loading...

Experience Driven ShowcaseNo.2

「音楽」でつくるブランディング

2015/04/14

前回のコラムでは、「INTERSECT BY LEXUS」の空間開発に関してのブランディングの考え方をお伝えしました。

今回は2015年3月19日、店舗でイベントが行われ、「INTERSECT BY LEXUS」の音楽プロデューサーを務めるテイ・トウワさんに、電通の滝澤弥香がインタビューしました。

 

「レクサス」のブランディングとは?

テイ:レクサスみたいな志がイケてるブランドに、がっつり音楽のプロデュース全体を任せていただくのは、すごくやりやすかった。DJ、選曲家としては1987年から活動しているので、もうすぐ30年になる。自分が今までやってきたスキルと年輪を、全て差し出せる内容のオファーでした。この仕事のためにここのところ聴いてなかったようなジャズとかファンク、フュージョンなど、自分のルーツになるような音楽をもう一回聴き返す、すごくいいきっかけにもなりました。

滝澤:単発のイベントだと、その瞬間はイメージがぐっと上がるだけだけど、「INTERSECT BY LEXUS」は時間をかけて高い次元でブランドをつくっている感じですよね。

テイ:そう、ブランディングはそうでないと。前にかかわった仕事で一番悲しかったのは、店舗のオープニングの選曲をしたら、3年後にふらっと寄ったときに普通に有線がかかっていた(笑)。レクサスは相当なエネルギーをつぎ込んでいるので、夜のクラブのレギュラーはやめないとできなかったですね。

滝澤:テイさんのスケジュールをすごく拘束しているのは感じています。でも、お客様もすごく楽しみにしています。単なるBGMじゃなくて、ちゃんと環境音も含めてブランドを感じてくれていると思っています。

テイ:ちなみに今月の選曲は、自分の中ではしらふの時間帯とお酒の入ってもいい時間帯という意味で、午前と午後に分けて選曲しています。

滝澤:今回のスペシャルMIX部分は、どんなところですか?

テイ:ガールズバンド「ねごと」が考えるアダルト的でイケメンな音と、「孤独のグルメ」の漫画家・原作家である久住昌之さんに頼んでみました。

滝澤:依頼される皆さんは、裸を見られるような感覚があるんじゃないかな。ふだんの自分の好みがモロに出ると思うので。

テイ:すてきです、レクサスは。息子が生まれたから新しい曲をつくってくれということだと思うので。こういう建築をつくったからこういう音楽をつくってという、テーラーメード的な音楽のあり方を僕はやりたかったんです。さらに僕から提案したのは、季節によって料理が変わるのと一緒で、DJじゃない人にも音楽を頼んでみて、僕がミックスをやるという試み。選曲家としては素人だけど、絶対音楽聴いているだろうという人に、例えば夏でいえば、ねごと、久住昌之さん、高野寛くんという大サービスな顔ぶれ。

滝澤:この空間で音楽と食事のシーンを捉え直す、いろんなチャレンジができるのは、長くやっていくからこそだなと思います。

テイ:時間を重ねたブランディングに、結果的につながるんじゃないかな。僕自身も、ほかのレギュラーメンバーのDJや、プロじゃない人が選んでくれた曲を聴いて、知らなかった曲もあるので、勉強にもなり単純に楽しいです。ご飯を食べるときや、車でずっと聴いています。さらに、運転自体が最近選択肢に入ったんですよ。ずっとペーパーだったから、25年間ぐらい。

滝澤:あら、そうなんですか!

私も仕事で、バイクのプレゼンをほかのクライアントにしたときに、免許も持ってないのにプレゼンなんかと指摘されて。悔しくてすぐ免許取りに行ったら、最終試験で意外と中から大は一気に行けるよというので、中型を取って5日後に大型の免許も取っちゃったりしたんですよ。大型自体はさすがに今ペーパーになっていますけど(笑)。

テイ:とにかく車で聴ける、ご飯食べているときに聴ける音楽になっていると思います。普段は軽井沢にいますが、この「INTERSECT BY LEXUS」という空間をイメージしてつくっています。

 

クラブイベントと5時間にも及ぶ選曲

滝澤:私はよくこの店の音楽で、そのときの旬、毎回微妙に変わっていく感じをすごく楽しんでいます。

テイ:そうそう。固まりとして、クラスターとして変わっていくからね。

滝澤:今、というのを音からすごく確認するような感じがあって。切り替わる瞬間を私自身が一番楽しみにしているかも。夜中、切り替わるときに、店に居ることが多いので。

テイ:恒例のクラブイベントでは、毎月5時間に及ぶ選曲をしていて、そこも含め楽しい。僕自身、自分をミュージシャンだと思っていないので、プロデューサーとしての客観性を持ちながらやるというか。ミュージシャンから委ねられる部分もあるのと同時に、彼らの主観に対し客観的ディレクションとして、ここはこう決めたほうがいいんじゃないかとかということを言う、そこが自分の一番のうまみ成分だと思っています。

滝澤:今日のリハーサルを見ていて、テイさんのディレクションに対して、アーティストがすぐにチューニングしてグーッと合わせていくところがすごくて、横で見ていて熱くなりました。

テイ:本当にリスペクトできる人、ある程度以上の偏差値のある人としか、僕はかかわりたくないんです。そういう人たちの音というのは、音符単位では編集が必要になっても、直すという感覚じゃない。だから、そういう人たちにしか声をかけません。今のチームがそういう姿勢でやっていけるのはすごくラッキーです。

滝澤:ずれないように、そして逆に新しいものをどう取り込んでいくかについても、継続的に一緒に考えていただけるはとてもいい環境ですよね。

テイ:本当に面白いですよ!27年間ぐらいやってきたことを、この2年弱に惜しみなくシェアできているので。あと、ほかのDJたち、普通のミュージシャンからしたら、結構クソジジイみたいのが多いんだけど(笑)。それを生かせる仕事だなとつくづく思った。年輪が生かせる職種、DJ。空間に合わせて、もっとアーシーな感じをぶつけたり、ハイテクな素材の音を使ったりしたいですね。

滝澤:レクサスは、アダルト、アーバンな感じの音の捉え方ですからね。

テイ:「アダルト」という言葉から受けるイメージも人によっていろいろ違うと思うし、いい意味で曖昧。20代前半の子が考えるアダルトと、40~50代の考えるアダルトは違うので。選曲に正解はないですし、音楽に罪はないですし、面白いですよ。こうだという正解がないからこそ面白い。

 

依頼があるからじゃなく、先につくる

滝澤:テイさん、最近の活動は?

テイ:僕は、頼まれてつくり出すのではなくて、勝手につくっているんです、自分のソロアルバムを。今回は新しいテクノロジーの機材だとか、今回は車ですとか、「こういう話がある」と来たときに、僕のつくったものの中から「これ、どうですか?」と提示するのが、一番幸せな仕事としてのマリアージュのような気がします。

滝澤:広告会社は需要があってからじゃないと動かないというのが弱さだと思っていて、テイさんのように、「依頼があるからじゃなくて、先につくるんだ」という姿勢が私たちには足りないなと思います。

テイ:いやいや。でも、そうかもしれないですね。まあ、残念ながらストックはあまりなくて、全部アルバムにしちゃいますが(笑)。

滝澤:次のアルバムリリースはいつですか?

テイ:たぶん夏ごろ。7月末にリリースして、8月はちょっとのんびりして、9月からは、ソロ活動以外で企画モノのオファーを検討中です。もちろん月々の「INTERSECT BY LEXUS」もますます面白くしますよ!自分が大人になってからレクサスの仕事をやれるのは、バッチリのタイミングでした。

滝澤:これからもよろしくお願いします!

(了)

 

取材編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局