電通スマプラ #15

【番外編】SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)に吹く風

  • Aoki pr
    青木 宙也
    株式会社電通 マーケティングソリューション局
  • Sugimoto profile
    杉本 雅明
    AgIC株式会社 取締役

こんにちは。電通スマプラの青木です。
今回は日本を飛び出して、今年の3月アメリカ・テキサス州オースティンで行われた世界最大級のトレードショー、SXSWをレポートします。開催期間中に、東大発のスタートアップ「ペンで書ける電子回路」AgICのCEOでSXSWに深い知見を持つ杉本雅明氏をランチがてら連れ出し、話を聞いてみました。対談形式でお送りします。

右が杉本氏
右が杉本氏
★SXSWとは
毎年3月にアメリカ・テキサス州オースティン市で開催される音楽、映像、インタラクティブのイベント。起源は1987年の音楽祭。セミナー、ワークセッション、パネルディスカッション、ミーティングアップ、メンター、トレードショーが繰り広げられる。
SXSWとは

SXSWに秘められた可能性と思い

 

青木:こんにちは。杉本さんはSXSWへの参加は3回目ということですね。どのように関わってきたのか教えてもらってもいいですか?

杉本:僕はコミュニティーをつくるということをずっとやってきました。東大の学部生をしていた頃から、日本の技術が世界に過小評価されているのではと感じていました。だから、東大の近くに、学生同士の創造性あるコミュニティーづくりを目的にした会員制カフェ「Lab+Cafe」をつくりました。そこに出入りしていた他の学生から、SXSWというとんでもないイベントがあると聞いて、これは面白いと思い、何か出展できないかと考えました。
当時、僕はビリヤード場をつくりたいという密かな夢があって、そこにバズワードであった3Dマッピングと、オープンソースを組み合わせた、OpenPoolというプロダクトをつくりアメリカに持ってくることにしたのです。これだけの要素があれば米国でもウケるんじゃないかなって。

青木:なるほど。結構カジュアルな気持ちで始めたんですね。

杉本:そしたら見事に当たりましたよ。展示現場では大ウケでしたし、Coolest 5 of SXSWにも選ばれたりして。ただ、その時2つの課題が見えてきたのです。ひとつは、注目されることだけではなくて、その先の戦略をデザインしなくてはいけないということ。例えばKickstarterでのクラウドファンディングだったり、メンターを通じてのビジネス・エクスパンションであったり、次の一手が意識できているかということ。そしてもうひとつは、このOpenPoolがこれだけウケるのであれば、Lab+Cafeの周りにもっともっと持っていける技術の原石のようなものがあるんじゃないかってことです。そこで東大発のスタートアップがSXSW出展を目指すコンペティション、Todai to Texasを仕掛けてみたのです。

SXSWとはインディーズの文化だ。だからこそフラットにチャンスがある

 

青木:一つ伺いたいんですが、それはなぜSXSWなのですか?他にも展示会は色々あると思いますけど。

杉本:それはSXSWの起源と関係があるかもしれません。SXSWはもともとインディーズの音楽を集めた、新しい才能の発掘、もっと言えば宝探しのようなイベントだったのです。駆け出しのアーティストたちはココで目立ってメジャーへの道を狙い、逆に音楽関係者は新しい才能を発見し、さらには投資を通じ育成する、そういった場所でした。今は音楽、映像、インタラクティブの部門に分かれていますが、そのインディーズの文化はすべての部門を通じて残っています。

青木:テクノロジーのインディーズとは面白いですね。

杉本:そうなんです。スタートアップって実はバンドみたいなものなのです。CEOとCFOとCTOがバンドを組んで演奏する。それを投資家が見つけてグルーブする。SXSWはインディーズの文化が根付いているので、非常にフラットなのです。
どれだけ有名であるかとか、どれだけ売れてきたかではなくて、その場でどれだけ気持ちのいい音楽、映像、技術を表現できるか、そして、それを宝探しのように楽しむ、その精神がSXSWをフラットなものにし続けているのだと思います。他の世界の展示会イベントは大企業の動向が注目されるのに対し、SXSWではスタートアップが注目を集めるのは自然なことと言えますね。

青木:今まで、音楽、映像、インタラクティブ、って言われて、インタラクティブだけ「なぜココに?」としっくり来ていなかったのですが、フラットな目でインディーズの宝探しと聞くと、非常に納得がいきますね。

杉本:SXSWの根源は毎年の「イベント」ではないのです。そのインディーズバンド的な精神であり、文化そのものなんだと思います。

ITはデバイスを超越する。
そしてすべてにコンピューターが無意識のうちに入り込む

 

青木:そんな自由ベンチャー精神のあるSXSWだからこそ示すことのできる、カッティング・エッジ(最先端)なトレンドというものがあると思うのですが、3回目の杉本さんから見て、今回のSXSWから見えてきたトレンドをどのように考えていますか?

杉本:一つは「専門領域のディスラプト(崩壊)」が起きていると感じますね。実はこの動きは前から起きていました。去年はモノヅクリという分野とITの融合が明らかに始まり、Creativeという部門できあがりました。だからAgICも参加して「回路制作の専門性をディスラプト」して、そのムーブメントの一翼を担いたいと思っています。
そして今年新しくできた部門が、Health and MedTech Expoでした。つまり医療、バイオテック、ヘルスケア系。今回のSXSWでは、そこの専門分野としての壁が崩されようとしていると感じました。いわゆるITと、こういった専門領域が融合し始めているのだと思います。つまり、情報技術がいわばアプリケーションとして、専門性へ進出していっていることが確認できましたね。IoT(Internet of Things)とかビッグデータとかが医療の現場に入った時にどう使われるのか、具体的なソリューションが見えてきたように思います。

杉本氏

青木:たしかにそうですね。ITテクノロジー(インタラクティブ)がパソコンやモバイルのデバイスを超えていよいよ全ての産業に侵入してきたなと感じました。僕が今回注目していたのは自動車業界ですけど、Connected VehiclesであったりAutomated Vehiclesであったり、インフォメーションテクノロジーをどう具体的に使うか、さらにはそうした場合の問題点や解決策、法整備など、非常に具体的にリアリティーを持って議論されていると強く感じていました。

杉本:つまりは情報の領域が爆発的に広がることが明確になってきたわけです。行き着くところはInternet of Everythingなんですよ。最終的に全ての物(例えば椅子であったりコップであったり)にコンピューターが導入されると、コンピューターということさえ意識することがなくなってくるのではないかと思っています。

「使いやすい」ではなく、「使っていて心地よい」。
それが目指すべき「テクノロジーの手触り」

 

青木:あと私は、デザインの重要性が非常に増してきたなと感じました。
実は今回ウエアラブルというキーワードを追ってきたんですが、もうキーワードとして盛り上がってなかったですね。テクノロジーを身につけるなんてことはもはや当たり前で、先ほどおっしゃったようにあらゆるものにテクノロジーが導入され、人が囲まれた時に、どう「心地の良い」インターフェースであるか、どういうUI・UXを設計するのかといったことが非常に重要になってくるのはないでしょうか。

杉本:そうですね。現在西海岸のスタートアップ界隈で目につくのはデザイナーが役員になることです。

青木:ジョン・マエダ氏のキーノートスピーチでも、商品の設計においてインターフェースのデザインはフィニッシングの作業ではない、それは開発の最初から関わるものなのである、そうおっしゃっていました。
僕はこれを「テクノロジーの手触りの良さ」と呼んでいます。テクノロジーに囲まれることが当たり前になったからこそ、それとともに過ごす瞬間/時間が、気持よいかそうでないかというのが商品の差別化の根本になってくる気がするんですよ。

杉本:そうですね、そう思います。ただ、そこでよくある誤解が、「つまりそれはインターフェースを誰にでも使いやすく」と解釈してしまうことだと思います。「使いやすい」と「使っていて気持ちいい」は実は似て非なるものなのだと思います。

青木氏

青木:スピーカー一体型のディスプレーに歌詞が自動表示されるSIXの「リリックスピーカー」が今回のコンペで受賞しましたが、あの作品も使っていて「心地いい」インターフェースを体現していました。

杉本:開催期間中に行われたPerfumeのライブ映像配信も、「手触り」の良いテクノロジーの演出になっていました。普通はライブが一番いい体験で、映像で見るのは次、という位置づけだったのに、今回のPerfumeは「映像のほうがすごい」、という評価も出てきました。実際僕自身も会場にもいましたし、映像も見ましたが、ちがう感動を二度味わえたと思います。テクノロジーの体験がリアルを凌駕する、そこがすごいのだと思います。

10年後の世界の当たり前が、この10日間のオースティンにある

 

青木:さて、話をちょっと変えたいのですが、SXSWというイベントがオースティンという街を巻き込んだ規模であることにびっくりしました。そして、最先端の技術やサービスを、街を挙げて受け入れているということに感銘を受けました。

杉本:オースティンはアメリカの中でも非常に伸びている都市ですね。若くてリベラルであるから新しいものを取り入れ続けて成長してきていると思います。

青木:実は今回、個人同士の部屋の貸し借りを仲介するAirbnbで宿をとって、タクシー相乗りサービスのUberPoolで移動してみたんですが、皆さんもう当たり前のように使いこなしていますよね。

杉本:そうですね。ここではシェア・カルチャーというものがすごく浸透していると思います。とくにSXSWの開催期間中は実証実験的な新技術の導入が行われています。もしかしたら、世界中の10年後の当たり前な未来が、SXSWが行われる10日間のこの街にはあるのかもしれないですね。

来年に向けて何をするべきなのか?

 

青木:しかし、今回SXSWに来て本当によかったです。非常に大きな刺激を受けることができました。来年もぜひ見に来たいと思いました。

杉本:いやいや、ただ見に来るだけではダメですよ。ちゃんと何か持ってこないと。展示するなりセミナー開催するなり、自分から仕掛けたほうが絶対楽しいですよ。そして、その後のプランもしっかりと考えておくこと、これが重要だと思います。失敗してもいいんです。失敗を恐れて動けないことこそ本当の失敗なんです。

青木:あ、その言葉、Google Xのアストロ・テラー氏が基調講演の中で言っていましたね。今日は本当にありがとうございました。

杉本:はい、Lab+Cafeにもまた遊びに来てください。

 

電通スマプラ
電通スマプラロゴマーク

 

 
 

「電通スマプラ」とは?

スマートフォンを中心としたスマートデバイス(パソコン、タブレットなど)上のビジネスの立ち上げ、成長・拡大に貢献するプランニング・ユニットです。
チーム内には、スマートフォンのゲームやアプリなどのマーケティング・コミュニケーションの実績が豊富な戦略プランナー、コミュニケーションプランナー、コンサルタント、コピーライター、プロデューサーなど、多種多様な人材をそろえています。また、一人一人が何かしらのオタクであるため、課題への深堀りはもちろん持ち前の個性と人間力でクライアントに向き合うことをモットーに、マーケティング活動を支援していきます。

 

プロフィール

  • Aoki pr
    青木 宙也
    株式会社電通 マーケティングソリューション局

    1983年東京都生まれ。学生時代をカナダ・トロントで過ごす。2008年に電通入社後、アカウント・エグゼクティブとして精密機器メーカー、食品メーカーなどを担当。その後、2012年にストラテジストに。海外案件を中心に自動車、食品、AV機器、放送事業などのマーケティング戦略を担当。「最近どうよ?」が口癖。

  • Sugimoto profile
    杉本 雅明
    AgIC株式会社 取締役

    2012年に東京大学大学院理学系研究科で理学修士、在学中の2008年にサイエンス・カフェLab+Cafeを創業し、現在も操業中。2012年にはARビリヤード制作ベンチャーOpenPoolを創業。2014年1月にAgIC株式会社共同創業、取締役就任。2015年SXSWではTodai to Texasを主宰し、多くのスタートアップを導き、またJapan Challengeという公式セッションのスピーカーの一人でもある。

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