コンテンツマーケティングの現場から #05

コンテンツマーケティング?広告?

桜の便りがニュースで取り上げられ、いよいよ春本番。前回は、コンテンツマーケティングを突き詰めると、マーケティングのあるべき姿にたどり着く。だから、コンテンツマーケティングを成功させる際は「良きマーケター」となるべき、というお話を杉浦さんとしました。対談の最終回となる今回は、コンテンツマーケティングと広告。その違いに関するお話です。

zentai

郡司:実際、コンテンツマーケティングを始めてみて1年くらい回してみると、いろいろなことがわかってくるのですよね。この時期にこんなことが起きた、とか、こんなコンテンツが話題になりやすいとか。既に始めている人々にとっては、経験が蓄積されてきていると思います。この「ウェブ電通報」も1年くらい回してわかってきたことがあったと聞いていますし。ただ、とりあえずコンテンツを出してみたけれど、成果はなんだったんだっけ?とか、ページビューを増やすためにやってきたけれど、そもそもどういう目的で始めたんだっけ?とか、何に貢献しているのかがわからないと次年度の予算が取れないとか、私すごく生々しい話をしていますが、そう感じている方も多いと思うんです。

杉浦:そうですね。で、少しがっかりさせるようなことをいうと、成果を出すのって結構時間がかかるのが実状です。まず、ある程度コンテンツがストックされないと、複数回の接点が作れない。人間関係も同じですが、繰り返し接触していくなかで信頼関係は築かれるので、その企業や商品との接点が何回もないと、顕著に指標が上がるということはないんです。
例えばアパレル関連のEコマースのサイトを例にすると、メンズやレディースと言った商品カテゴリや、それに紐づくアイテムの紹介だけでなく、着こなしやシーン、トレンド等の特集コンテンツが網羅されていると、検索行動に限らず色々なタイミングで適切なページをユーザーに発見していただく事ができます。最初は購入するつもりではなく、移動時間にスマホで流し読みするような接触になるかもしれません。春物のアイテムについて調べたり、シーン別の着こなしについてのコンテンツに接触したりといった行動をしたユーザーが、商品に興味を持ち購入を検討するような態度変容が起こっていきます。
このように、網羅性があり、また深い情報があるようなサイトがユーザーに好まれるのと同様に、検索エンジン(Google)もこのようなサイトを評価します。
コンテンツが拡充されるにつれて自然にユーザーとの接点が増えるだけでなく、ドメイン全体の価値が高まることにより、同じ1ページの情報であっても検索エンジン上での上位表示がしやすくなる、SEO的なグッドスパイラルも作れるんです。

chart
図. コンテンツ拡充によるSEO&オーガニック流入の期待効果
~アパレル系ECサイトの例~

このほか別の視点として、ページビュー、滞在時間、コンバージョン率、送客などいろいろなコンテンツの評価を測る指標がありますが、必ずしもオウンドメディアの中で完結しなくても、別のリアルのデータもくっつき始めている。例えばシングルソースパネルなどと言われるもので、テレビの接触、ウェブでの接触などを経て、お店での購買がひもづく。日用品などコモディティーの分野では、そのウェブサイトを見た人と見ていない人で、店頭で買った買わないが変わるかなど検証可能な環境になっている。

郡司:それは、2015年には本格化しますよね。

杉浦:そういう事例は出てくるでしょう。デジタル上での顧客との接点が店頭での購入にどう影響を与えたかは注力している分野ですから。となると、コンテンツマーケティングは、そうした施策の土台となる一方、よりごまかしが効かなくもなるでしょうね。

郡司:そこではコンテンツの「評価」が非常に多義的になり、指標やものさしの当て方次第で同じコンテンツも評価がまったく変わる、ということなのですよね。

杉浦:私は、売上という最終成果から常に逆引きして、何が中間指標なのかを考えます。たとえば購入意向が何%上がれば、お店でどれだけ物が売れるという関係性が見えてくれば、「購入意向」は中間指標(KPI)として成立する。別の言い方をすれば、ウェブサイトに何人誘導し、その何%の人たちの態度変容を促して購入意向を高めれば、何人の人たちはお店で買ってくれた「だろう」、という目論見も立つわけです。さらにシングルソースパネルの活用などで、これを同一人物の行動としてつなげていく手法もあるし、サイト来訪者に対して簡易的な調査を仕掛けるなど、その確からしさを測る検証もすごくスピーディーに、かつ安価にできるようになっている。
ただ、施策によって商品を好きになった人が今後購入につながっていくのか、潜在意識にはどう効くのかなど、中長期効果などを見ると、いままでのブランディングやエンゲージメントのやり方の方が、ナレッジの体系化や実践方法などが蓄積されていることが逆に浮き彫りになってくるんです。

郡司:そこが対極の道を歩んできたわれわれが手を携えている理由のひとつですよね。

杉浦:そうですね。このブリッジは容易じゃないけど、突き詰めて考えていけば、おのずと導き出される結果と思っています。

郡司:容易じゃないけれど、やらなければいけない。

杉浦:そうですね。だから、単純にコストをコンバージョンで割ってCPAを出していくやり方も、それはそれで必要な視点ですが、リアルとの相関をどう分析するか、ブランドの指標を何に置くのが妥当なのかなど、電通が得意としてきた分野の知見や経験が強く求められてくるでしょう。

郡司:本当の意味で価値があって、生活者をひきつけることのできるコンテンツがますます必要とされていきますね。

「コンテンツマーケティングか広告か」を俯瞰する

郡司: 最後にこれを聞きたいのですけど、杉浦さんは、コンテンツマーケティングと広告って何が違うと思います? 私の周りでは、この質問、けっこう多いんです。

杉浦:プッシュかプルかの違いですかねぇ。コンテンツマーケティングは、「商品、ブランドそのものの実体」に近い話で、情報量も多い。その情報の一端に興味を持っていそうな人に網を張って、待ち構える感じ。広告のほうは、企業から積極的にアプローチして、その実体を伝えるための起点を提供したり、強烈にイメージを擦りこんでいく手段。あとは、ひとつのスピード感を持って、量的なスケール感を持って届ける手段という側面もありますかね、実体がきちんとあるときに。逆の見方をすると、コンテンツマーケティングでは、実体の部分を作るとか、それを説明していくための濃密なストーリーをつくるという感じで、両者を組み合わせてワークさせる感じがしますけど。もちろん、究極に商品やコンテンツが良ければ別に広告をやらなくても買ってくれるというのはありますけど、常に究極の状態は作れない。

sugiura

郡司:そうですよね。

杉浦:最近の例で「マッサン」や「半沢直樹」のようなビックコンテンツがさきほど触れた究極の状態とすると、そんなホームランともいうべきビックコンテンツに頼っていては、ほとんどの企業のマーケティングは成立しないです。起点作りの意味では広告が絶対必要ですし、人は気持ちで動く生き物なので、イメージを作っていくときにも広告は大事です。ただ、それだけで良いんですか?というのがコンテンツマーケティングが問うているものと思います。

郡司:ある意味では博打で勝ち続ける、というようなことになりますものね。

杉浦:それはそれで良いんです、当たればうれしいですから。ただ第2回目でも触れているとおり、ホームランばかりでなくても、それなりに影響を与えられるミドルコンテンツと、ニッチだけど手堅く、対策キーワードごとに1ページづつ作るような定番コンテンツ群を、ロングテール施策としてで用意していけば、SEO的な網も広がって関与が高い人を効率よく集客することもできますし、良いバランスで組み合わせてワークさせることができます。

郡司:デジタルによって、地道なマーケティングができるようになったということですね。

杉浦:結局コンテンツマーケティングも広告も、両方大事と思うんですけどね。良きマーケターであれば、それがコンテンツマーケティングかどうかはあまり関係ないんです(第3回参照)。

郡司:広告だったら、起点として使っていくときに、ある程度のスピードとかリーチとかが枠自体に保障されている。中身のパワーがあれば、それはもちろん倍増するし、中身がそこそこだったとしてもある程度のパワーは持てる。コンテンツマーケティングは、コツコツと地味に積み重ねることによって、きちんとランナーがひとつひとつ塁を進めるように、利用者との信頼関係を築いていける。

杉浦:相互補完の関係だと思います。広告も、コンテンツのマスマーケティングも、ビッグコンテンツも、テールコンテンツも、マスも、デジタルも。
ただ、今後デジタルを活用する場面が増えることがあっても無くなることはない。そして、それは一朝一夕ではできない。言い方を変えると、コンテンツ自体、あるいはそれを企画・制作して届けるノウハウは、企業のマーケティング資産になると思っています。

郡司:コンテンツマーケティングって、今は流行り言葉のようだけど、その言葉が問うている本質を考えると杉浦さんが言う通り、めざすべきは「良きマーケターとなること」と思います。私たちは、コンテンツマーケティングという言葉を定義して、そこに当てはまることをしていきたいのではなく、どうしたら良いマーケティングができるのかを追求し続けていきたいのです。

futari


【Gunji's eye】

杉浦さんとのやり取りで非常に意見が一致したのは、コンテンツマーケティングは、本質的にはさまざまな価値や利益を生み出したり、問題解決をしたりといったことを目指しているということです。今日現在は、コンテンツマーケティングと言われているものも、3年後、5年後に違う呼び方をしているのかもしれません。ただ目指す先は変わらないということを杉浦さんとのやり取りからを改めて感じました。

プロフィール

  • Imgabout01
    杉浦 友彦
    株式会社電通デジタル 執行役員

    1998年電通入社。2009年コロンビア大ビジネススクール通信情報研究所(CITI)客員研究員。電通フューズ、電通イーマーケティングワンなどの立ち上げに参画し、ウェブコンサルティング、オンライン広告のROIマネジメント業務を担当。主に金融・保険、Eコマース企業の顧客獲得支援や、IT、自動車業界向けのeマーケティング戦略立案・PDCA運用業務に携わる。併せて、マス広告×ウェブ統合分析のメソッド開発や、オンライン広告プランニング最適化、アトリビューション分析など、独自のデジタルマーケティング最適化ツール開発を主導。13年ネクステッジ電通代表取締役社長。

  • Gunji akiko pr
    郡司 晶子
    株式会社電通デジタル 執行役員

    1992年電通入社。クリエーティブ局で、広告・キャンペーンの企画作業に従事した後、コンテンツマーケティングの領域に携わる。現在は、日用品・ファッション・自動車・レジャー・住宅などの業種で、ブランドエンゲージメント、CRM・ロイヤルティ向上の支援、コンテンツを起点とした顧客獲得支援などを目的に、コンテンツ戦略・企画・制作・運用のディレクションを行っている。
    2014年「コンテンツマーケティング27の極意」(翔泳社)、「エピック・コンテンツマーケティング」(日本経済新聞出版社)の2冊を共訳。講演歴は、2013年、2014年のWOMマーケティングサミット、Outbrainパブリッシャーズセミナー、Web&モバイルマーケティングExpo2014秋、2015 ad tech TOKYO internasionalなど。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ