日本の広告費 #02

「2014年 日本の広告費」解説―国内市場の活性化、紙とウェブの共存、そして地方創生―

  • Kitahara20028pro5
    北原 利行
    株式会社電通 電通総研・メディアイノベーション研究部 研究主幹

名目GDPとの相関が高いといわれ、今後の社会動向の指標ともなり得る「2014年 日本の広告費」が発表されました。どのようなメディアが利用されているのか、どのような業種が活性化しているのか――広告市場から捉えた現在と近未来について、電通総研の北原利行が解説します。

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総広告費が6年ぶりに6兆円を超える

2014年(1~12月)の日本の総広告費は6兆1522億円、前年比102.9%でした。総広告費が6兆円超えとなったのはリーマンショックが始まった2008年以来6年ぶりのことです。ここ3年連続プラスで推移していることを考え合わせると、広告市場に関しては緩やかではありますが成長軌道に回復したといえるでしょう(表1)。また、インターネット広告の市場が初めて1兆円を超えたことも大きな注目点です。

広告費の動向は名目GDPとの相関が強いといわれますが、名目GDPについていえば、2014年後半は大方のエコノミストの予想を超えて下がっていました。単純に考えれば、景気が上向かなければ広告費も抑えられるわけですが、広告費は大きな落ち込みを見みせることなく通年で100%を超えて推移しました。こうしたデータには、「日本国内市場を活性化したい」という、多くの企業の強い願いが表れているように思います。このように広告費の動向とは、人びとの生活や意識が反映される指標のひとつといえるでしょう。

国内市場の活性化に向けて広告市場の潮目が変わりつつある

これまで、生産拠点を海外に移す日本企業も数多くありましたが、ここにきて、国内に回帰しようという動きが注目されてきています。そうした動きの背景には、日本の市場をもう一度見直してみよう、本気で国内の消費活性化に取り組もうといった企業の強い意思が感じられます。厳しい環境の中でも着実な成長志向が感じられる「2014年 日本の広告費」からは、いま、広告市場の潮目が変わりつつあるというメッセージを受け取ることができます。

広告費の今後の見通しに関しては、名目GDPとの連動性という側面から考えると景気がいかに変わっていくかがポイントになります。過去のような大幅な伸長はないにしても、国内消費が少しずつ上向くならば、広告費も堅調に推移していくという見通しを持っています。

いま、広告の進化をリードしているのは?

■人びとの情報行動はまだまだネットに移行している
インターネット広告費(媒体費+広告制作費)の2014年推定値は前年比112.1%の1兆519億円に達し、初めて1兆円を超えました(表2)。

インターネットの広告費は、1990年代には200%以上の成長を遂げたこともありますが、現在は10%台に落ち着いています。しかし、1兆円を超える規模の市場になってもなお10%台の成長を遂げているというのは非常に大きなインパクトです。人がいるところ、人が集まるところに打つのが広告の基本ですから、インターネット広告費が堅調ということは、人びとの情報行動がいまなおネットに移行していることの裏返しでもあるといえるでしょう。

インターネットでは、当初はコンピューター系などネットと親和性の高い広告が多かったわけですが、現在ではあらゆる業種が出稿しています。また、これまではどちらかというとブランディングには適していないと考えられることもありましたが、ブランディングのために動画広告を使うようなケースも増えています。さらに、コンテンツマーケティングの手法など、顧客とよりよい関係を築き、収益に結び付く行動を起こしてもらうためにオウンドメディアを中心に情報発信する企業も増えています。

電通総研・メディアイノベーション研究部 北原利行氏

■インターネットがリードする広告の進化
インターネット広告費の中でも目立ったのが運用型広告で、前年比123.9%の5106億円と大きく伸張しました。インターネットやモバイル端末の普及によって、消費者がいつでも、どこでも、好きな時に買い物ができる環境が整いつつありますが、最近では、どのようなチャネルを通じても商品が購入できる環境を実現する「オムニチャネル戦略」が注目されています。オムニチャネルでは、マスやネットはもちろん、カタログやDM、実店舗やオンラインモール等々、あらゆるコンタクトポイントを組み合わせていくことが必要になります。また、いわゆるビッグデータをリアルタイム解析することによってサイト利用者の特性を把握し、広告の最適な配信を実現するような仕組みも登場しています。

インターネットにおける技術革新が進むのに呼応するかたちで運用型広告もどんどん高度化しており、これが広告費の増加に影響を与えています。

2015年 広告市場のキーワードは?

■日本の広告費の変化にはGDPや景気の影響が反映される
そのほか「2014年 日本の広告費」から注目されるポイントをご紹介します。媒体別の広告費を見ますと、マスコミ4媒体は前年比101.6%、インターネットは112.1%、プロモーションメディアが100.8%と、大きな分類ではすべてプラスになっています。冒頭でも触れたように、日本の広告費の変化にはGDPや景気の影響が反映されますが、こうしたデータにも景気回復基調が反映されていることが分かります(表3)。

なお、これまでマスコミ4媒体におけるテレビメディアの広告費と衛星メディア関連の広告費については別枠で扱ってきましたが、BS・CSチューナー内蔵テレビの普及などの環境変化を受け、今回からは地上波テレビと衛星メディア関連を一括して発表することしました。その結果、地上波テレビと衛星メディア関連を合わせたテレビメディア広告費は、1兆9564億円で前年比102.8%を達成しました。衛星メディア関連では、BS放送が引き続き好調で、2014年も前年比112.8%と大きく伸びました。メディア認知の高まりとともに首都圏以外からの出稿も増加しており、ラジオに匹敵するぐらいの売り上げになってきています。

プロモーションメディア広告費では、屋外広告や交通広告が堅調に伸びたほか、新たにオープンした商業施設のディスプレイ広告も増えました。また、DMやフリーペーパー・フリーマガジン、POPも好調でした。印刷需要の縮小が言われますが、一時期のような「ウェブだけでいい」といった考え方から、「ウェブにはウェブの良さがあり、紙には紙の良さがある」ということで両者を使い分けたり、組み合わせたりする傾向が見えてきています。

■2015年のキーワードは「地方」!?
プロモーションメディア系でもうひとつ注目すべき動きが「地方」です。広島県の公式フリーマガジン「泣ける!広島県 究極のガイドブック」が話題を集めたように、地方ではフリーマガジンとウェブの連動などの出稿量が増加しており、屋外広告板の需要も高まっています。

「地方創生」が政権の重要課題に掲げられ、今後は各自治体がそれぞれに地域の実情に合った施策を展開することになります。たとえば外国からの観光客を誘致するには多言語対応が必要ですし、フリーWi-Fiのスポットをつくるのであればコンテンツも必要になりますから、地方における広告需要の拡大が期待されるところです。

「2014年 日本の広告費」の詳細なデータはこちら(電通プレスリリース):http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0224-003977.html

 

表1:日本経済の成長と「日本の広告費」(1985年~2014年)

表1 日本経済の成長と「日本の広告費」(1985年~2014年)

 

表2:媒体別広告費

表2 媒体別広告費

 

表3:媒体別広告費(2005年~2014年)

表3 媒体別広告費(2005年~2014年)

プロフィール

  • Kitahara20028pro5
    北原 利行
    株式会社電通 電通総研・メディアイノベーション研究部 研究主幹

    情報システム部門、経営計画部門を経て研究開発部門に所属。2011年より現職。

    マスメディアやコミュニケーションの研究、メディア企業のコンサルティング、組織人事制度コンサルティング、広告および関連市場・業界動向調査などの業務に従事。「日本の広告費」および「情報メディア白書」の担当。
    『情報イノベーター~共創社会のリーダーたち~』(共著、1999年 講談社)等、著書論文多数。東京工業大学大学院非常勤講師、立教大学大学院兼任講師、総務省研究会専門委員、経済産業省研究会専門委員、(財)知的財産研究所専門委員等を歴任、JASRAC寄付講座講師、JICA研修講師など講師・講演多数。

    地方紙を中心とした新聞社に関わるさまざまな調査、プロジェクトに従事。新聞社での講演も多数。

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