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感動テクノロジーの世界No.6

クリエーティブデータとは何だろう?

2015/03/31

はじめに

「データは新しい石油(Data is the new oil)」というのは、ビッグデータかいわい界隈で一昔前に流行った言葉らしいのですが、なかなか意味深です。石油(データ)は大きな価値を生むが、加工しなければ役に立たない、しかも漏れたら大変。そんなメタファーだそうです。その「データ」と「クリエーティブ」の融合が急加速している昨今。カンヌライオンズにも「クリエーティブデータ」部門が新設され、データをクリエーティブにする、クリエーティブに使えるデータとは何かという議論が活発化しそうです。
今回のコラムは、クリエーティブデータの超入門編。そもそもデータサイエンティストでもない私がデータを語ることはできないのですが、「データ」をいかに加工し「クリエーティブ」な価値に変換するのか。自分なりに考えてみます。

クリエーティブデータとは?

まだ明確な定義がないのですが、まずは「デジタルクリエーティブ」と「クリエーティブデータ」を線引きしたいと思います。
数年前からインタラクティブや、AR技術を活用したりするデジタルサイネージやプロダクトの事例が注目されています。例えば2014カンヌライオンズで話題になった作品としては、“The Social Swipe”(クレジットカードでの寄付者に対し行為に、その価値を直感的な映像で寄付者にフィードバックするもの)や“Blowing in the wind”(地下鉄の風で髪がなびくシャンプーの広告)が記憶に新しいです。これらはいわばデジタル技術を使った「デジタルクリエーティブ」の事例とい言えるでしょう。

では「クリエーティブデータ」とは何か。同じく2014のカンヌから選ぶと、“Magic Of Flying”(飛行機を指差す男の子と、飛行機の便名や行き先を表示する屋外広告)他、自動車の過去の走行データから当時の走りを再現するプロジェクト等がそれにあたるでしょう。

これらに共通しているのは、データそのものをクリエーティブ表現の核にしていること。データを種にアイディアを発想するクリエーティブではなく、データそのものが持つ価値をクリエーティブ変換して提示する。そのことを優れたストーリーとエグゼキューションで実現しているからです。

「データは新しい土壌だ(Data is the new soil)」
これは2010年のTED Conferenceでデビッド•マッキャンドレス氏が語っていたことです。長年にわた渡り広拡がってきたネット上の膨大なデータは、ネットワーク接続で多くの手によって耕されてきました。その豊かなデータの土壌に、私たちはどんなアイディアを植えて、どんなエグゼキューションで育てるのか。これからのデータクリエーティブが咲かせる花に期待しています。

クリエーティブデータとテクノロジー

ここからはデータをクリエーティブに変換するために必要不可欠となる、テクノロジーの可能性について書きたいと思います。

①可視化(インフォグラフィックス/データビジュアライゼーション)

データというのは手を加えなければ一般の人には価値がないものです。データを価値ある情報として届けたり、感情を与えたりするためには、まずはデータを見えるようすることが必要です。
優れたデータの可視化というのは、膨大な情報を直感的に伝えてくれます。情報にデザインを与えることで、データの重要なパターンや関連を見えるようにすることで、意味が引き立ちストーリーが伝わります。

circosによる環状ゲノムの可視化
Krzywinski, M. et al. Circos: an Information Aesthetic for Comparative Genomics. Genome Res (2009) 19:1639-1645

②可聴化(ソニフィケーション)

ソニフィケーションとは耳慣れない言葉ですが、UIデザインなど等で使われる用語で、データを音に変換して知覚できるようにすることです。身近なものでは病院で心拍を計る電子音や、携帯電話の操作音もソニフィケーションの一種とされています。

4KVIEWING
4KVIEWING®による札幌国際芸術祭2014での展示風景
Photo: Keizo Kioku, Courtesy of Creative City Sapporo International Art Festival Executive Committee

坂本龍一 + 真鍋大度 「センシング・ストリームズ―不可視、不可聴」(第18回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞)は、人が知覚できない電磁波を「可視化」「可聴化」によって映像と音に変換するアート作品。アートの世界でもクリエーティブデータを使った作品は様々なかたちで現れています。

③体感化

「見える」データ、「聴ける」データとくれば、この先の広がりとして「香る」データや「味わえる」データの出現は、そう遠くない未来の話。すでに研究レベルでは実現しているようです。様々なテクノロジーの組み合わせによって、データをより体感的なものへと進化させていくことがクリエーティブデータの進む先なのではないかと思います。
最後に、他にもデータをより体感的な価値に変換している事例を2つご紹介します。
“さわれる検索”  
“ヤフー トレンドコースター”
(出典:ヤフージャパン)
ビットの世界とアトムの世界を結びつけたと言われる3Dプリンター。データ空間に入り込むことができるバーチャルリアリティー技術。どちらもデータを体感的に変換することをストーリー化している、クリエーティブデータの事例なのだと思います。

データとクリエーティブの未来

データの未来はまさにSFの世界。増え続けるデータは2045年にはコンピューターの能力が人類全体の能力をはる遥かに超越えるなどとい言われると少しこわい気もしますが、広告に携わる人間としてはクリエーティブデータが可能にしてくれることを常に注視していきたいと思っています。

以上、感動テクノロジー第6回コラムは「クリエーティブデータ」でお届けしました。


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