江
    株式会社電通国際情報サービス(ISID)

今回は、教育現場でのICT活用について考える「エデュカッション」という取り組みを紹介します。「エデュカッション」とは、エデュケーションとディスカッションを組み合わせた造語です。2011年11月、学習塾向けの月刊誌を発行する株式会社私塾界と、私たち電通国際情報サービス・オープンイノベーション研究所(ISID・イノラボ)が協働して、第1回のエデュカッションを開催しました。主な参加者は、学習塾の講師、教材出版社の編集者、教育関連企業の関係者など。開催当日は、ICT活用の現状やデジタル著作権の取り扱いなどについて、熱い議論が交わされました。

当時はまだ学校でのICT活用が進んでいるとはいえず、学校の先生方をお招きすることができませんでした。ところが、あれから約3年。塾だけでなく学校にもICTの利活用が広まり、タブレットやSNSの導入によって大幅に学習効率をアップさせる学校が現れ始めたのです。
「これを機に学校の先生もお招きして、久々にエデュカッションを開催したい!」
そう思い立って実施したのが、2014年10月の「帰ってくるエデュカッション」。通算5回目、約3年ぶりにエデュカッションを行いました。

エデュカッションの目的は、「横のつながりをつくる」こと。

私たちがエデュカッションを立ち上げたきっかけは、教育現場に“横のつながり”が必要だと感じたこと。当時の教育現場には「自分たちの持っているノウハウを口外してはいけない」「同業他社と交流してはいけない」という暗黙のルールのようなものがあり、例えば塾の経営者同士、教材出版社の編集者同士が、教育について語り合うような場面は、あまり見られませんでした。
ところが、教育関係者一人一人と話をしてみて、大多数の方が「もっと同業者と情報を分かち合いたい」「どんな成功事例・失敗事例があり、取り組みが進んでいるのか学びたい」と思っていらっしゃることが分かったのです。

そもそもイノラボは、企業や個人が持つテクノロジーを組み合わせ、コラボレーションによってイノベーションを巻き起こすことを目指してつくられた組織です。これまでにも、ITとテレビの力を組み合わせ地域限定の動画番組を配信する「potaVee」や、ソニーの顔画像認証機能を使った“笑顔を貯めるミラーサイネージ”「エミタメ」など、さまざまな新サービスを開発してきました。
「コラボを得意とする私たちが率先して、まずは横のつながりを生む“場”をつくらなければ!」、そんな思いで、2011年、エデュカッションを企画。同年11~12月、「デジタル教材の著作権管理」「学習管理と学習意欲の向上について」など4つのテーマを設け、4回、エデュカッションを行いました。

学校教師が真剣に、ICT教育について考えはじめた

2012~13年は、一部の教育関係者が静かにICT教育を推進するための準備を行う、いわば“地ならし期”のようなものでした。特に大きな動きが興るわけでもなく、変化が訪れるわけでもなく…。こうした流れに伴って、エデュカッションも、ひとまず休止することになりました。
変化が訪れたのは、2013年の半ば頃のこと。エデュカッションの参加メンバーだった俊英館の小池 幸司氏が、日本のICT教育を牽引する組織「iTeachers」を立ち上げたのです。また、いち早くタブレット端末やデジタル教材を取り入れた学校が、少しずつ、その取り組みや成果を外部に発信するようになりました。

こうした動きが一気に加速したのが、2014年です。ICT教育の導入・運用に成功した学校が積極的に勉強会や公開授業を開くようになり、キーパーソンとなった先生がスターティーチャーとして注目されるようになりました。スターティーチャーの講演は常に盛況で、やがて先生の講演先なら全国どこへでもついていく、一種のファンのような人々がまで現れるように。「学校教育の現場で、ICTを活用したい!」と考える先生が、爆発的に増加しました。

一方で、主に若い先生方から「いざ自分がやろうと思うと、なかなかうまくいかない」「どうやって上層部を説得したらいいか分からない」という困惑の声が聞こえてくるようになりました。ちょうどそのとき、ICT教育の先駆者である多摩市立愛和小学校の松田孝校長から、“教師自らがデジタル教材を作るARコンテンツ開発プロジェクト”を進めたいという声があがり、「だったら松田先生の呼びかけで、若い先生を集めたエデュカッションをやってはどうだろう」という話になったのです。
憧れのスターティーチャーをただ眺めているだけでなく、ICT教育の導入を目指して行動してほしい。そのために、同じような悩みを持ち現場で頑張る若手の先生が、自由に討論できる場を設けたい。みんなで知恵を出し合い、全員で一歩進む、そんなコミュニティーをつくりたいと思い、2014年10月に、エデュカッションを再開しました。

学校を取り巻くICT教育は、今、大きく変わろうとしています。私たちのようなコンソーシアムや教育関連企業、そして、教育とは直接関係のない一般企業まで…。これからは、さまざまな団体がノウハウを持ち寄り、学校をサポートすることが必要になってくると思います。

プロフィール

  • Sekijima n2
    関島 章江
    株式会社電通国際情報サービス(ISID)

    オープンイノベーション研究所シニアコンサルタント。基幹・業務系システム構築や運用に従事しつつ、教育問題に関心を持つ。社内公募によるビジネス企画案が採用され、2011年からICTを活用した教育関連のビジネス開発に取り組んでいる。さまざまな企業や教育関係者、保護者グループらとコラボレーションや実証実験を行い、幅広い人脈を有する。国内外の教育ICT事情について広範なサーベイも行っている。1男1女の母。

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