加速する動画の「オムニ視聴」 #01

動画視聴に変化をもたらしたインターネット環境

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    立木 学之
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 主任研究員(2015年末時点)

激動の時代を迎えている情報メディア産業。電通総研では、多様化する情報メディアに関して、産業と利用動向の今を追い、毎年1冊の白書にまとめ続けている。このほど22冊目となる最新版『情報メディア白書2015』がダイヤモンド社から刊行された。これを記念し、同書の巻頭特集「加速する『動画のオムニ視聴』」を当連載で紹介したい。

通信の高速化と大容量化をベースにしたインターネット環境の進化やスマートフォンの普及によって広がりを見せるインターネット動画。そのコンテンツを最も消費するのが若年層といわれている。彼らは生まれながらにして整備されたインターネット環境に身を投じており、いわば〈スマートフォンネイティブ世代〉を牽引している層だ。

10年後には社会の中核を成していくこの層に着目して、インターネット動画に関するオリジナル調査結果から、加速する「動画のオムニ(※)視聴」と題して、若年層(本論では10代および20代とする)のオーディエンスインサイトを全5回で解き明かしていく。
(※)オムニとはラテン語を起源とする言葉で、遍(あまね)くという意

連載第1回は「動画視聴に変化をもたらしたインターネット環境」について分析する。

 

◆ マクロ環境の変化
~メディア環境の未来を決める重要ポイント

 

情報メディア業界がこれから進む方向とオーディエンスの動向を把握するために押さえるべき要点を図表1にまとめた。

図表1

人口減少、少子化やメディア環境の変化などのマクロ要因に加え、通信の高速化/大容量化、女性の社会進出というミクロ要因に至るまで4 点ある。これらは、日本人すべてに大なり小なり影響を及ぼす現象であり、今回のテーマを議論するに当たって欠かせないポイントである。

 

1.人口減少

 

これからの日本社会では総人口の減少と単身世帯を中心とした世帯数の増加が予想されている。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の総人口は2030年に1 億1662万人に減少するとしている。一方、総世帯数は今後増加を続けていき、2019年に5307万世帯でピークに達した後、2035年には4956万世帯にまで減少するという。人口減少や世帯数の増加という現象は、情報メディアの各領域やそれに付随する情報機器のマーケットにも大きな影響を与えることが確実視される。

 

2.女性の社会進出

 

第2次安倍内閣が掲げた新成長戦略の重要政策の一つである「女性の社会進出支援」。人口減少が引き起こす生産人口減少で、生産労働人口が不足することを補うための施策である。今後、女性の社会進出が進展していき、在宅と社会進出がトレードオフという前提に立つと相対的に外出時間が増加し、在宅時間が減少するとみられている。マクロ的には、女性を中心にしてメディア接触環境に大きな変化が生じることが予想される。

 

3.メディア環境の変化

 

ビデオリサーチのMCR(Media Contact Report)で、男女10代の自宅外時間の推移をみると、2000年の530分から2014年の575分と、この15年間で45分増加し、2014年が15年間のピークに達していることからも、若年層が自宅外にいる時間が長くなり、相対的に自宅内にいる時間が短くなっていることがわかる(図表2)。こういった中期的なマクロトレンドは、自宅内外のメディア接触に少なからず影響を与えるものといえる。なお、2011年は震災後に外出を控えるなどの行動があったためか局所的に558分と底を打っているが、その後にまた大きく伸びており、長い目で見れば自宅外で過ごす時間が増加する傾向に変わりはない。

また、2000年と2014年比較では、特に若年層におけるメディア接触時間の変化が大きい。自宅内でインターネットを利用する行動が目立ち、10代のインターネット(パソコンと携帯端末の合計)接触時間は6.6分から45.0分となっている(図表3)。自宅外でも比較的若年層でのモバイルインターネットの接触時間が1.0分から9.0分に長くなるという現象がみられる(図表4)。また、情報機器の所有状況としては、男女とも若年層においてスマートフォンのスコアが高いことも重要なポイントだ。10代から20代前半でのスマートフォン所有率では、男性よりも女性の方が高いことも注目される(図表5)。

図表2
図表3
図表4
図表5

4.通信の高速化/大容量化

 

確実性の高い計画では、無線の通信速度が、固定通信の光ファイバー並み、あるいはそれ以上に高速化するとみられており、2015年以降にはモバイルでも4 K並みクオリティのコンテンツを送受信できる環境が整備される。具体的には、通信会社が第5世代の通信規格の実験を開始しており、それらが2018年ごろを目標に市場に登場するとされている。無線通信・端末・インターネットメディアが大容量動画を含む巨大な動画流通チャネルを形成する時代がすぐ近くに来ており、オーディエンスが接するコンテンツの伝送路が「放送」なのか「通信」なのか区別しにくくなる環境が現出しつつある。

 

◆ 若年層のメイン視聴はインターネット動画になるのか

 

以上みてきたように、若年層を取り巻くメディア環境では、高い通信速度による大容量伝送路の存在、スマートフォン所有率の上昇、インターネット接触時間の増加を挙げることができた。それらを踏まえて、次回からは非常に多機能化したスマートフォンの機能の中でも「インターネット動画視聴」に着目することにする。これらのコンテンツを消費する若年層がごく一般的なオーディエンスとなる世界が今後広がっていくのか。もしそうであれば、どんな情報メディア環境が待ち受けているのだろうか。このような問題提起に対して、電通オリジナルの調査結果から若年層のインターネット動画視聴行動を、将来予想も交えながら解明していきたい。

プロフィール

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    立木 学之
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 主任研究員(2015年末時点)

    入社以来、世代研究や男性消費トレンド研究のほか話題注目商品プロジェクトなどを担当。営業局にて大手自動車会社を担当した後、電通総研にて中国市場とインド市場のインサイト開発に従事。2012年1月より「電通日本の広告費」「世界の広告費」「情報メディア白書」の制作をはじめ、各種オーディエンスインサイト構築を手がける。2016年からインターネット広告のセールスを手掛けるセクションへ異動。

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