通販王国発! マーケティング新発見! #06

通販的コミュニケーションデザイン論①

  • Shono pr02
    庄野 秀和
    株式会社電通九州 CP局ダイレクトマーケティング部 部長
 

通販王国、九州へようこそ!
これまでの販売の現場から、消費者の購買心理は、
実は商品カテゴリーによって異なることを実感してきました。
今回のコラムでは、商品と消費者の関係性から発想するダイレクトコミュニケーションの
極意とは?について読み解いてみたいと思います。

■ダイレクトマーケティングは終わりのない実験的心理学

消費者の購買行動を、直接に、リアルタイムに、そして正確に把握する。このようなダイレクトマーケティングの特徴を通じ、私たちは実際の購買心理について結果から仮説を逆算するプランニング手法を知らず知らずのうちに身につけてきました。反応結果(=一つ一つの行動心理)に悩み、そしてひらめき、販促施策に反映させる、言わば“ぐるぐる繰り返しをする”ことで血と汗と涙の結晶である、「うまくいくコツ」を体得してきたわけです。今回から筆者を交代し、売れるダイレクト広告に導くためのコミュニケーションデザイン全般に目を向けていきます。消費者と商品との関係性の中から生まれてくるコミュニケーション設計のあり方について、これまでに得てきたヒントや法則性の一端をご紹介したいと思います。

■通販の購買動機をマズローで理解する

かの有名な米国の心理学者、アブラハム・マズローは人間の基本的欲求を5段階に分け理論化しました。その「欲求段階説」をダイレクトマーケティング・バージョンで考えてみましょう。商材カテゴリーは単品通販でよく登場する、「食品・地方産品(以下食品)」「化粧品」「健康食品」を取り上げます。

Tsuhan1 食品を購入検討する際に、重要な動機は何でしょうか?
当たり前で恐縮ですが、もちろん、本能的な「食べたい」という欲求です。「欲求段階説」でいうところの生理的欲求である食欲に起因する購買動機が見えてきます。普段の通販広告では有効な共感を求めるコピー・テキストの重要性は相対的に低く、重視すべきはいかに「垂涎率」を上げられるか。つまり官能的な訴求がポイントになります。
一方、化粧品の場合の本質的な動機は、どうでしょうか。

“キレイになる→モテたい”といった“生理的欲求”が潜在的には存在すると考えられるのですが、それだけを訴求しても卑近なお話で終わってしまい、広告の受容性に乏しい結果になってしまいます。その解決のため、私たちは「キレイになる=モテたい」の生理的欲求に加え、“愛されたい”や“生き生きした人と思われたい”という承認欲求、また自分自身で“自信が持てる”という自己実現欲求にフォーカスを当ててメッセージします。これは承認欲求や自己実現欲求などの社会的欲求に向け、「購買欲求の拡張化を図る」ということに他なりません。事例でお話しすると「自身の肌の悩みを解消し、理想的な自分、あの頃の(ステキな)自分に戻りたい」であったり、「キレイになると自信が持てて仕事や家庭でも全てを楽しむことができる」などに醸成されます。

また健康食品については、基本動機としては食品同様、生理的欲求が大きく関係します。健康食品はあくまで食品ですので、訴求効能の表現に規制を受けますが、訴求の方向性としては“痛み”“だるさ”“疲れ”など生理的な不自由を解消したい欲求が中心に据えられます。われわれの中ではこれを特に、「ネガティブをポジティブに転換する行為」と捉えています。さらに化粧品同様、「購買欲求の拡張化」も考えられ、例えば「足の痛みから解放されて孫と公園で遊びたい」や「元気に趣味に打ち込み、仲間と楽しい時間を過ごしたい」など拡張欲求を描き、消費者の共感醸成を図るのです。

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■商品カテゴリーによってメディアプランは異なる

ではそれら商品カテゴリーごとに異なる購買動機をどのようにメディアプランすればよいのでしょうか?
食品や健康食品、そして化粧品。これらの商材の購買ターゲットは基本的には同じような年代となることが多く、メディアプランでの訴求ターゲットも性年代など基本属性上、同じとなります。「媒体接触量やコンタクトポイントそのものが変わらないのならば、媒体プランも変わらないでしょ?」と聞かれることがあるのですが…

答えは「NO」です。

 

データを見てみましょう。「食品・飲料・酒類」「健康食品・ダイエット食品」や「化粧品」の各媒体での接触率について、標準偏差を算定し比較データとしました。

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d-campX(電通2014) より

ご覧のように、食品、健康食品、化粧品では接触している媒体に濃淡があることが分かります。
なぜこのような結果となっているのでしょうか?

これは前述の購買動機に関連していそうです。

食品は、生理的欲求に訴えかけることを基本とすべきで、ならば当然、高次な欲求レベルまで満たす必要はありません。食欲を含む生理的欲求については、非言語(ノンバーバル)コミュニケーションが有効なことも知られています。よって実際の媒体選定においては紙媒体やインターネット、しかもネットでも動画コンテンツではなく、静止画コンテンツでもある程度の反応を得られる結果が出ているケースが少なくありません。
しかし、健康食品や化粧品の訴求には、生理欲求にとどまらず、さまざまなレベルの欲求(拡張欲求)を呼び起こすことが不可欠です。そのメッセージの組み立ては複雑に絡み合い、そして訴求の手順を間違えないようにして消費者心理に訴えかける必要があります。そのように複雑かつ複層的なコミュニケーションにおいては非言語だけでは伝え切れないことが多いのです。このような場合はテレビのような、人の機微に触れるような情報をデリバリーできる媒体によるシナリオテリングによって対応します。

今回のコラムでは、①媒体ごとに購買心理へのアプローチが異なること、②商品カテゴリーごとの購買欲求のレベルが違うこと 、をお伝えしました。
ただ「言うは易し、行うは難し」です。「偉そうなことを言っている割にうちの広告反応、どうよ?」とお得意さんから叱責を受けそうですが…(笑)。全てはぐるぐるPDCAです。また新たな発見があれば、ぜひ私にもご教示頂きたいと思います。さて次回も、消費者と商品の関係性に注目し、消費者に課題解決をもたらす商品選択について考えてみたいと思います。

プロフィール

  • Shono pr02
    庄野 秀和
    株式会社電通九州 CP局ダイレクトマーケティング部 部長

    自動車会社を経て1995年電通九州入社。
    3年間の営業担当の後、マーケティングプランナーへ。
    一般広告主のコミュニケーションプランニング業務をベースとしていたが、いつの間にかダイレクトマーケティング業務専任に。業務キャリアは15年あまり。
    主要通販企業のPDCA推進はもとより、ブランドコミュニケーション、さらには零細企業のスタートアップ支援まで、幅広いマーケティング課題に応えることを信条としている。

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