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ジブンと社会をつなぐ教室No.8

「自分らしく働く」って結局どういうこと?(前編)

2015/04/10

学生の就職活動の悩みを広告コミュニケーションのノウハウで解決する講座「ジブンと社会をつなぐ教室プロジェクト」を書籍化した『なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか。』(発行:宣伝会議)が刊行されました。

今回は刊行記念として、著者の一人で電通若者研究部(通称:ワカモン)代表の吉田将英さん、ソニーに在職しながら新しい働き方を模索されている津田賀央さん、コピーライターを経て大学教授、作家、クリエーティブディレクターとしてマルチに活躍中の佐藤達郎さんが東京・下北沢の書店B&Bに集い、「自分らしく働く」とは何なのかを語り合いました。

 

多様な働き方を選べる時代

吉田:この本はずばりタイトルのとおり、「なぜみんな、就職活動になると同じような話ばかりするのか?」という疑問から生まれました。一人ひとりが違う人生を歩んできて、価値観もさまざまなはずなのに、エントリーシートや面接では多くの人が同じような「型」の中で自らを語り出してしまう。でも本来ならば、職種や企業の「型」に自分を合わせるのではなく、あくまでも主体は自分自身で、自分らしく働ける環境を見つけ出すべきだと思うんです。そのための実践法をこの本に書いたのですが、そもそも、「自分らしく働く」とはどういうことなのか、今回は多様な働き方を実践されているお二方といっしょに考えていきたいと思っています。まず、津田さんは現在ソニーに在籍しながら、一方で長野県富士見町のテレワークタウン計画をプロデュースしていますよね。今の働き方に至った経緯を教えてもらえますか?

津田:僕は新卒で東急エージェンシーに就職して、デジタルマーケティングやメディア・バイイングの仕事を担当していました。その後、ゲーム関連会社に出向して高校生向けの携帯サービスの立ち上げに携わったり、戻ってからはソーシャルメディアの戦略やアプリの企画開発、デジタルプロモーションなどを一通りやりました。ソニーに転職したのは、30代前半ですね。

吉田:広告代理店の仕事とメーカーの仕事に大きな違いはありました?

津田:ソニーでも戦略や企画の仕事をしているので大きくは変わらないです。ただ、ソニーはグローバル企業なので色々な国の人たちの働き方を知ることができて、たとえばスウェーデンの人なんかは1ヶ月半くらい休む。また、国内では周りのフリーランスやベンチャー企業の友人たちを見てみると、例えば屋久島や北アルプスなんかに1ヶ月行ってしまったり、場所を問わずに自由に仕事をしている友人たちもいます。そういう働き方の多様性に触れるなかで自分はどうしたいかを考えたとき、新しいワークスタイルを作って実践してみようと考えました。

吉田:それが富士見町のテレワークタウン計画につながるんですね?

津田:はい。僕は山が大好きで八ヶ岳によく行っていたので、以前からこんな自然豊かな場所で暮らせたらいいなと思っていて。そんなとき、富士見町役場のウェブサイトで空き家をオフィスとして活用する計画を知って、自分も移住したいし、その計画をプロデュースさせてほしいというメールを送った。これは、空き家を自宅兼オフィスとして1年間無料で貸し出すプロジェクトで、ちゃんと集まるか少し心配にもなったんですが、実際はWeb系スタートアップや映像制作会社から、オーガニックせっけんを作る人など、60組くらいの応募がありました。うれしかったですね。

佐藤:ネットワークを上手に活用すれば、東京にいなくても東京の仕事ができる時代ですもんね。

津田:富士見町なら東京まで2時間半ほどで行けちゃうので、たとえば1週間のうち3日は東京で働いて、残りは富士見町で働くということもできます。今後ネットワーク化がますます進めば、さらに多くの人が多様な働き方を選べるようになると思います。

 

人の役に立つことは人生の喜びだ

佐藤:私は学生の頃、働きたくなかったんですよ。ミュージシャンになりたくて、サラリーマンがみんな灰色に見えていましたから(笑)。ただ、文章を書くことは好きだったので、好きなことをやってお金をもらえるならいいかと思って、コピーライターになったんです。でも実際に働いてみると、やりようによっては社会人は決して灰色ではなく、おもしろいものだと気づきました。

吉田:どんなところにおもしろさを感じたのですか?

佐藤:仕事を通じて「誰かの役に立っている」というところです。それが実感できるようになってから、生き生きと働けるようになりました。やっぱり人の役に立つことは人生の基本であり、喜びなんだなと。感謝されるとうれしいし、リスペクトがもらえると仕事が楽しくなりますし。

吉田:人の役に立つということは、仕事を考える上でとても重要だと思います。自分の中でやりたいことがあっても、それが誰かの役に立たなければお金はもらえませんからね。大切なのはチャレンジしてみること。やってみないとそれが役に立つのかわからないし、A社では役に立たないことがB社では役に立つ場合もあるかもしれません。

津田:ソニーでおもしろいと思ったのが、通称「机の下プロジェクト」と呼んでいて、通常の業務とは別にアンオフィシャルでロボットを作ったり研究している人たちがいるんです。最近は、そういう取り組みを事業としてチャレンジできる制度もあって。やりたいことがあれば会社に縛られる必要は全くないし、やり方や交渉次第では会社のプロジェクトとして実現できる可能性もあるんです。

佐藤:今後ワークスタイルがどんどん多様化するなかで、複数の働き方を組み合わせる「モジュール型ワーキング」の選択肢もさらに広がるでしょう。私も大学教授の仕事が7割、残りの3割で本を書いたりコンサルの仕事などをしています。自分の選択肢を広げるためには、たとえ一つの会社に勤めているとしても、自分という会社を経営していると考えたほうがいいんです。吉田さんもそういうマインドじゃないでしょうか?

吉田:そのとおりですね。ワカモンプロジェクトもそうですけど、電通という環境の中で複数のチャネルを持っているという意識があります。

佐藤:もちろん、どのような働き方にもメリットとデメリットがあります。それはセットで選び取るものだと思うので、自分の中でプライオリティーをはっきりさせておく必要がありますね。

吉田:そうなんです。だからこそ、職種や企業よりもまず、自分自身と向き合う必要があるのです。では具体的にどうするのか。後編では、実際に「ジブンと社会をつなぐ教室プロジェクト」が大学のワークショップで使った「やりたいシゴト設定シート」を参照しながら、「自分らしく働く」をさらに掘り下げたいと思います。

※後編は4/17(金)に公開予定です。

こちらアドタイでもご覧いただけます。