Communication Shiftについての往復書簡 #04

川村真司(PARTY)⇔並河進(電通ビジネス・クリエーション・センター)

  • Kawamura
    川村 真司
    クリエーティブ・ラボPARTY クリエーティブ・ディレクター/ファウンダー
  • 30
    並河 進
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター ソーシャルデザイナー/クリエーティブ・ディレクター/コピーライター

広告には、広告づくりというスキルには、広告という仕事に関わる僕らには、どんな可能性があるのか。
僕が昨年出版した『Communication Shift 「モノを売る」から「社会をよくする」コミュニケーションへ』(羽鳥書店)は、そんな問いかけです。
だから、この問いかけを、この本を読んだ人にも投げかけてみたい。そして、たぶん僕とは違う、その答えを教えてほしい。
この本を僕からの手紙とともに、ある人に渡し、また、その人から手紙をいただく、この往復書簡の連載は、そんな想いからはじまりました。
手紙とは不思議なもので、気をつけないと、深夜書いた手紙のように、文章の熱ばかりが高くなって、読者との温度差ができてしまう、という危険性があるのですが、そういうことをまったく考えずに続けてきて、はや4回目。
4回目は、僕と対照的な人に手紙を送ることにしました。

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クールで、ストイックで、僕とは性格も仕事のしかたも全然違うけれど、僕がもっとも尊敬するクリエーターのひとりである、PARTYの川村真司さんです。
2013年にいっしょに仕事をさせていただき、その頃は毎日のようにいっしょにいたのに、でも、その年に、川村さんがN.Y.に拠点を移して、それから会うことができずにいたので、海を越えて、手紙を送ってみたくなったのです。

 
 

川村さま

N.Y.での日々はどうですか?

手紙、ということもあり、久しぶり、ということもあり、ずっといっしょにいた2013年の熱い日々を思い出すにつれ、ついつい熱い文章になりそうになるのですが、こうした「熱い想い」みたいなものは、そういえば川村さんは苦手でしたね。

川村さんはいつも、「作り手の気持ち」なんてあいまいなものよりも、「ほんとうにイノベーティブかつクオリティの高いものかどうか」だけを見ている。自分がつくるものに対しても、人がつくるものに対しても。

川村さんのそうした残酷なまでの純粋さを見るたび、つくった人の気持ちとか、その人と自分との関係性とか、そういうフィルターをかけて、クリエーティブを見てしまっている自分の不純さを感じていたりもしました。

川村さんとダブルクリエーティブディレクターというかたちで、お仕事をさせていただいたのは、トヨタ・エスティマハイブリッドのドリームリレー・ムービーという企画でした。

エスティマハイブリッドは、子どもたちの創造力を応援するクルマ。だったら、子どもたちの創造力をほんとうにかたちにするプロジェクトをしよう。
脚本を全国の子どもたちが書いて、それを大人の映像制作チームがつぎつぎ映像化し、最終的には一本の映画になる。そんな前代未聞のプロジェクトを半年以上かけて、実現しました。(振り返って考えてみると、こんな企画を「やろう!」と決めてくれたプロジェクトリーダーのトヨタの片岡史憲さんはすごい人です)

これからの広告は、クリエーターと名乗る人だけがつくるのではなく、世の中の人々と「いっしょにつくる」。広告はそういう「みんなの場所」になる。
そういうことをしたいと、ずっと願っていた僕と、ソーシャルソーシングと呼ばれるような、参加型のクリエーティブ制作の実験を続けてきた川村さんが出会って生まれた、ある種必然的なプロジェクトでもありました。

川村さんは、誰に対しても、半年間、一切手抜きなし。小学生の子どもたちにも本気でぶつかっていきました。
子どもたちに、より自由に、想像力を解き放った破天荒な企画を考えさせるために、ワークショップの方法論をひたすら試行錯誤する。
子どもたちのストーリーが破天荒だからこそ、大人のディレクターたちには、それをクオリティの高い映像に定着することをひたすら求める。

表現至上主義の川村さんと、概念至上主義の僕。
厳しい川村さんと、甘い僕。
水と油。
でも、不思議と、とても楽しかった。

一度、出張で金沢に行ったときに、チームのみんなでいっしょに風呂に入って、そのときに、「いいチームだなあ」って、川村さんが本当にうれしそうにしていたのを覚えています。

でも、川村さんはすぐに日本を出ていってしまった。

厳しすぎるんですよ、自分にも。
日本にいれば楽しいのに、それじゃきっとだめだと思ってる。

『Communication Shift』の本の中にも書いたんですが、僕も、ずっと戦ってきました。

ある商品があったときに、「この商品いいでしょ」と伝えるよりも、「ほんとうに社会のためになる活動」をすることでほんとうにいい商品だと思ってもらえる。そういうことが広告の新しい形として認められるようにしたい、と考えて、四苦八苦して、いろんなプロジェクトを立ち上げてきました。

川村さんは、何と戦っているんですか。
何と戦うために、N.Y.に行ったんですか。
(ここまで書いて、そうか僕は、これを聞きたくて、手紙を書きたいと思ったんだと、やっと気づきました)

返信、楽しみにしています。

2014.11.19 並河進

   

 

   
 

並河さま

熱い想いは全然苦手ではないですよ!
僕の作る表現とディレクションの仕方がロジカルで温度が低いからそう思われがちなのも判ります(笑)。元々体育会系で根が熱すぎるから、自分では敢えて押さえているのです。
ただ本当に新しいものを作るためには時に冷酷で厳しくなれるのは事実ですが。でもそれは周りだけじゃなくて自分に対してもそうなんです。並河さんも書かれてましたが、多分自分自身に対してが一番厳しいんじゃないかな。

ドリームリレー・ムービーは本当に楽しいプロジェクトでしたね!子供の想像力のパワーは本当に想像以上でした…。子供が真剣だから、大人の僕らも真剣勝負でぶつからないといけないと思って、120%で取り組んでいた気がします。
そして並河さんと僕は、水と油だからこそ、ダブルクリエーティブディレクターがうまくいったのだと思います。僕が苦手な部分を並河さんが埋めてくれて、並河さんが苦手な部分を僕が補う。それって理想的な仕事の仕方ですよね。その関係がチーム全体に広まって、とても良いリズムが生まれた。そういう輪を作る力は並河さんは本当に強いなと思いました。また何かご一緒したいですねー!

さて、僕がなにと戦っているか、なぜNYに行ったのかという質問ですが…

一言でいうと、クリエーティブの可能性を広げるために戦っているんだと思います。おっしゃるように日本にいれば楽しいのですが、どうしても居心地が良過ぎて日本という小さい枠の中に閉じこもってしまう。コミュニケーションをデザインするのを生業にしているならば、その本質はより多くの人の心を動かすことにあるわけで、それをするためにはやはり世界を相手にモノ作りをしていかないといけないと思うのです。
日本のお茶の間に受ければ、日本の広告としての意義は全うしますが、それじゃ面白くない。また、今のクリエーティブビジネスや僕らが身を置くこの業界のあり方が、本当に面白かったり人の役に立つものを作るためのシステムには必ずしもなっていなくって、並河さんが提唱されているCommunication Shiftを起こすためにはその枠組みから変えていかないといけないんじゃないかと感じているのです。

例えば「クリエーティブ」という考え方は広告という枠の中だけで必要とされている訳ではなくて、アイデアやデザインの力というのは世にあるサービスやプロダクトの根幹だったりします。ならば自分たちでそういった新しいインフラやプロダクトやサービスを考えて提案し実現させたり、ビジネスの現場で足りていないクリエーティビティを経営者の横でクリエーティブ・ディレクターとして足していくこともできるはず。
するともっと世の中に面白いものが実現できるようになるし、「広告」という傘の下で守られながらそのシステムにのっとった限界に挑戦をするんじゃなくて、そのシステム自体を一度ぶち壊したりその外にでたりして、小さくてもいいから本当に面白かったり有用だったりするものを実践していく方が健康的なんじゃないかと思うんです。

自分の講演とかで“Shut up and make shit”とか良くいうんですが、それはその実践することの大切さを言っていたりします。その死ぬように大変だけど小さな小さな一歩の先に、この10年・20年先に本当に面白いものを本当につくっている人たちがちゃんと評価されて健康的に世に提案して、世界を良くしていけるようなサイクルが生まれるんじゃないかと期待しているんです。

だからこそシステムがガチガチに固まっている日本を出て、より自由で多様な価値観が渦巻く海外で勝負をしていたいと思ったんじゃないかなと思います。

この辺の話は長くなるので、また今度飲みながらでも話しましょう!

2015.1.13 川村真司

 

プロフィール

  • Kawamura
    川村 真司
    クリエーティブ・ラボPARTY クリエーティブ・ディレクター/ファウンダー

    数々のブランドのグローバルキャンペーンをはじめ、プロダクト、ミュージックビデ オの演出など活動は多岐にわたる。Creativity誌によって「世界のクリエーター50人」やFast Company誌「ビジネス界で最もクリエーティブな100人」に選出。

  • 30
    並河 進
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター ソーシャルデザイナー/クリエーティブ・ディレクター/コピーライター

    1973年生まれ。
    電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。
    社会貢献と企業をつなぐソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。「電通ギャルラボ」代表。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。上智大学大学院、東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)、『しろくまくんどうして?』(朝日新聞出版)、『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)、『Social Design 社会をちょっとよくするプロジェクトのつくりかた』(木楽舎)他。

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