ICT×教育 #06

生徒全員がタブレット端末を使う! ICT授業・最新レポート

  • Sekijima n2
    関島 章江
    株式会社電通国際情報サービス(ISID)

私たちオープンイノベーション研究所(イノラボ)が立命館守山中学高等学校と一緒に「SNSを活用したアダプティブラーニング(適応学習)」に取り組み始めてから、早いもので8ヶ月が経過しました。中学・高校の新入生約500人、一人ひとりがタブレットを持ち、主に教育プラットフォームRICS(Ritsumeikan Intelligent Cyber Space)を活用した学習指導を展開。1年間継続して取り組んでもらうことで、少しずつではありますが変化の兆しが見えてきたなと感じています。

今回は集大成として行った「ICT公開授業」の様子についてご報告いたします。

“考えさせる仕掛け”が盛り込まれた、タブレット時代の学習システム

2015年2月21日。立命館守山中学高等学校で、「ICT公開授業」が行われました。全国から集まった約100名の教育関係者が、国語・数学・英語・理科・社会の授業が行われている5つの教室を自由に見学。身を乗り出してグループワークの内容を観察したり、生徒のすぐ隣まで行ってタブレットの中身に目を凝らしたりと、みなさんとても熱心に授業の様子を見学されていました。

イノラボが立命館守山中高と一緒に開発を進めるアダプティブラーニング用プラットフォーム・RICSが使われていたのは、数学と英語の主要2教科。数学の授業では、先生が“宿題ができなかった生徒”のフォローをしている間、できた生徒がRICSを使って個別に新たな問題を解き進める、という使われ方をしていました。また、YouTubeに過去の授業動画が公開されているところもポイントです。わからないところが出てきたら即座にRICSからリンクされている動画にジャンプして、生徒たちが自力で復習できるようになっています。

自分で考え、調べて、解答までたどり着いたら、次は答え合わせです。生徒自身がRICS上で答え合わせを行うのですが、ただ○×をつけるだけでは紙の問題集と変わりありません。そこでRICSでは、自己評価として「完璧!」「解けた!」「次は解ける」「解けない」といった4段階の感覚値を、また問題評価として「重要」「もう一度」「もう十分」「質問する」という項目を記録できるよう工夫しました。加えて、SNS機能を通じ「友達、先生に質問する」機能があるほか、解答までに要した時間も記録される仕組みになっています。

紙の問題集と大きく違うのが、“考えさせる仕掛け”が盛り込まれているところと、“記録が手軽に残せる”ところ。ただ淡々と問題を解くのではなく動画などを見ながら自力で答えを見つけることで能力が鍛えられ、また記録を残すことで、客観的に自分の力を把握できるようになるのです。蓄積された記録を振り返ることで、苦手箇所が浮き彫りになったり、効果的なテスト勉強ができるようになったりすることもあるでしょう。解答時間のログは、先生がカリキュラムを組み立てたり、生徒一人ひとりのサポートプログラムを考えたりする際に参考になるに違いありません。

RICSは、問題を解く瞬間だけでなく、長く学びの支えになることを目指して開発中のシステムです。公開授業を見学された方には、そのポテンシャルを感じていただけたのではないかと思っています。

タブレットならでは! クイズ番組のような公開授業

RICS以外のアプリケーションが使われた授業の中でとりわけユニークだったのが、国語の授業です。学校に特化した授業支援アプリ「ロイロノート スクール」(以下、ロイロノート)と大型モニターを活用することで、質問に対する生徒たちの解答がリアルタイムで大型モニターに表示される、まるでクイズ番組のような授業が展開されていました。

ロイロノートの特長は、端末に書き込んだ情報が、先生の端末を通して教室内のすべての端末に配信できるところ。全員の解答を並べたり、特定の解答をピックアップして表示させることなどが可能です。画像や動画を貼り付けることもでき、実際に国語の公開授業では、チラホラと画像を貼った解答をアップしている生徒が見受けられました。また、途中で解答を書き換える生徒がいるところも面白いと感じましたね。先生がその場で「あれっ、いま答えを書き換えたよね。考えが変わったのかな?」と問いかけるシーンなどもあって、より双方向性が高まっている印象でした。

今、教育の現場では、さまざまなアプリケーションが利用され始めています。「すべてが個別のID、PWを持っていて管理しづらい」という声をよくお聞きしますので、その課題解決も行っていきたいと思っています。

次のステップへ踏み出す大きなきっかけに

ICTを活用して、さらに公開授業を行うところまで持っていくというのは、先生方には大変なご苦労だったのではないかと思います。授業計画を大幅に変えなければいけませんし、多くの先生が密にコミュニケーションを取り合わなければ成立しません。生徒に語りかけることも必要ですし、保護者の方にご理解いただくことも欠かせませんよね。こうしたご苦労を乗り越えられたのは、先生方が明確な目的意識をお持ちだったから。ICTを活用して学校を変えるんだという強い決意を持って動いてくださったおかげだと思っています。

公開授業を行ったことで、いろいろなところからフィードバックがやってきたと聞いていいます。先生だけでなく、生徒たちの意識も変わりました。次のステップへ踏み出す大きなきっかけになったと、強く実感しています。

プロフィール

  • Sekijima n2
    関島 章江
    株式会社電通国際情報サービス(ISID)

    オープンイノベーション研究所シニアコンサルタント。基幹・業務系システム構築や運用に従事しつつ、教育問題に関心を持つ。社内公募によるビジネス企画案が採用され、2011年からICTを活用した教育関連のビジネス開発に取り組んでいる。さまざまな企業や教育関係者、保護者グループらとコラボレーションや実証実験を行い、幅広い人脈を有する。国内外の教育ICT事情について広範なサーベイも行っている。1男1女の母。

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