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Experience Driven ShowcaseNo.4

21世紀にワークする、お菓子の機能って?

2015/04/28

森永製菓の看板商品「Hi-CROWN(ハイクラウン)」の50周年プロジェクトのコミュニケーションデザインは、あえて「アンビジネスライクなやり方」を追求したとか。
それは一体どんな考え方、方法から生まれたのでしょうか?

取材編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局

 

倉成がつくった「新コン」は、アンチビジネスライクでフラットな組織

 

金丸:Hi-CROWNは、社長が若い頃、チョコレートが子ども向けのお菓子だった時代に、大人向けに大胆に仕掛たスタイリッシュなパッケージや、女優の淡路恵子さんが商品にキスをするというセンセーショナルなCMに鮮烈な印象を受けたそうです。その思いがカムバックし2013年12月末、「来年は50周年、もう一度リバイバルしよう!」ということで始まったんです。

Hi-CROWN50周年アニバーサリー(8個入り)、Hi-CROWNマンディアン、Hi-CROWNロリポップ

 

尾崎:年末突然!そうなんですか!

金丸:当初、有志メンバーで集まり議論していましたが、商品開発以外のところがなかなかブレークスルーしなくて。これはもう倉成さんに相談するしかないと思って。倉成さんが主催する「新コン(新規領域部署連携コンソーシアム)」に、私たちは2年目ぐらいから参加させていただいていたから。

尾崎:「新コン」って、何年くらいやっているんですか?

倉成:今年で4年ぐらいかな。震災直前からやろうとしていて、震災が起こって延期した。
ずっと、僕は電通のクリエーティブの新規事業部みたいなところにいたんです。
立ち上げ時は「ビジネスデザインラボ」という名の新規事業部ができたときに、クライアントにもたくさん新規事業部はあるから、ちょっとお邪魔してお茶して、どういうことをされようとしているんですかとか、どういうことをお悩みですかとか話していた。最初にバンダイナムコゲームスに行った直後に、すぐ業務提携しようとなったわけ。

尾崎:えっ。もう行って、話を聞いてすぐに?

金丸:倉成さんは敏腕営業マンなの、実は。

倉成:最初はある6社で始めたんだけど、毎回面白いので自分だけで抱えておくのはもったいなくて、コンソーシアムにしましょうといって半年に1回集まってます。
毎回、それぞれのつてとか、たまたま出会った人とかも紹介されて、必ずお茶するわけ、俺が。
お茶して、「あ、この人はお茶して楽しい人だな」と思ったら、会員証をお渡ししている。偉そうだけど。

金丸:面接して(笑)。

倉成:そう。尊敬する電通の先輩、白土謙二さんが言っていた、「オープン・フラット・ネットワークの時代だ、21世紀は」という、「フラットな人」じゃないと「新コン」は無理だから。
「アンチビジネスライク」と言っているけど、同盟関係にしたい。ピンチやチャンスのときにいつでも助け合えるフラットな関係。「目的は何ですか」と聞かれるんだけど、普段はないわけ。

 

「金丸台風」とすてきな仲間たち

 

尾崎:コンソーシアムは、何か発表はするんですか。

倉成:はい。面白かったのは6回目、そのときは、「HUB Tokyo」を借りて高座をつくって、「笑点」の浴衣を5色用意して、座布団や扇子を置いて、マックやプロジェクター用意して、チャカチャンチャンとBGMを流して「どうも。今日は、皆さん、お越しいただきありがとうございます。電通の倉成です」と言ったら、もう皆さん笑う準備ができている。「次は森永製菓の金丸でございます」とか発表を始めると、もうみんな笑っているわけ。
TEDは、欧米式のディレクションだから、日本人はキツイ場合があるじゃない。日本人がなじむフォーマットでやる。「にせTED」と呼んでいて、TEDは、Talk, Eat, Drink(笑)。

金丸:そこにはすごくフラットな空気がつくられている。
だから、第1弾のJAXA企画「おかしな自由研究シリーズ」の時も、有志の方がすごく動いてくれるんですよね。みなさん少年の心を持つ熱い方ばかりで私も燃えてしまいました。JAXAさんも「倉成さんの人間味でみんな寄ってきているよね」と言っていて。

倉成:ゆるキャラなわけよ、俺が。

尾崎:「おかしな自由研究」と「オカシノベーション」は、どっちが先なんですか。

倉成:もともとの話は、全部お菓子の高付加価値について。21世紀の日本でワークする新しいお菓子の付加機能。そこを話すと長くなるから、そこは、okashina.jpを見てください!

金丸:新規事業の担当になったときに、別会社の新規事業の友達にヒアリングしたら、こういわれたんです。「企業なので当然大きな絵を求められ、第1フェーズ、第2フェーズと描きます。
でも実際に進めていくと、違うこともいっぱいある。そのときに、計画と違ったと言って大体やめちゃう。でも、そこで少し方向性を変えれば大きな成功があるかもなのに、もったいない!ということも多い。新しいことって走りながら考えるからこそ見えることもある」と。
実は、弊社の社長も同じような考え方で、私が新規事業に来たときに上司だったのですが、「とりあえずいいと思ったら一回その山に登ってみろ。そこで見える景色が違ったら戦略変えていいよ」と言ってもらいました。なので、それを心がけてますが、スピード感も身も着くし、成果もあったし、いいことづくめ!?周りの方はかなり迷惑だと思いますが…(笑)。

倉成:当時、「金丸台風」って呼ばれていたから、巻き込まれる感じ。

金丸:いつか起業するときは「ヘクトパスカル」という社名にしたらどうですかといわれてます(笑)。

 

イベント&スペース担当の尾崎の発見

「違う分野のデザイナーと組むと面白い!」

 

尾崎:それで、昨年9月末に倉成さんにお話をもらって、資金的にはかなり厳しいかなと思いました。

金丸:そう。資金調達もですが、実はコンセプトが固まってなかった。
過去に流行ったブランドのリバイバルなので、シニア向けにノスタルジーでいくのか、でもそれだと若い子がつかめなくてブランドに継続性がなくなってしまう…。
でも若い子とシニア、その両立なんてできるの?というところがとても難しく、おいしいものはできそうだけど、どこで売る?というところからとても悩んでいました。
私たちは、商品開発は得意じゃないですか。でも、それを持って誰に何をどこでどう伝えていくの?というところでターゲットのどちらをメインにむいていいのかで迷走して。
私たちもわからない道、樹海…みたいな。さらに店舗や催事の出店は相手先さまがあることなので、そんな中で、急に出店がきまったとか、あそこはこんな制限があるとか、あり得ないスピードで色々お願いしちゃっているんです。その中でも、絶対納期に間に合わせてくれて、絶対満足のいくアウトプットをやってくださいました。

Hi-CROWN 2 Tsubo Shop

 

尾崎:こっちからすると、こんなにいい現場はなくて。そもそもフラットな関係から立ち上がったので。いつもは全部僕らがやって、クライアントチェックを受けて「ここは、こう直して」「時間が、もう間に合わないんですけど」みたいになるんですが、この仕事はクライアントと一緒に全部やるんですよ。

金丸:そうですよね。今の私の部の部長も現場をとても大切にしていますので。部長でありながら店舗の床まで拭いていました。

倉成:箱とか、折りますし。

金丸:折る、折る。予想以上の売れ行きで商品パッケージが足りなくなり、初日から奥の倉庫でみんなで折っていたんです。オープンにお立会いいただいた倉成さんにまで折ってもらって…巻き込んですいません。でも、そんな関係があったから、本当にいい議論ができたし、いいものができるということにつながりました。

倉成:ポイントは、仮に日本国内のいろんな企業や、国とか自治体のプロジェクトって、ディテールから始まることが多いじゃないですか、具体物から。ビッグビジョン・ドリブン、コンセプト・ドリブンから始めるのか、具体物から始めたらいいのか。
だけど、どちらも真なりだと思う。物を基点にずっと会話を続ければ、やっぱり言語化されていない何かに突き当たって、そこを一緒にちゃんと掘り当てて、そこから言語化して、プロジェクトにすればいい。難しいけど。

尾崎:僕が今回、決定的にこの判断がよかったなと思ったのは、什器のデザイナーの方を入れたこと。古谷萌という電通のADのほかに、プロダクトデザイナーの小宮山洋さんという方をメンバーに加えた。空間系の仕事では出会えないタイプのデザイナーは基本やりにくいですけど、その結果いいものが生まれた。その感触が僕には一番大きな成果の分岐点だったと思います。

倉成:そのジャッジはよかったね。時間がないから、尾崎は慣れている施工会社でやりたいと最初言ったけれど、ADの古谷君は小宮山さんとやりたいと言った。
僕は、時間がないから尾崎が言うとおりにしようと思ったんですけれど、尾崎がそこを「いや、小宮山さんとやったほうがいいかもしれない」とジャッジをしたんです。それは確かにうまくいくための分岐点でしたね。

尾崎:このHi-CROWNの3回の企画を通してあの什器を使っているんですけれど、このプロジェクトの成功は、アウトプットとしての什器が全てとさえ思います。とても勉強になりました。

<了>