感動テクノロジーの世界 #05

「リアルなテクノロジー」を考える

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    尾崎 賢司
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 エクスペリエンス・テクノロジー部

最近、様々なテクノロジーを駆使してリアルな場に変化や演出を加えたりするお仕事に関わらせていただく機会が増えてきました。そこで、「感動テクノロジーの世界」第5回のコラムでは、現実を拡張させるテクノロジー について書いてみようと思います。

「リアルなテクノロジー」とは?

「人間の知覚は視覚が8割」だと言われています。ですが、あなたは音を消してホラーを見たことがあるでしょうか。音を出して見るときに比べて恐怖が半減するように感じます。聴覚など他の感覚もひとが受け取る印象や感情に大きく影響するのです。感動もそうだと思います。収録された野外フェスの映像を家で見るより、実際に友人と野外フェスに行って自然の中で音楽に触れたほうがずっと感動は大きい。全ての感覚が研ぎ澄まされるリアルな場からは、大きな感動が生まれると思います。

そんなリアルな場での感動に比べて、テクノロジーによる感動ってどうでしょうか。いかに精度よく映像やCGを作り上げても、リアルな場や体験にはかないません。どんなにテクノロジーで視覚や聴覚を支配できても、全感覚に訴えかけるリアルな場にはかないません。どこまでいっても、テクノロジーを介した現実は仮想(バーチャル)であり、そこでの体験は、“疑似”体験なのです。

だったらバーチャルリアリティーとそれを生み出すテクノロジーなんて必要ないのではと思われるかもしれません。いいえ、そんなことはありません。むしろ、逆です。 オキュラスリフトでの疑似的なヨーロッパ旅行体験で感動したからこそ、本当にヨーロッパに行こうと決断し、現地を訪れる。ボーカロイドのアイドルがステージ上で本物の人のような踊りを披露する演出をAR(拡張現実)で行うからこそ、ライブ会場はより一層盛り上がり、大きな感動を生む。このように、テクノロジーで生み出される感動があるからこそ、リアルな場での感動により引かれるようになったり、リアルな場での感動が何倍にもなったりすることってあると思うのです。拡張のさせ方や内容を慎重に吟味し、表現するうえでの最適なテクノロジーを選択することが大事になってきます。

「◯R」を考察してみる

「◯R」と書いて何のこと?と思われるかもしれませんが、昨今、「◯◯◯Reality」と呼ばれる形で様々なテクノロジーがあふれています。VR、AR、SRにMR。正確に記載するとVirtual Reality(仮想現実)、Augmented Reality(拡張現実)、Substitutional Reality(代替現実)、Mixed Reality(複合現実)です。これらテクノロジーについて、一つ一つ紹介していくとともに、これらテクノロジーのおかげで実現できる内容についても触れていきたいと思います。

<VR:Virtual Reality>

以前このシリーズでもご紹介したオキュラスリフトに代表されるデバイスを通して 「現実」のような環境を作り出す技術がVRで、進撃の巨人展での360°体感シアター「哮」など、だんだんとその実例が増えてきました。

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©諫山創・講談社/「進撃の巨人展」製作委員会
 

<AR:Augmented Reality>

「現実」をコンピューターにより拡張された環境へと変換する技術をARといい、スマホやタブレット上でのアプリによる活用が多く、すでに企業プロモーションや展示会など様々な場面で活用されています。

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前回のコラムでも取り上げた「LiveAR(TM)」(プレミアムエージェンシー)
リアルタイムARでCGキャラクターがモーションキャプチャースーツを着用した自分と同じ表情・動きをする。
動画はこちら: http://www.premiumagency.com/livear/
 

<SR:Substitutional  Reality>

本人に気付かれずに「現実」をあらかじめ用意したものにさしかえる(substitute)ことができる仕組みを、代替現実技術(理化学研究所HPより引用)といい 、東京ゲームショウのソニーHMZブースで公開実験が行われたのをはじめ、今も開発が進んでいます。

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過去の映像を使って、“現実”のシーンをこっそりと差し替える

<MR: Mixed Reality>

最後にMRとはキヤノンが開発した「現実」と仮想世界を融合させる技術です。ISIDなどが販売を手掛け、製品開発現場や教育現場での導入が進められています。

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MRを体験する筆者
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ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)利用者は、目の前に対象物があるかのような感覚を体験できる

 

どんな「現実」を見せたいか

前述した「◯R」のテクノロジー群で実現できる、見せることができる「現実」は下の3つに分けられると思います。

⑴    体験しようと思えばできるかもしれない「現実」

世の中には時間やお金、能力がなくて行けない、体験できない「現実」がたくさんあります。その「現実」を体験している人が世界のどこかには存在します。だからこそ憧れる、そんな「現実」を疑似的に体験することをテクノロジーがかなえてくれます。
たとえば、海外に行く時間やお金はないけれど、少しでも海外旅行を疑似体験したい方にはオキュラスリフトを活用したVRでの360°風景が考えられるでしょう。もうすぐ完成予定の自動車にいち早く試乗したい方にはMRを使った試乗体験が考えられるでしょう。

⑵    体験したくてもかなわない、ありえない「現実」

「◯R」の多くはコンピューターで作られた視覚上の産物です。今は存在しない過去の人物や想像上の生物、未開発の製品などを作り出せます。自分が生きている世界では味わえない感覚を味わうことができる、ここにはない異質の「現実」を体験することをかなえてくれるのです。
たとえば、昔その現場で起こった出来事を今起こっているかのように錯覚させながら体験したい方にはオキュラスでのSR活用が考えられるでしょう。初音ミクなどのボカロアイドルが本当に人のような動きで歌って踊るライブを開催したい方には ARの活用が考えられるでしょう。

⑶    体験を後押しする、情報が可視化された「現実」

私たちの身の回りには情報があふれていますが、視覚で認識できる情報はほんの一部です。周りの人や物の背景にある情報を可視化することで、選択肢が広がり生活や仕事がスムーズになる。そんな視認部分が広がった「現実」をテクノロジーは実現させてくれます。
救急隊員が患者の状態や病歴を瞬時に視認できれば、処置がよりスムーズになるでしょう。そんな世界をグーグルグラス活用によるARが実現させてくれるかもしれません。実際アメリカで試験導入が進んでいます。

 

いかがでしたでしょうか。おそらく、これからも技術開発が進み、「◯R」という造語と新しい見せ方や技術は創り出されることでしょう。だからこそ、見せたい「現実」はどのようなものなのか、フォーカスしたい対象は何かをしっかりと整理したうえで、いまあるテクノロジーの特徴を正確に把握し、最適な手法を選んでいきたいものです。大きな感動につながることを信じて。


 

電通エクスペリエンス・テクノロジー部は、デジタルもアナログも、さまざまなテクノロジーを掛け合わせて、今までにない感動体験(エクスペリエンス)を作り出すテクノロジー集団として活動中。
実現不可能と思われるアイデアも、テクノロジーによって実現の糸口が見つかるかもしれません。
ご意見・お問い合わせ・ご相談なんでも構いませんので、et-info@dentsu.co.jp(米山・村上宛)までお気軽にお問い合わせください。

プロフィール

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    尾崎 賢司
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 エクスペリエンス・テクノロジー部

    2010年電通入社。入社以来5年間、イベント&スペース領域の企画・制作を担当。エクスペリエンス・テクノロジー部の発足以来、ウェブやアプリの制作、キャンペーンなど担当領域を広げ、活動中。

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