「ふたりで、花そう。Happy Valentine’s Day 2015」制作の舞台裏 #02

若手クリエーターが探るデジタル表現の可能性【後編】

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    スズキ アキコ
    密林東京 フラワーアーティスト
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    多田 明日香
    株式会社電通 第1CRP局 アートディレクター
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    可児 なつみ
    株式会社電通 第1CRP局 コピーライター

2月9日(月)~15日(日)の1週間、電通は若手クリエーターとともに、都営大江戸線六本木駅のデジタルサイネージを花で彩りました。花びらが舞うと浮かび上がる花文字や、インタラクティブ企画「ふたりで、花占い」を楽しんでいただいた方も多かった様子。企画の中心となった3人のクリエーターによる座談会、後編では、具体的な撮影や設営、またデジタルサイネージの可能性について話してもらいました。

「ふたりで、花そう。Happy Valentine’s Day 2015」

電通が昨年に開発・設置した都営大江戸線六本木駅ホーム上のデジタルサイネージ「六本木ホームビジョン」で2月9日(月)~15日(日)、「ふたりで、花そう。」をテーマに電通若手クリエーターによる花を使用した映像インスタレーションと、人の動きで操作可能なシステムを活用したインタラクティブな花占いを展開。クリエーターの活躍チャンスを増やすことをミッションとする電通クリエーティブ・ディレクション・センターとOOH局との共同プロジェクトで、自社および社外の若手クリエーターとともにデジタルクリエーティブの可能性を探る目的で実施した。

テストでは花びらが飛ばず“わさわさ…”

——前編では、企画の内容が固まるまでの経緯や、バレンタイン時の企画という点に込めた思いなどをうかがいました。後編では、撮影や設営時のお話を詳しく聞いていきますが、現場で決めていく部分はけっこう多かったんですか?

多田:たくさんありましたね…!花びらがどのくらいの風ならきれいに飛ぶのか、どの程度必要か、それから花占いではどういうジェスチャーで開始するようにすればいいのかなど、試してみないとわからない部分が多かったです。花文字のアレンジメントは、そもそも撮影当日にスズキさんに現場で仕上げてもらいましたし。

風で舞い上がる花びらに使う花の本数も、1回テストをしてみて割り出して、スズキさんに市場と相談してもらいました。

スズキ:花の仕入れは、品種や色を厳密に指定すると価格が高くなる場合もあるので、市場の人に使用の仕方や予算、雰囲気などを相談しながら予算とのバランスをとっていきました。実際、テストをしたら1回につき40本は必要で。撮影当日は3回くらい行うことを考えて120本、4種類分で約500本を用意したんです。

――そんなに用意したんですね!

スズキ:でも、本番ではそんなに使わなくて済みました。当初は原寸で撮影するつもりだったのが、一回り小さく撮影したものを拡大して映し出すことになったんですよね。

撮影前の企画会議の様子。太陽企画のスタッフ陣と電通のクリエーター3人が撮影アイディアを出し合う。

――たしかに、それによってサイネージで見たときの花びらの大きさや舞い方がだいぶ変わってきますよね。花文字のアレンジメントのサイズとかも。

多田:そうなんです。1月半ばに行ったテストの段階では、原寸で撮るつもりで用意をしていましたが、とりあえずドライヤーでやってみたら花びらが飛ばなさすぎて(笑)。

スズキ:花がちょっと古かったので花びらがしおれて重くなっていたのもあるんですけど、わさわさ…と動くような感じで(笑)。

多田:これは原寸はありえない、と思いましたね。制作に入っていただいた太陽企画さんと一緒に、どう撮影するかはおおまかに打ち合わせをしていましたが、やはりやってみると全然違いました。

じゃあ実際に拡大するとどんなふうに見えるのか、テストの場で撮った映像を壁に映してみたりして。結果、少し大きく映ったほうがきれいかもね、ということになって、拡大することになりました。でも相対的にアレンジメントが小さくなるので、するとスズキさんがつくりにくくなってしまうんです。そのバランスを皆で検討しました。

また、撮影は敷き詰める花びらとアレンジメントの間にアクリル板をはさんでいるんですが、これもアクリルがいいのかガラスがいいのか、風の当て方はどうか、テスト時にいろいろと試しました。

瞬間の美しさにチームから歓声

――撮影当日は、どのような様子でしたか?

多田:それが、花が舞い上がるたびに皆から拍手が起きて。こんなに一体感がある現場は初めてでした! テストから撮影までの間に、太陽企画さんが花の飛ばし方や風の強さ、舞った花びらをどう手早く集めるかまでたくさん試してくださっていたので、すごくスムーズに進みました。

可児:普通、撮影のときは時間の制約もありますし、割と淡々と進むことが多いですが、今回は時間を忘れて楽しんでしまいました。その場でスズキさんが仕上げるアレンジメントも本当に素敵で、皆で見入っていましたね。

多田:撮影時は、スズキさんに芯になってもらったと思います。想定と違うことへの対応が必要になっても、全然動じずに「大丈夫です、なんとかします」とちゃきちゃき進めてくれたのがありがたかったです。

スズキ:そういう調整も想定していたので…。現場で合わせないとできないことも多いだろうなと思って、自分の中では8割くらいの準備をして、あとは現場で完成させるつもりで臨みました。

――今回は実施場所が駅のホームということで、現地で試せるのは実施日前日の深夜だったそうですね。どんな状況でしたか?

多田:最初にお話しした、花占いがどういうジェスチャーで始まるかといった部分は、ここでサイネージを専門とするクロマニヨンさんとも相談しながら決めていきました。最初に課題になったのはモーションキャプチャーの設置位置です。体験してくれる人の身長や、同時に駅のホームということもあって導線にも注意しながら高さや角度を決めました。

また、モーションキャプチャーはただ2人でハートをつくれば反応するわけではなく、決められたポーズをとらなければ反応しないようになっていたので、その指示の仕方も工夫が必要でした。ハートマークをつくるとき、普通はどちらの手を使うのかを何組かにやってもらったり、サイネージに映すイラストはどうするべきかなど、出来る限りたくさんの人が占いを楽しめるように設営以前にも検証を重ねて決めていきました。

実際に検証したハートマークのポーズ(左4つ)と、最終版のポーズ。

可児:イラスト以外にも、ポーズを指示するコピーはどうすればわかりやすいのかなども考えました。実際にやってみないとわからない部分が沢山あり、そういう意味ではデジタルサイネージといっても人の手をしっかり介して、受け取る人のことを想像してやらないといけないことを改めて認識できました。

――実際に企画がローンチして、行き交う人はどんな反応を示していましたか? それを受けてどんなふうに感じたかなど、教えてください。

多田:やはりお花がみえてくるので女性が多く足をとめている印象でした。あるカップルが花びらが舞ってメッセージが出てくるのをみて、次は何がでるのかを予想したり、読み上げたりして楽しそうにしていたり。中には電車が来ていても、続きが見たかったのか電車を見送って眺めてくれる人もいました。

可児:他にも、一緒に制作した太陽企画の方が、老夫婦が2人でハートをなかよくつくって占いをやっていたと教えてくれて、この案件に関わらせていただいて本当に良かったと感じました。

技術の発展でクリエーティブも進化する

――モーションキャプチャーの技術を伴うデジタルサイネージの活用という点で、どういう部分を工夫しましたか?

多田:先ほどもちょっと話に挙がりましたが、例えば花占いが始まるジェスチャーは、あまり複雑でもダメですし、たまたま前に立った赤の他人2人に反応してもダメなので、そこは気をつけました。まだ知らない技術もたくさんあるので、クロマニヨンのみなさんに相談しながら進めました。

可児:これは後半になってから感じたことなんですが、今回のようなデジタルサイネージは気軽に試せるライトなコミュニケーションだから、コピーもライトなほうが合うんだなと思いました。技術でできることによって、つくるものも変わっていくんですね。

――今後、デジタル領域がますます発展すると、クリエーティブのおもしろさも変わっていきそうですね。今回の企画を通して、どんな手応えがありましたか?

可児:実はテクノロジーを駆使したクリエーティブが苦手だったんですが、今回の企画はスズキさんのアレンジメントのような人の手を感じる作品でつくることができて、イメージががらっと変わりました。

スズキ:生花は生花の迫力がありますが、今回のような仕掛けは私の手では絶対にできないし、花に関心がない人も含めて大勢の人に見てもらう機会も貴重だと思いました。花びらを少し拡大して表示したことをとっても、遠くから見ても花びらが舞う様子が分かって、引き込まれやすいですよね。今後も積極的に、映像やデジタルサイネージに関連した仕事もしていきたいと思います。

多田:私もこれまで印刷物の仕事が中心で、デジタル領域は可児さんと同じくちょっと敬遠していたんです…(笑)。でも今回、印刷物とサイネージとの境界線が少し薄れたというか、自分の中であまり乖離しなくなったと思います。

それから、今回は撮影時に皆で思わず歓声を上げたくらい熱中したことが、本当に印象的でした。自分がかかわっていて感動するくらいのものでないと、人も動かないと思うので、軸として「自分の心が動くかどうか」をしっかり持って仕事をしていきたいです。


Special Thanks
CD渡邊哲也 (クリエーティブ・ディレクション・センター)

AD/プランナー 多田明日香 (1CRP局)
CW 可児なつみ  (1CRP局)
dir イトウガク (太陽企画)
Pr.藤崎克也 栃原啓孝 (太陽企画)
PM 長沼千春 (太陽企画)
Cam 小竹康方
Light 土井立庭
Flower Artist スズキアキコ(密林東京)
ED 小田部俊彦 (太陽企画)
デジタルサイネージ監修 安田晴彦(クロマニヨン)
特別協力 
木下一郎(クリエーティブ・ディレクション・センター センター長)、 尾島洋子・清水拓・吉行由里・岡井昭憲(OOH局)

プロフィール

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    スズキ アキコ
    密林東京 フラワーアーティスト

    1985年香川県生まれ。2008年武蔵野美術大学卒業後、大手老舗花屋に就職。退社後2013年秋に密林東京を発足。植物×アートの新たなスタイルを模索し、ウエディングや商業施設の空間作りから、撮影、アレンジメントやアクセサリーなど幅広くオーダーメイドで制作を行っている。http://mitsurintokyo.com

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    多田 明日香
    株式会社電通 第1CRP局 アートディレクター

    1986年生まれ。2010年武蔵野美術大学卒業、同年電通入社。
    アートディレクター、グラフィックデザイナーとして、広告をはじめ、ロゴデザインやパッケージなどを制作。時には撮影のための美術まで制作したりと自分で手を動かして作ることが好きです。主な受賞歴に朝日広告賞。自身の作品集『flora』 を2012年に自費出版。

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    可児 なつみ
    株式会社電通 第1CRP局 コピーライター

    1988年岐阜県生まれ。2011年に京都造形芸術大学コミュニケーションデザインコースを卒業、同年電通入社。ストラテジック・プランニング局を経て、現在コピーライター。主な受賞歴に販促会議賞。

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